この記事はここがポイント
- ZOZOの議決権はLINEヤフーが過半を握り、ネットグループの支配下。
- 2026年3月期ROE46.6%、配当性向72.1%と高水準も、株価は昨秋から1割半下落。
- LINEアカウントや海外Lyst子会社化で集客強化、2030年3月期EBITA900億円目標。
ZOZOTOWNという名前から連想するのは、独立したファッションEC企業の姿だろう。私も長いあいだ、そう捉えていた。だがZOZO<3092>の大株主の欄を開くと、議決権の過半を握るのはネット大手のグループ会社だ。株価は昨秋から下げ基調をたどり、2026年に入って1,000円を割り込む場面もあった。この会社の素性と株価は、どこでつながっているのか。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
大株主の首位に並ぶのは、ファッション企業ではない
2026年3月期の有価証券報告書で、ZOZOの大株主の首位に立つのはZホールディングス中間株式会社だ。保有株数は458,858,700株、比率は51.89%にのぼる。
ZOZO自身が親会社として挙げるのはLINEヤフーで、2025年3月末時点の議決権比率は51.5%と開示されている。さらに上位にはソフトバンクグループが連なり、同社が2026年3月末時点で開示する連結子会社としてZOZOは間接議決権51.9%と記載されている。
つまり議決権の過半は、ファッションの世界の外側にある通信・ネットのグループが握っている。
創業者の前澤友作氏はどうか。2026年3月期の大株主では第7位、比率は1.35%だ。2016年3月期には43.16%を持つ筆頭株主だったから、10年で立ち位置はすっかり入れ替わった。
所有者別の内訳も、この構造を素直に映している。その他法人が51.56%、外国法人等が23.98%、金融機関が17.4%を占め、個人その他は4.01%にすぎない。
株主数は20,152人で、うち19,097人は個人だ。人数では9割を超えるのに、持ち分では4%。この落差が、ZOZOという会社の使われ方と持たれ方のズレを、そのまま数字にしている。
ROE46.6%を支えているのは、利益率だけではない
2026年3月期のROE(自己資本利益率)は46.6%だった。小売業255社の中央値7.4%と比べると、6倍を超える。
もっとも、この会社を小売業の物差しに当て込むのは慎重にやったほうがいい。営業利益率は30.4%で、小売業中央値の3.7%とは桁が違うが、そもそも売上の作りが違うからだ。
会社の説明によると、2026年3月期の商品取扱高は6,660億円で前期比8.4%増。一方、損益計算書に載る売上高は2,283億円にとどまる。取扱高の全額ではなく、そこから得る手数料に近い部分を売上として計上する構造だ。分母の性質が違う比率を並べても、読み取れるものは少ない。
ではROEはどうか。こちらは資本に対する利益の比率なので、業種をまたいでも比較の意味が残る。そして46.6%という水準は、高い利益率と、自己資本を厚く積み上げない資本政策の掛け算で成り立っている。
過去5期を並べると、その掛け算の中身が見えてくる。ROEは2022年3月期の62.5%から60.1%、55.0%、49.4%、46.6%と、一貫して下がってきた。
一方で自己資本比率は43.2%、49.2%、52.4%、52.6%、53.9%と切り上がっている。利益が伸びているのにROEが下がるのは、分母である自己資本の積み上がりのほうが速いからだ。
会社はこの積み上がりを放置しているわけではない。配当性向は2022年3月期の50.4%、2023年3月期の49.3%から、2024年3月期に70.2%へ切り上がり、2026年3月期は72.1%まで上がっている。小売業中央値33.1%の2倍を超える水準だ。
2026年3月期の配当支払額は328億円。議決権の過半をひとつのグループが握る構造では、この現金の半分強はそのグループ側へ向かう。ZOZOは親会社にとって、事業の一翼であると同時に配当の出し手でもある。
そしてこの手厚い還元は、少数株主にも同じ配当として届く。親子上場はガバナンスの論点として語られることが多いが、還元政策の面では、支配株主が現金を欲しがる姿勢が結果として少数株主と同じ方向を向くこともある。
ただし財務の側にはまだ余裕が残る。自己資本比率53.9%は小売業中央値48.8%を上回り、短期借入金は200億円で5期を通じてほぼ動いていない。手元現金は694億円ある。
負債をほとんど増やさない財務が資本効率の観点で最適かどうかは、また別の論点だ。ROEの緩やかな低下は、その論点が数字として表に出てきた姿とも読める。
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
