利益を押し上げる「操業度効果」と立ちはだかる「値下げ圧力」
では、具体的に何が利益を押し上げているのでしょうか。泉田氏は、企業の決算説明会資料に掲載されている「営業利益増減要因(ウォーターフォールチャート)」を読み解くことが重要だと語ります。
太陽誘電の2027年3月期の営業利益予想(200億円から300億円への増加)を分解すると、最も大きなプラス要因となっているのが「操業度効果」で、これがプラス329億円も利益を押し上げています。
「工場だと操業度が上がると固定費っていうのが決まってるんで、売上がちょっと増えるだけでも利益がドカンと増えるんですよ」
操業度効果とは、簡単に言えば「工場の稼働率が上がることによる利益押し上げ効果」です。工場を動かすための固定費は生産量にかかわらず一定であるため、たくさん作れば作るほど製品1個あたりのコスト(固定費の負担分)が下がり、利益率が高まるという製造業特有のメカニズムです。
営業利益増減要因ウォーターフォール(2027年3月期予想)
プロダクトミックスによる高付加価値化戦略
一方で、利益を大きく引き下げるマイナス要因も存在します。それがマイナス189億円と計上されている「販売価格影響」です。
「同じ商品だと翌年値下げしないといけないみたいなものがあるんで、いわゆる販売価格影響っていうのがありまして」
BtoB(企業間取引)の製造業では、顧客であるスマートフォンメーカーや自動車メーカーから、毎年厳しいコストダウン(原価低減)の要求を受けます。
同じ製品を作り続けているだけでは、販売単価は年々下がっていく宿命にあるのです。これを業界用語で「Pダウン(プライスダウン)」と呼びます。
この厳しい値下げ圧力を跳ね返し、利益を成長させるために太陽誘電が取っている戦略が「プロダクトミックス(製品構成)の改善」です。
同社の売上は大きく「民生機器」「情報機器」「通信機器」「自動車」「情報インフラ・産業機器」の5つの用途に分かれていますが、この中で単価が高く、値下げ圧力が相対的に緩やかな高付加価値製品の比率を意図的に引き上げているのです。
「生産のプロセスの見直しとか原材料のコストダウンとか皆さん一生懸命やってるわけですよ。その中でどうやって操業度を上げてより高いものを売っていくか」
現在、太陽誘電の業績を力強く牽引しているのが「AIサーバー向け」と、自動車の安全性を担保する「ADAS(先進運転支援システム)向け」のコンデンサです。
これらの分野は高い信頼性と性能が求められるため、単価が高く設定できます。この高付加価値製品をたくさん作り、工場の稼働率を上げる(操業度効果)ことで、既存製品の値下げ分を補って余りある利益を生み出しているのです。
汎用品から高付加価値品へのプロダクトミックス改善
「イズミダイズム」はモニクルグループが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命出身の元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点から経済ニュースの裏側や資産形成のトピックを論理的に解説します。
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
