この記事はここがポイント
- 厚生年金は月20万円以上受給者が全体の2割弱で、10万円未満がこれを上回るのが令和6年度の実態
- 年金のみでのゆとりある老後生活は難しく、iDeCoやNISAなど自助努力での早めの資産形成が不可欠
- 年金繰上げ受給は生涯減額、繰下げ受給は最大84%増額だが、税金や社会保険料負担増も検討
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」により、現代のシニア世代のリアルな年金受給額が明らかになりました。物価高や社会保険料の負担増が続く中、「自分は将来いくらもらえるのか」「年金だけで暮らしていけるのか」と不安を感じる方は少なくありません。
今回は、最新の公的データから厚生年金の受給額の実態を紐解き、年金の受け取り時期をずらす制度の仕組み、そして将来に向けた資産形成の考え方について分かりやすく解説します。
厚生年金の月額「10万円」未満と「20万円」以上、どちらが多い?
厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金分を含む)の平均受給額は月額15万289円です。しかし、男女別に見ると大きな格差があります。
男女別の平均受給額
厚生年金の受給額
〈全体〉平均年金月額:15万289円
〈男性〉平均年金月額:16万9967円
〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含む
割合(全体:1608万5696人)
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 30万円以上の割合:0.12%
注目すべきは、「10万円未満」が19.0%に対し、「20万円以上」は18.8%という点です。なんと、わずかに10万円未満の層が上回っているのが現実です。「20万円以上もらえるリッチなシニア」は全体の2割弱にとどまります。
年金だけでゆとりある生活を送るのは難しく、iDeCo(個人型確定拠出年金)での積立や、長く働くためのキャリア形成といった「自助努力」による備えが不可欠と言えるでしょう。
【年金の繰上げ受給】《前倒し》で早くもらう分、年金額は「一生減額」のまま
繰上げ受給の減額イメージ
老齢年金は原則65歳から受け取りが始まりますが、60歳〜64歳の間に前倒しで受給する「繰上げ受給」も可能です。早くお金を受け取れるメリットはありますが、受給額は減額され、その状態が生涯にわたって続きます。
減額率の計算ルール
減額率は、繰り上げた月数に応じて以下の数式で算出されます(1か月あたり0.4%減)。
- 減額率(最大24%) = 0.4% × 繰り上げた月数
※昭和37年4月1日以前生まれの方は、減額率が「0.5%(最大30%)」と現行より高く設定されています。
※一度請求すると取り消しができず、減額された金額が一生続きます。
最短の60歳0か月で請求した場合: 年金額は24%減となります。一度手続きを行うと取り消しはできないため、慎重な判断が求められる制度です。
【年金の繰下げ受給】《遅らせて》年金が増えると「税金・社会保険料」も増える可能性あり
繰下げ受給の増額イメージ
逆に、年金の受給開始を66歳〜75歳まで遅らせることで、受給額を増やすことができるのが「繰下げ受給」です。1か月遅らせるごとに0.7%ずつ受給額が上乗せされます。
増額率の計算ルール
増額率は、65歳になった月(誕生日の前日が含まれる月)から受給開始までの月数で決まります。
- 増額率(最大84%) = 0.7% × 繰り下げた月数
最長の75歳まで遅らせた場合、年金額は84%アップします。
※昭和27年4月1日以前生まれの方は、繰下げ上限が70歳までのため、最大増額率は42%です。
※待機期間中の生活費をどう確保するかが、この制度を活用する上での鍵となります。
ただし、受給開始までの生活費を自分で確保する必要があるほか、年金が増えることで税金や社会保険料の負担が増し、手取りが思ったより伸びない可能性があります。また、受給前に亡くなった場合、増額分は受け取れない点にも注意が必要です。
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
