この記事はここがポイント
- 楽天G社債は100万円単位、年3.800~4.600%利息とモバイルSIM1年無料
- この無料はデータ通信専用、6.4万円株主優待とは内容が異なる
- 社債は満期元本保証、株式は株価変動リスクあり、資金計画での検討が重要
楽天グループが年限5年6カ月の個人向け社債(第26回無担保社債・社債間限定同順位特約付)を準備しています。
年3.800~4.600%の仮条件を提示して需要調査を実施しており、正式な利率は10月16日に決定する見込みです。
同社の社債では「楽天モバイル」回線を1年間無料で使えるSIMが特典として付与されるのが特徴で、今回債でも購入した個人には同様の特典(データ通信30GB/月)がプレゼントされる予定です。
楽天グループは、12月末を基準とする株主優待でも「楽天モバイル」の無料提供を行ってきました。
ただし、同じ「楽天モバイル無料」でも、社債の特典と株主優待では、必要な資金や使える内容、リスクの性質が大きく異なります。
この記事では、社債の発行条件と特典の内容を整理したうえで、前回の株主優待と比べ、さらに直近の社債と利率を並べて、楽天債の位置づけを見ていきます。
楽天グループ第26回無担保社債の発行条件
- 銘柄:楽天グループ株式会社 第26回無担保社債(社債間限定同順位特約付)
- 利率:年3.800~4.600%(仮条件・税引前)
- 条件決定日:10月16日
- 発行額:3,600億円
- 期間:5年6カ月
- 申込単位:100万円単位
- 発行価格:額面100円につき100円
- 申込期間:10月19日~28日
- 払込日:10月29日
- 利払日:毎年4月29日・10月29日(初回は2027年4月29日)
- 償還日:2032年4月28日
- 格付け:A-(日本格付研究所=JCR、10月16日付で取得予定)
- 財務上の特約:担保提供制限、担付切換条項
- 引受証券会社:大和証券/楽天証券/みずほ証券/三菱UFJモルガン・スタンレー証券/SMBC日興証券/野村証券
税引後に換算すると、仮条件の範囲は年3.028~3.666%となります(税率20.315%で計算)。
100万円を購入した場合の税引前の利息は年3万8,000~4万6,000円で、利払いは2027年4月から2032年4月まで計11回です。
なお、前回の第25回債(2025年8月発行)は期間3年・利率2.336%・発行額1,300億円でした。
今回債では、前回よりも年限が2年6カ月伸びたうえ、金利環境も大きく異なっています。
社債の特典:楽天モバイルSIMが1年間無料
社債の特典の主な内容は次のとおりです。
- 対象:申込期間中に本社債を購入した個人
- 内容:「楽天モバイル」回線を1年間無料で使えるSIM(データ通信30GB/月)
- 案内:2027年2月頃に取扱証券会社から「ご購入者様特典のご案内」を郵送
- 主な条件:音声通話は利用不可。対応する通信端末と本人確認が必要。法人や申込時点で18歳未満の人は対象外。利用期間終了後に同じSIMで再契約・延長はできない
注意したいのは、音声通話が使えない「データ通信専用」である点です。
メインの電話番号として使うものではなく、タブレットやサブ回線のデータ通信用といった使い方が想定されます。
前回の株主優待と比べると?
楽天グループは12月末を基準日として株主優待を実施しています。前回の第29期(2025年12月末基準)の内容は次のとおりでした。
- 対象:2025年12月末時点で100株(1単元)以上を保有する株主(権利付最終日は2025年12月26日)
- 内容:「楽天モバイル」の音声+データ30GB/月プランを6カ月無料
- 継続要件:2025年12月末と2026年6月末の株主名簿に、同一株主番号で100株以上の記載があれば、さらに6カ月無料
- 主な条件:対応端末が必要。「Rakuten Link Office」アプリを使えば国内通話・国内SMSが無料。申込期間内に専用サイトでの申し込みが必要
社債の特典と株主優待の違い
それでは、社債の特典と株主優待の違いをみていきましょう。
社債(第26回債)
- 必要な資金:100万円(申込単位)
- 特典の内容:データ30GB/月、1年間無料、音声通話は不可
- 期間中の保有条件:なし
- 元本:満期の2032年4月28日に額面で戻る(途中売却時は市場価格)
株式(前回の第29期株主優待)
- 必要な資金:100株=6万3,960円(10月7日終値639.6円で計算)
- 特典の内容:音声+データ30GB/月、6カ月無料(継続要件を満たせば最大12カ月)
- 期間中の保有条件:12月末に加え、6月末も同一株主番号で100株以上
- 元本:株価次第で変動
必要な資金だけを見れば、株主優待のほうが社債の約16分の1で済み、音声通話も使えます。一方で、株式には満期がなく、元本は株価次第です。
楽天グループの株価は10月7日に終値639.6円(前日比▲27.7円、▲4.15%)となり、同日には一時634.1円と年初来安値をつけました。
これに対し、社債は100万円とまとまった資金が必要で、特典もデータ通信のみですが、発行体が約束通り支払えば年3.800~4.600%(仮条件)の利息を受け取りながら、満期には額面で元本が戻ります。
2026年12月末の株主優待はまだ発表されていない
12月末を基準日とする株主優待を受けるには、2026年は12月28日の権利付最終日の取引終了時点で株式を保有している必要があります。
ただし、2026年12月末を対象とする第30期の株主優待の内容は、10月8日時点で同社の株主優待ページに掲載されていません。
前回と同じ内容になるとは限らない点に注意が必要です。
また、社債の特典と株主優待はそれぞれ別の制度です。
楽天モバイル特典 社債と株主優待の比較
利率は直近の5年債・7年債と比べて高い?低い?
特典とは別に、社債としての利率水準も確認しておきます。
楽天G債の5年6カ月は、5年債より半年長く、7年債より1年6カ月短い期間です。
一般に、債券はお金を預ける期間が長いほど利率が高く設定されやすいため、年限の違いを意識して比べる必要があります。
2026年7~9月に条件が決まった個人向け社債のうち、年限や格付けが近いものと比較してみます(いずれも税引前)。
5年債(楽天債より6カ月短い)
5年ゾーンに先行した銘柄は以下の通りです。
近鉄グループホールディングス<9041>第135回債
- 期間:5年
- 利率:2.521%
- 条件決定日:7月9日
- 格付け: A-(JCR)/BBB+(R&I)
- 券面単位:10万円
- 保証:近畿日本鉄道株式会社保証付
SBIホールディングス<8473>第48回債
- 期間:5年
- 利率:2.689%
- 条件決定日:7月15日
- 格付け:A-(R&I)
- 券面単位:10万円
クレディセゾン<8253>第121回債
- 期間:5年
- 利率:2.448%
- 条件決定日:7月17日
- 格付け:AA-(JCR)/A+(R&I)
- 券面単位:10万円
<参考>個人向け国債 固定5年(第187回)
- 期間:5年
- 利率:2.39%
- 募集期間:10月8日~30日
- 券面単位:1万円
7年債(楽天G債より1年6カ月長い)
5年物より2年長い(より年限リスクが高くなる)7年ゾーンには、イオンとソフトバンクグループが先行しました。
イオン<8267>第31回債
- 期間:7年
- 利率:3.087%
- 条件決定日:8月7日
- 格付け:A-(R&I)
- 券面単位:100万円
ソフトバンクグループ<9984>第70回債
- 期間:7年
- 利率:4.75%
- 条件決定日:9月4日
- 格付け:A(JCR)
- 券面単位:100万円
JCRの格付けが楽天G債と同じ「A-」で、期間が半年短い近鉄グループホールディングス債は2.521%で、楽天G債は仮条件の下限でも+1.279%上回ります。
ただし、近鉄債はR&Iの格付けが「BBB+」で、子会社の近畿日本鉄道が元利金の支払いを保証している点も楽天G債とは異なります。
7年債では、R&Iで「A-」のイオン債(3.087%)を、楽天G債は期間が1年6カ月短いにもかかわらず下限でも+0.713%上回ります。
一方、JCRで1段階格上の「A」のソフトバンクグループ債(4.75%)は、楽天G債の上限4.600%を0.150%上回っています。
これは、ソフトバンクGは発行額が「1兆円」と巨額であり、このボリュームをスムーズに販売するために、個人の投資家に訴求する利率だったことが理由として考えられます。
なお、格付け会社ごとに評価の基準は異なり、条件決定の時期も異なるため、数字だけで単純に優劣はつけられません。
そもそも「社債間限定同順位特約」とは?
楽天G債の正式名称に付いている「社債間限定同順位特約付」は、多くの個人向け社債に付いている一般的な特約です。
一言で言えば「ほかの社債とは返済の順番が同じ」という約束です。
万が一、発行体の経営が行き詰まった場合でも、楽天グループが発行している他の無担保社債と同じ順位で返済を受けられます。
ただし対象は「社債間」に限られるため、銀行借入など社債以外の債務との順位まで約束するものではありません。
なお、第26回債は劣後債やハイブリッド債ではない「普通社債」で、利払いの繰り延べといった特別な条項は付いていません。
購入前に押さえておきたいリスク・注意点
信用リスク
社債は、発行体が倒産するなどして利息や元本を約束通り支払えなくなるリスクがあります。
JCRは2025年9月26日、楽天グループの長期発行体格付けをA-に据え置いたうえで、見通しを「ネガティブ」から「安定的」に変更しました。
その際、JCRはモバイル事業の資金収支は改善傾向にあるものの、最終損益は赤字が続き、財務負荷の高い状況が続いているとも指摘しています。
高い利率は、こうしたリスクを引き受ける対価でもある点に注意が必要です。
期間(5年6カ月)と価格変動リスク・流動性リスク
満期の2032年4月28日まで持ち続ければ、額面100円につき100円で償還されます。
一方、途中で売却する場合はそのときの市場価格での取引となり、金利が上昇していれば元本割れになる可能性があります。
個人向け社債は株式のように取引所で気軽に売買できるわけではなく、希望する価格・タイミングで売れないこともあります。
5年6カ月は使う予定のない資金で考えることが大切です。
購入単位
申込単位は100万円です。10万円単位で買えた近鉄グループホールディングス債やSBIホールディングス債、クレディセゾン債と比べると、まとまった資金が必要になります。
期間も5年を超えるため、イオン債(7年・100万円単位)と同様、ある程度の投資経験と余裕資金がある中上級者向けの商品といえるでしょう。
特典は利息とは別物
楽天モバイルの特典は、社債の発行条件そのものではなく、楽天グループが提供するサービスです。
データ通信のみで音声通話は使えず、使う予定があるかどうかによって価値は人それぞれです。
特典の有無ではなく、あくまで利率と信用リスク、期間で判断することが重要です。
税金・NISA
利息には20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかります。個人向け社債はNISAの対象外です。
記者コメント
楽天グループの第26回債は、期間5年6ヵ月・仮条件3.800~4.600%の利息に加え、「楽天モバイル」のデータ通信SIMが1年間無料になる特典が付きます。
前回の株主優待は100株(10月7日終値で6万3,960円)で音声+データの6カ月無料(継続要件で最大12カ月)を受けられる内容でしたが、株式は元本が株価次第で変動します。
社債は100万円とまとまった資金が必要な一方、満期まで持てば額面で元本が戻る仕組みです。
特典の「お得さ」だけで選ぶのではなく、必要な資金、元本の戻り方、使える通信の内容を比べたうえで、自分の資金計画に合う投資先を検討してみてはいかがでしょうか。
社債の利率は10月16日に決まり、申込期間は10月19日~28日です。
購入を検討する際は、必ず目論見書を確認してください。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
