この記事はここがポイント
- 2026年10月30日まで募集の個人向け国債は固定5年が年2.39%、固定3年が年2.07%、変動10年が年2.05%の利率。
- 物価連動国債は全国消費者物価指数に連動して元金額が増減する最低額面10万円の満期10年の国債。
- 額面通りの元本で償還される個人向け国債に対し、物価連動国債は物価上昇を元金額に反映できる仕組み。
物価の上昇が続くなかで、「預けたお金の価値が目減りしないか」と気になっている方もいるのではないでしょうか。国債には、個人向け国債のほかに、元金額そのものが物価に合わせて増減する「物価連動国債」があります。
財務省は2026年10月7日、10月8日から30日まで募集する個人向け国債の発行条件を発表しました。固定5年の利率は年2.39%です。一方、物価連動国債は平成27年(2015年)1月から個人向けの販売が解禁されています。
この記事では、10月募集分の個人向け国債の利率と決まり方を確認したうえで、物価連動国債の元金額の決まり方と、個人向け国債との違いを財務省の資料で見ていきます。
個人向け国債の10月募集分は固定5年が年2.39%、募集は10月30日まで
個人向け国債は、原則として個人だけが購入できる国債です。満期と金利のタイプが違う固定3年・固定5年・変動10年の3種類が、毎月募集されています。
10月募集分の利率は固定5年2.39%、固定3年2.07%、変動10年2.05%
財務省「現在募集中の個人向け国債・新窓販国債」(令和8年10月15日現在)による10月募集分の利率(年率・税引前)は、次のとおりです。
- 固定5年(第187回債):年2.39%(税引後1.9044715%)
- 固定3年(第197回債):年2.07%(税引後1.6494795%)
- 変動10年(第199回債):年2.05%(税引後1.6335425%)
募集期間は令和8年10月8日から30日まで、発行日は11月16日です。変動10年の年2.05%は初回の利子に使われる利率で、半年ごとに見直されます。
また個人向け国債の募集価格は額面100円につき100円で、償還金額も額面100円につき100円です。発行後1年を過ぎてから国の買取で中途換金する場合は、額面100円につき100円に経過利子を加え、直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685を差し引いた額が戻ります
購入は最低1万円から1万円単位で、取扱金融機関は872機関です。
個人向け国債の利率は基準金利から決まり、物価の動きでは決まらない
個人向け国債の利率は、市場の金利をもとにした基準金利から、タイプごとの計算式で決まります。物価の上昇率をそのまま利率に反映させる仕組みではありません。
固定5年は「基準金利-0.05%」、固定3年は「基準金利-0.03%」で決まる
固定タイプの基準金利は、募集期間開始日の2営業日前に、市場の利回りをもとに計算した期間5年・3年の固定利付国債の想定利回りです。決まった利率は満期まで変わりません。
変動10年は「基準金利×0.66」、3タイプとも年0.05%の下限がある
変動10年の基準金利は、10年固定利付国債の入札の平均落札利回りです。計算した利率が年0.05%を下回る場合は、3タイプとも年0.05%が適用されます。
物価連動国債は、消費者物価指数に合わせて元金額が増減する国債
物価連動国債は、満期10年の国債です。財務省「物価連動国債の商品設計」では、通常の固定利付国債は元金額が償還時まで変わらないのに対し、物価連動国債は元金額が物価の動向に連動して増減すると説明しています。
物価連動国債の元金額は、全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)で決まる
物価が上がって増減したあとの元金額を「想定元金額」といい、額面金額に「連動係数」を掛けて計算します。連動係数は、全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)をもとに、発行時と比べた物価の動きを表す数字です。
財務省が参考値として公表している連動係数をみると、2026年10月10日時点で第22回債が1.16288、第28回債が1.09073、第31回債が1.01199でした。額面100万円あたりの想定元金額に直すと、第22回債は116万2880円、第28回債は109万730円です。
物価連動国債の利子は、想定元金額に表面利率を掛けて計算する
物価連動国債の利払いは年2回です。表面利率は発行時に決まって満期まで変わらず、利子の額は利払時の想定元金額に表面利率を掛けて計算します。物価が上がって想定元金額が増えれば、利子の額も増える仕組みです。
平成25年度以降に発行された物価連動国債には、償還時の元本保証(フロア)がある
物価が下がると、期中の想定元金額が額面を下回ることがあります。平成25年度以降に発行された物価連動国債は、償還時の連動係数が1を下回る場合に額面金額で償還されます。
ただし、財務省は、期中・償還時を問わず利息に対してフロアの効果はないとしています。平成20年度までに発行された物価連動国債には、元本保証はありません。
物価連動国債の最低額面は10万円、個人向け国債とは買い方も違う
物価連動国債の最低額面金額は10万円で、振替は10万円の整数倍で行われます。個人向け国債が1万円から買えるのとは、購入の単位が違います。
物価連動国債を販売している金融機関は、財務省では把握していない
財務省のよくある質問では、物価連動国債は平成27年1月から相対取引による個人向け販売が解禁されたと説明しています。そのうえで、個人向け国債や新窓販国債以外の国債は金融機関によって販売している場合があるものの、取扱いの有無は財務省では把握していないとしています。
物価連動国債の購入価格は、額面100円とは限らない
財務省の広報誌「ファイナンス」(令和6年3月号)に掲載された寄稿では、償還時に100円を下回らない元本保証があっても、105円で購入したものが100円で償還されることは起こりうると指摘されています。
個人向け国債の10月募集分は固定5年が年2.39%で、額面100円につき100円で買い、100円で戻ります。物価連動国債は、全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)に合わせて元金額が増減し、最低額面は10万円です。
同じ国債でも、利子と満期に戻る額の決まり方が違います。物価連動国債を扱っているかどうかは、口座のある証券会社や銀行の窓口で確かめられます。
「物価に連動する」と聞くと、物価が上がる局面では有利な商品に見えるかもしれません。ただ、物価連動国債は元金額が下がることもあり、購入の単位や買える場所も個人向け国債とは違います。名前の印象ではなく、元金と利子の決まり方から比べていただきたいところです。
物価の上昇に備えたいとき、個人向け国債と物価連動国債で何が変わるか
物価上昇に備える視点でそれぞれ見ていきましょう。
個人向け国債の固定5年は、買ったときの年2.39%が5年間続く
10月募集分の固定5年を額面100万円買うと、1年分の利子は税引前で2万3900円です。この利率は満期まで変わらないため、5年の間に物価がどう動いても、受け取る利子の額は変わりません。
満期に戻るのは額面の100万円です。物価が大きく上がれば、戻ってきた100万円で買えるものは5年前より少なくなります。反対に、物価が落ち着けば、決まった利率を受け取り続けられる安心感があります。
物価連動国債は、物価が上がった分だけ元金額と利子が増える
物価連動国債は、物価が上がると想定元金額が増え、利子もその想定元金額に表面利率を掛けて計算されます。物価の上昇を元金額に取り込める点が、個人向け国債との大きな違いです。
一方で、物価が下がれば期中の想定元金額は額面を下回ることがあります。償還時の元本保証はありますが、利子にはフロアの効果がない点もあわせて押さえておきたいところです。
物価連動国債を検討する前に、家計の側で確かめておきたい3つのこと
物価連動国債は、個人向け国債ほど身近な商品ではありません。名前だけで選ぶ前に、私は次の3点を確かめていただくようにお伝えしています。
10年間使わずにおけるお金かどうか
物価連動国債は満期10年の国債です。個人向け国債のような国の買取による中途換金の説明は、財務省の物価連動国債の商品設計にはありません。満期まで持ち続けられる金額かどうかを、教育費や住宅、車の買い替えなど、これから10年の大きな支出と並べて確かめておきましょう。
10万円単位で買えるか、口座のある金融機関で扱っているか
物価連動国債の最低額面は10万円です。財務省は取扱いの有無を把握していないとしているため、口座のある証券会社や銀行に、物価連動国債の取扱いがあるかどうか、買うときの価格や手数料がどうなるかを直接聞く必要があります。
物価の上昇に備えるお金は、家計の一部に限る
物価の上昇が気になると、まとまったお金をすべて物価に強そうなところへ移したくなるものです。ただ、生活費の数か月分はいつでも引き出せる預金に置き、使う時期が決まっているお金は個人向け国債の固定3年・固定5年で満期を合わせるなど、役割ごとに置き場所を分けて考えることが大切です。
そのうえで、10年単位で手をつけないお金の一部を、物価の動きに合わせて元金額が変わる商品に置くかどうかを検討すると、家計全体のバランスを崩さずに済みます。
まとめ
個人向け国債の10月募集分は、固定5年が年2.39%、固定3年が年2.07%、変動10年が年2.05%で、募集は10月30日までです。利率は基準金利から決まり、額面100円につき100円で買って100円で戻ります。
物価連動国債は、全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)に合わせて元金額が増減する満期10年の国債で、最低額面は10万円です。同じ国債でも仕組みが大きく違うため、お金を使う時期と、取り扱う金融機関の有無を確かめてから比べましょう。
参考資料
野村證券株式会社出身。FP2級・証券外務員一種を保有。国内外株式、投資信託、債券、保険商品まで幅広い資産運用に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集長として記事も執筆。
