この記事はここがポイント
- 100万円を10年間預けた場合、個人向け国債『変動10年』の手取り利息は約16.3万円、ゆうちょ10年定期貯金は約10.6万円と、約5.8万円の差
- 個人向け国債『変動10年』は半年ごとの利率見直し、ゆうちょ10年定期貯金は預入時の利率で固定
- ゆうちょ銀行は11月9日に通常貯金の金利を0.500%へ引き上げ、定期性貯金も引き上げ予定、改定後の金利が利息差を左右
日本銀行は9月18日の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)を1.25%程度へ引き上げることを決めました。
6月に続く利上げです。
同じ日、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行のメガバンク3行は、円普通預金の金利を年0.400%から0.500%へ引き上げると発表しました。適用は11月2日からです。
ゆうちょ銀行も同日、11月9日から通常貯金の金利を0.400%から0.500%へ引き上げると発表しました。
通常貯金の金利引き上げは、8月10日(0.300%→0.400%)に続くものです。
同行は定期性貯金についても引き上げを予定しているとしていますが、対象となる商品や改定後の金利、適用開始日は「確定次第、Webサイトで知らせる」としており、10月13日時点ではまだ公表されていません。
金利が上がるなら、まとまったお金をゆうちょの定期貯金に預けておこうと考えている方も多いのではないでしょうか。
一方で、同じく元本割れのない商品として個人向け国債があります。
ここでは、個人向け国債の「変動10年」と、ゆうちょ銀行の10年定期貯金に100万円を10年間預けた場合、受け取れる利息にどれだけの差が出るのかを試算していきます。
比較する2つの商品の基本情報
それでは個人向け国債とゆうちょ銀行の定期預金、それぞれの基本情報をみていきましょう。
個人向け国債 変動10年(第199回債・10月募集分)
- 利率(年):2.05%(税引後1.6335425%)
- 金利タイプ:変動金利(半年ごとに見直し)
- 利率の決め方:基準金利(10年固定利付国債の平均落札利回り)×0.66
- 最低金利:0.05%
- 募集期間:2026年10月8日~30日
- 発行日:2026年11月16日
- 利払い:毎年5月15日・11月15日の年2回
- 購入単位:1万円から1万円単位
- 中途換金:発行後1年経過すれば可能(直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685を差し引き)
ゆうちょ銀行 定期貯金(預入期間10年)
- 利率(年):1.250%(半年複利による税引前の年平均利回りは1.328%)
- 金利タイプ:固定金利(預入時の利率が満期まで続く)
- 利子の計算:預入期間3年以上は半年複利
- 預入単位:1,000円以上1,000円単位
- 預入期間内の払戻し:預入期間内払戻利率を適用
- 10年の定期貯金は継続預入・再預入の取扱いができません
- 預金保険の対象(元本1,000万円までとその利子を保護)
ゆうちょの10年定期貯金の金利は、8月10日の引き上げで0.900%から1.250%になったばかりです。
それでも個人向け国債の変動10年とは0.80%の差があります。
そもそも「変動10年」とは?
個人向け国債は、原則として個人だけが購入できる国債です。「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3タイプがあり、毎月発行されています。
変動10年の特徴は、利率が半年ごとに見直される点です。
基準となるのは長期金利の代表的な指標である10年国債の利回りで、その0.66倍が適用利率になります。
いわば「長期金利に連動して利息が増えたり減ったりする国債」です。
一方、ゆうちょの定期貯金は、預けた時点の利率が満期まで変わりません。
今後金利が上がっても、すでに預けた定期貯金の利率は据え置きになります。
金利が上がる局面では変動10年は利率の見直しで追いつける一方、定期貯金は預けた時点の利率に固定される、という点が両者の大きな違いです。
100万円を10年間預けたら手取り利息はいくら?
次にそれぞれの商品に100万円を投じた場合の手取り利息をシミュレーションしてみましょう。
試算の前提
- 運用金額:100万円
- 運用期間:10年間
- 個人向け国債 変動10年:10月募集分の年2.05%が10年間変わらないと仮定
- ゆうちょ 10年定期貯金:年1.250%(半年複利)、満期時に受け取ると仮定
- 税率:20.315%(復興特別所得税を含む)
- 端数処理などにより実際の受取額とは異なる概算です
個人向け国債 変動10年(年2.05%)
- 半年ごとの利息:税引前1万250円/税引後約8,168円
- 10年間の利息合計:税引前20万5,000円/税引後約16万3,354円
ゆうちょ 10年定期貯金(年1.250%)
- 10年間の利息合計:税引前約13万2,708円/税引後約10万5,748円
差額(税引後)
- 個人向け国債 変動10年のほうが約5万7,606円多い
定期貯金は半年複利のため、利息にも利息がつく分だけ有利になりますが、それでも約5万8,000円の差が残る計算です。
逆算すると、10年定期貯金で変動10年(年2.05%が続く場合)と同じ税引前利息を得るには、年1.87%程度の金利が必要になります。
現在の1.250%から0.6%以上の引き上げが必要な水準です。
なお、11月9日から引き上げられる通常貯金の金利(0.500%)で100万円を1年間預けた場合、利息は税引前5,000円、税引後3,984円です。
いつでも引き出せる通常貯金とは役割が異なりますが、変動10年の1年分の税引後利息(約1万6,335円)と比べると、金利水準の違いがわかります。
国債vsゆうちょ定期_利息比較
比較する前に知っておきたい注意点
それぞれのリスクや違い、注意点も整理しておきましょう、
変動10年の利率は下がることもある
試算は「年2.05%が10年間変わらない」という仮定にもとづいています。
変動10年の利率は半年ごとに見直されるため、長期金利が低下すれば受け取る利息も減る点に注意が必要です。
ただし、利率の下限は0.05%と決まっています。
定期貯金の金利は今後引き上げられる予定
ゆうちょ銀行は定期性貯金の金利引き上げも予定しています。
改定後の金利が公表されれば、試算の差は縮まります。
定期貯金は預けた時点の利率で固定されるため、預け入れのタイミングによって10年間の利息が変わる点も見逃せません。
途中で解約・換金した場合の扱い
個人向け国債は発行から1年間は原則として中途換金できず、1年経過後の換金でも直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。
定期貯金も、満期前に払い戻すと当初の利率ではなく預入期間内払戻利率が適用されます。
この利率は、経過した期間に応じた定期貯金の利率の60%が目安です。たとえば2026年10月13日時点の利率で10年定期貯金を預け、9年経過後に払い戻した場合は、同行が定める9年の利率1.100%×60%=0.66%が目安となります。
どちらも「10年間使わないお金」で運用することが前提になります。
税金はどちらも20.315%
個人向け国債の利子も定期貯金の利子も、受け取り時に20.315%分の税金が差し引かれます。
次回の個人向け国債は11月9日から募集
個人向け国債の11月募集分(変動10年は第200回債)の募集期間は2026年11月9日~30日で、金利は募集開始日の前営業日の11月6日に公表される予定です。
10月募集分の募集期間は10月30日までです。
まとめ
ゆうちょ銀行は11月9日に通常貯金の金利を0.500%へ引き上げ、定期性貯金も引き上げる予定です。
それでも現時点の金利で比べると、100万円を10年間預けた場合の税引後の手取り利息は、個人向け国債の変動10年が約16万3,000円、10年定期貯金が約10万6,000円と、約5万8,000円の差があります。
一方で、変動10年は今後の金利次第で受け取る利息が変わり、定期貯金は預けた時点で10年間の利息が確定するという違いがあります。
ゆうちょ銀行が定期性貯金の改定後の金利を公表した段階で、あらためて両者の利率を比べたうえで預け先を選んでみてください。
記者コメント
世界的に見れば日本の金利水準はなお相対的に低く、金利の上昇圧力は引き続き強い状況です。
日銀も9月18日の公表文で、経済・物価・金融情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げていく考えを示しています。
今後さらに利上げが進めば、個人向け国債の利率も、銀行やゆうちょの預貯金金利も、もう一段上がる可能性があります。
加えて、足元は金利の振れ幅(ボラティリティ)も大きくなっています。
こうした局面で理解しておきたいのは、いま10年という長い期間、利率を固定してしまうことの意味とリスクです。
10年定期貯金は預けた時点の1.250%が満期まで続くため、その後に金利が上がっても恩恵は受けられません。
途中で解約して預け直そうとしても、預入期間内払戻利率が適用され、当初の利率を下回ります。
金利の振れが大きいほど、どの時点で預けたかによって10年間の利息は大きく変わり得ます。
そのため固定金利の商品を選ぶなら、まとまった資金を一度に預けるのではなく、様子を見ながら時期を分けて少額ずつ積み上げていくことが、預け入れ時期のリスク分散になります。
ゆうちょの定期貯金は1,000円から預けられるため、こうした方法も取りやすいでしょう。
一方、変動10年は保有している間も半年ごとに利率が見直されるため、金利の上昇に追随できます。
ただし、基準金利の0.66倍で決まる仕組み上、長期金利の上昇分がそのまま利率に反映されるわけではなく、金利がピークをつけた後は利率も下がっていきます。
また、発行から1年間は原則として換金できず、その後の換金でも直前2回分の利子相当額(税引後)が差し引かれるため、金利がさらに上がった段階で固定金利の商品に乗り換えるには一定のコストがかかります。
変動10年であっても、まとまった資金を一度に投じるのではなく、時期を分けて少しずつ積み上げておくことが、先々の選択肢を残すことにつながるでしょう。
免責事項
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
