この記事はここがポイント
- 日経平均は4.9%安、TOPIXは約2.4%安。下げ幅の「額」でなく「率」で見ると、日経平均の偏りが見えます
- 市場が見ていたのは、CoreWeaveの損益より社債の値段とCDS(倒産保険の保険料)でした
- 不安の中心は、借金で設備を先に作る業態の「資金繰り」と、それを重くする金利だったと考えられます
- 信用不安の局面では、借入比率が高い会社、PBRが高い会社、高値の近くにある会社、指数への影響が大きい会社が売られやすいと泉田氏は見ています
2026年10月15日、日経平均株価は前日比3,318円安、率にして4.9%下落しました。きっかけは、米国のAI向けクラウド企業CoreWeave(コアウィーブ)の社債と株価の急落です。米国の1社の問題が、なぜアドバンテストや東京エレクトロンといった日本の半導体株まで巻き込んだのでしょうか。しかも日経平均の下げは、同じ日のTOPIXのおよそ2倍でした。この理由について、元機関投資家の泉田良輔氏が、値動きがどこからどこへ広がったのかを読み解き、次に同じことが起きたときに見るべき点を解説します。
3,000円安より「4.9%安」で見る
このとき「日経平均が3,000円超下落」と、下げ幅の額で伝える報道が目立ちました。インタビュワーが、日経平均の水準が今よりずっと低かったころの3,000円と、いまの3,000円とでは重みが違うのではないかと疑問を投げかけると、泉田氏も、昔から疑問に思っていたとして、投資家としては率で判断したいと応じています。
率で並べると、値動きの広がり方が見えてきます。震源の米国では10月14日、CoreWeaveの株価が15%超(15.46%)下落しました。NVIDIA(エヌビディア)は約3%、Microsoft(マイクロソフト)は約1.8%、米国の半導体株指数SOXは約4.3%、ナスダック総合指数は約1.9%の下落でした。
翌15日、日本では日経平均が4.9%下落しました。TOPIXは約2.4%下落したと報じられています。韓国のKOSPIは約7.6%下落したと報じられました。泉田氏は、日本株ではアドバンテスト、レーザーテック、フジクラ、キオクシア、イビデン(韓国ではSKハイニックス)が2桁の下落となり、ソフトバンクグループや東京エレクトロンも1桁台後半下げたと整理しています。
ショック当日の騰落率(米国10月14日・日本と韓国10月15日)
同じ日本株の指数でも、日経平均の下げはTOPIXの約2倍でした。
「いかに日経平均が値がさ株、ハイテク株比率が高いかっちゅう、これ見てもわかりますね」
日経平均は株価の高い銘柄の値動きが大きく効く指数です。今回の下げは、日本株全体というより、AI・半導体に関わる一部の値がさ株に集中していたことが、率で比べると分かります。
市場が見ていたのは、社債の値段だった
震源のCoreWeaveは、泉田氏の言葉を借りれば「ネオクラウド」と呼ばれる業態の会社です。NVIDIA製のGPU(AIの計算に使う半導体)を並べ、その計算能力を他社に貸し出します。設備を先に借金で用意し、後から売上で返していくため、借金が先行するビジネスモデルです。会社の中身は、企業分析の記事で詳しく扱います。
泉田氏は、損益の推移を見る限り「言うほど目の前に危機が迫ってるっていう感じには見えない」としたうえで、市場が反応したのは別の指標だったと指摘します。それがCoreWeaveの社債の値段です。
CoreWeaveの社債(2032年償還)の値段
社債は、満期(償還)まで持てば額面の100が返ってくるのが原則です。2032年に償還されるCoreWeaveの社債の値段は、額面100あたり80を割り込んだと報じられました。80割れは、発行体が財務的に苦しいことを示す目安とみなされています。
毎年受け取る利息は変わらないので、社債は安く買うほど利回り(買った値段に対する年あたりの収益率)が上がります。この社債の利回りは約15%まで上がったと報じられています。値段が80のときの利回りは約14.9%で、同じ日の米国債(5年)の利回り5.00%との差は約990bp(bpは0.01%のことで、9.9%ポイントにあたります)と算出できます。格付け会社S&Pは、国債より1,000bp以上高い利回りを「ディストレス(経営が危うい状態)」と数えるとされており、その水準にほぼ達していたことになります。
倒産に備える保険料にあたるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)も跳ね上がりました。CoreWeaveの5年CDSは、6月の約4.5%から、10月15日の日中には11.9%と過去最高になったと報じられています。ロイターは、保険料が約1,000bpの時点で、5年以内に債務不履行となる確率が約63%に相当すると報じました。これは保険料から逆算した値で、予測ではありません。
社債の値動きは、SNSでも話題になりました。10月13日の夜(米国時間)、投資家のチャマス・パリハピティヤ氏がCoreWeaveの社債利回りが15%に達したことを示すチャートをXに投稿し、イーロン・マスク氏が「Yikes(うわっ、まずい)」と返信しました。泉田氏によると、どちらの投稿も市場が閉まった後で、株が15%超下がったのは翌14日だったため、マスク氏の影響があったのではないかとも言われています。ただし、株価が下がった理由を投稿だけに求めることはできません。
なぜ日本の半導体株まで売られたのか
ここまでならCoreWeaveという1社の問題に見えます。それなのに、なぜアドバンテストがCoreWeave以上の打撃を受けたのか。インタビュワーがそう尋ねると、泉田氏はCoreWeaveの位置付けに答えがあると説明します。
CoreWeaveにはNVIDIAが出資しています。泉田氏によると、CoreWeaveはその出資を前提に社債で資金を集め、NVIDIAのGPUを買っています。売れ残った計算能力はNVIDIAが買い取る約束もあります。さらにOpenAIは、CoreWeaveの計算能力の利用者であり、上場時に株式を受け取った株主でもあります。
「この1社だけじゃなくていろんなところに『あの会社もか』『この会社もか』ってなってくると、信用不安が起きるんです」
泉田氏は、インタビュワー自身もCoreWeaveを知らなかったことを挙げて、あまり知られていない1社でもこれだけのインパクトがあると指摘します。同じビジネスモデルの会社は他にもあり、もしネオクラウドが行き詰まれば、GPUの買い手が減り、需給が緩んで値段も下がると泉田氏は見ています。NVIDIAも無傷ではいられないという見方です。
実際、10月14〜16日にかけて、揺れはCoreWeaveの周辺に広がりました。同じネオクラウドのIRENやNebius(ネビウス)の株価が大きく下がり、AIの借金の当事者とされるOracle(オラクル)は約8.8%下落しました。ソフトバンクグループの5年CDSは424bpと報じられています。一方で、ハイパースケーラー(巨大クラウド事業者)やGPUメーカーへの影響は、限定的ながら無傷ではなかった、と泉田氏は整理しています。
下げを大きくした、もう一つの要因は金利
泉田氏は、この連鎖の裏側に金利の問題があると指摘します。CoreWeaveのように社債で資金を集める会社は、金利が上がるほど利払いが重くなるからです。
10月14日には米国の9月のCPI(消費者物価指数)が発表され、前年比3.7%の上昇でした。インフレが収まっていないことで、市場では追加の利上げを意識する見方が強まったと報じられています。泉田氏は、借金をして設備に投資するネオクラウドにとっては、さらに逆風になると見ています。
「マクロの要因もコアウィーブの株価のところにも影響したと思います」
泉田氏は、今回の下落を社債不安と金利が重なった「複合的な株価の下落」と表現しています。どちらがどれだけ効いたのかは、同じ日に重なっているため分けられません。
アドバンテストは「下げていなかった」から大きく下げた
日本株で特に目立ったのがアドバンテストです。泉田氏は株価チャートを示しながら、AI株や半導体株は終わったという論調があるなかで、アドバンテストは下値を切り上げて上がってきていたと指摘します。
日経平均への寄与とアドバンテスト(10月15日)
泉田氏は、これまで下がっていなかった分、他の銘柄と比べて下げが大きくなったと説明しています。インタビュワーも、キオクシアやフジクラのような下げ方をしていなかったため、期待の調整がまだ済んでいなかったと受け止めていました。
日経平均への影響も大きく、10月15日に日経平均を最も押し下げたのはアドバンテスト(約1,300円)で、東京エレクトロン(約440円)、ソフトバンクグループ(約400円)が続き、3銘柄で約2,150円の押し下げになったと報じられています。
「だから正しく測りたかったらTOPIXを見てくださいといつも言ってんだけど」
日経平均の3,318円安のうち、3銘柄だけで約2,150円分を占めていたことになります。
次に同じことが起きたら、何を見るか
泉田氏は、リーマン・ショックの経験が生きると前置きして、信用不安が起きたときに売られやすい会社の特徴を挙げています。
「借入比率の高い企業から売られるんですよ」
まず数字で見るのは2つです。1つは、総資産に対する借金の比率です。財務の強いハイパースケーラーは最初に売られる側ではなく、AI半導体の関連銘柄を広く見たときに、借金比率の高い会社から先に売られると泉田氏は見ています。もう1つはPBR(株価純資産倍率)です。赤字になると株主資本が減り、PBRが高い会社はさらに割高に見えるため、先に売っておこうという動きが出やすいとしています。
定性的には、次のような会社に注意が必要だとしています。
- 売上がAIデータセンターの建設の量で決まる会社
- アドバンテストのように堅調に推移してきて、利益確定の売りが出やすい会社
- 資金を調達する側で、信用不安で調達コストが上がりやすい会社
- 指数への影響が大きい会社
同じ懸念が出たとき、影響を受けやすい会社の特徴
指数の需給も見逃せません。
「日経平均に組み入れられてる比率とかインパクトでかいよってなると、ちょっと『日経平均やめとこう』みたいな人がいたら、それ売っちゃった時に合わせて売られちゃうじゃない」
これまで日経平均を買ってきた人が多い分、その資金が離れるときには、組み入れ比率の高い銘柄がまとめて売られやすくなる、と泉田氏は見ています。
まとめ:疑われたのは「返せるか」だった
今回の下げは、AIの計算能力が要らなくなったという話から始まったものではありません。始まりは、借金で設備を先に作るネオクラウドの社債の値下がりでした。社債は80を割り込み、続いてCDSも11.9%まで上がりました。そこに、CPIが3.7%と高く、利上げが意識される金利の環境が重なりました。泉田氏が挙げた特徴に照らすと、借金が多い会社、AIデータセンターの建設の量に売上が連動する会社、高値の近くにあった会社、そして日経平均への影響が大きい会社から揺れたと考えられます。
次に同じような信用不安が出たときは、株価より先に、社債の値段やCDSといった「返せるか」を測る物差しが動くかどうかを見ておくと、どこから売られるかを考える手がかりになります。
ただし、社債価格やCDSは報道された時点の値で、日々の動きを追ったものではありません。今回の特徴は今回の値動きから読み取ったもので、次も同じ順序で揺れるとは限りません。個別企業がCoreWeaveにどれだけ売上を依存しているかも、この記事では確認していません。
参考資料
- CoreWeave, Inc.「四半期報告書(Form 10-Q、2026年4〜6月期)」
- CoreWeave, Inc.「目論見書(Form 424B4、2025年3月)」
- 日経平均プロフィル「日経平均株価 日々の値」(2026年10月)
- Nasdaq「CRWV・NVDA・MSFT・ORCL・SOX・ナスダック総合 ヒストリカルデータ」(2026年10月)
- 日本経済新聞「日経平均・TOPIXの終値」(2026年10月15日)
- 株式会社フィスコ「日経平均の寄与度」(2026年10月15日)
- 株探「個別銘柄の株価」(2026年10月15日)
- Investing.com「アジア株式市場と米国の利上げ観測」(2026年10月14日)
- Korea Herald・ロイター「KOSPIの終値」(2026年10月15日)
- Bloomberg「CoreWeaveの社債価格」(2026年10月14日)
- Coinpaper「CoreWeaveの社債利回り」(2026年10月14日)
- ピクテ・ジャパン「CoreWeaveの社債」(2026年10月16日)
- Bloomberg Tax「S&Pのディストレスの基準」(2022年11月)
- ロイター「CoreWeaveの社債とCDS」(2026年10月15日)
- The Next Web「CoreWeaveのCDS」(2026年10月15日)
- GuruFocus「ソフトバンクグループのCDS」(2026年10月15日)
- 米国労働統計局(BLS)「消費者物価指数(2026年9月分)」
- 米国財務省「国債利回り」(2026年10月14日)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
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株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
