日立製作所、セグメント利益の首位は重電ではなく売上3番手のデジタル事業。昨秋から3割上げた株価は何を織り込んだのか
testing/Shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
20:30
日立製作所、セグメント利益の首位は重電ではなく売上3番手のデジタル事業。昨秋から3割上げた株価は何を織り込んだのか
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この記事はここがポイント

  • 日立製作所の2026年3月期セグメント利益は、売上3番手のデジタル事業が4,500億円で首位。
  • 2026年3月期当期利益は8,023億円で過去最高、売上低調も資本効率は向上。
  • 株価は昨秋約3割上昇後、デジタルと重電の利益構造変化で方向感に欠ける状態。

重電とインフラ。日立製作所<6501>という社名から立ち上がるのは、たいていこの二つだろう。私も長いあいだ、そういう会社だと思っていた。

だが2026年3月期の事業別の数字を並べると、利益をいちばん稼いでいるのは重電系の事業ではない。売上収益では3番手に置かれるデジタル事業である。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

社名が背負う重電のイメージと、利益の出どころのズレ

発電、送配電、鉄道、昇降機。日立製作所が手がける事業を思い浮かべると、どれも重量のある設備が並ぶ。電気機器という業種区分に置かれながら、実質はインフラの会社だという理解は、そう外れていない。

実際、2026年3月期通期の売上収益は10兆5,867億円で、前期から8%増えた。この規模を支えているのは、たしかに設備系の事業である。

売上収益で最大のエナジーが3兆2,008億円、次点のコネクティブインダストリーズが3兆7億円。構成比では30.2%と28.3%で、二つ合わせて全社の6割弱を占める。

ところが、利益の並びは同じ順序にならない。事業別の利益(セグメント利益)で首位に立つのはデジタルシステム&サービスの4,500億円で、エナジーの4,160億円を上回る。

売上収益では2兆7,565億円、構成比26.0%の3番手にすぎない事業が、利益では全事業の先頭にいる。

理由は利益率の差だ。デジタルシステム&サービスのセグメント利益率は16.3%で、エナジーの13.0%、コネクティブインダストリーズの12.2%、モビリティの8.2%を明確に上回る。売上の重さと利益の厚みが、この会社では一致していない。

売上3番手のデジタル事業が、なぜ利益で首位に立つのか

ここで気になるのは、この構図がいつからのもので、いつまで続くのかという点だろう。2026年3月期のセグメント利益は、デジタルシステム&サービスが前期比+14.2%、エナジーが+65.1%で着地している。

伸び率で見れば、追い上げているのは重電側だ。首位と2位の差は、前期の水準から一気に縮んだ。日立を単純な重電株として括るのも、単純なIT株として括るのも、どちらも粗いということになる。

会社の説明を追うと、二つの増益の中身は性格が違う。デジタルシステム&サービスについては、欧米顧客の投資抑制でサービス&プラットフォーム事業が減収となる一方、国内のDX(デジタルトランスフォーメーション)やシステムのモダナイゼーションを中心としたフロントビジネス事業が堅調に推移し、Lumada事業の拡大も加わって増収になったとしている。増益要因にはプロジェクトマネジメントの強化とコスト削減による収益性の改善を挙げる。

一方のエナジーは、パワーグリッド事業の大型プロジェクトが好調で、受注残が着実に売上へ転換したこと、為替の影響を増収要因に置く。増益についても、受注残の収益性改善、生産効率の継続的な向上、システム統合費用などの経営基盤刷新費用の収束を理由に挙げている。

読み比べると、片方は需要をつかんで単価と生産性で稼ぎ、もう片方は積み上がった受注をきれいに履行しきることで稼いでいる。同じ増益でも、再現性の性質が違うと考えられる。

日立が自社の成長軸として置いているのは、この二つを横断する部分だ。AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群HMAXについて、会社は当期の売上収益が約3,000億円、Adjusted EBITA率(買収で生じた無形資産の償却費を足し戻した調整後の営業利益率)が20%以上に達したとしている。

デジタルの利益率が高いというより、設備の側にソフトウェアを載せて取り分を増やしている、と読むほうが実態に近いのではないだろうか。

イメージとのズレは、残りの二つの事業にも表れている。コネクティブインダストリーズの売上収益は前期比▲2.8%の減収だった。会社は中国における新設昇降機の需要減少でビルシステム事業が減収となったことを挙げる。

それでもセグメント利益は+6.4%の増益で、支えたのは半導体製造装置を扱う計測分析システム事業の増収である。昇降機と空調の会社という見え方の裏側で、稼ぎの中身は半導体関連へずれている。

モビリティは売上収益1兆3,206億円、セグメント利益1,081億円で、利益率8.2%は4事業のなかで最も低い。買収した鉄道信号関連事業の統合に伴う費用が減益要因になったと会社は説明しており、投資の回収局面にある事業だと位置づけられる。

出所:株式会社日立製作所 有価証券報告書をもとに筆者作成1/2
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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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