国際事業の「増収減益」はどこから来たのか
セグメントに分けると、構図はもう少し具体的になる。国際事業の上期売上収益は685億円で+11.9%と伸びた一方、事業利益は51億円で▲10.2%だった。
内訳は対照的だ。トマト他一次加工は売上収益306億円(+5.5%)に対し、事業利益は23億円で▲23.7%。会社はトマトペーストの世界的な需給緩和を受けて米国や欧州、豪州で販売価格を引き下げたとしており、円安による増収効果が価格下落を覆い隠した格好である。
対してトマト他二次加工は売上収益382億円(+18.4%)、事業利益27億円(+10.4%)と伸びた。2026年1月に取得した英国の食品ディストリビューターの連結効果に加え、フードサービス企業向けの販売が好調に推移したという。取得対価は55億円、のれんは27億円を計上し、取得日以降の売上収益として80億円が積み上がっている。
原料に近い一次加工が市況に振られ、顧客に近い二次加工が付加価値で持ちこたえる。国際事業の増収減益は、逆向きの2つの力が同じセグメントの中で相殺し合った結果と読み取れる。
国内側も楽ではない。主力の飲料カテゴリーは売上収益389億円で▲1.5%、事業利益は27億円で▲10.7%と、価格改定の副作用が最も色濃く出た。
ピークからの巻き戻しと、食品らしくないバランスシート
時間軸を広げると、直近の減益は悪化というより巻き戻しに見える。2024年12月期は売上収益3,068億円、営業利益362億円、当期利益250億円、ROE(自己資本利益率)15.7%と突出した1年だった。
続く2025年12月期は売上収益2,942億円、営業利益226億円、当期利益148億円、ROEは7.9%に戻っている。トマト市況という外部要因が効く事業を抱える以上、単年のピークをそのまま実力と見なすのは危うい。
もっとも、業種の中で見れば上位にあるものは多い。食料品業種のROE中央値は6.6%、営業利益率の中央値は3.8%であり、カゴメの2025年12月期の営業利益率は7%台後半とこれを大きく上回る。
興味深いのは、その一方で財務の形が食品らしくない点だ。食料品業種の自己資本比率の中央値が60.8%であるのに対し、カゴメは50.7%。有利子負債は824億円あり、棚卸資産は2021年12月期の471億円から2025年12月期には1,194億円へ膨らんだ。在庫が現金に戻るまでの日数も143日から219日へ伸びている。
ディフェンシブという言葉から連想される軽い商売とは、ずいぶん様子が違う。原料となる農産物を海外の畑から抱え込む垂直統合は、強みであると同時に運転資本を太らせる。高い利益率と重い資産は、同じ事業構造の表と裏として同時に成り立っている。
株価が上値を切り下げてきた局面では、この資本の重さと利益水準の後退が同時に意識された可能性がある。
筆者コメント
上期の減益要因と通期修正の理由を並べると、外からの一撃で沈んだのではないことが見えてくる。価格改定の副作用、市況の下降、地政学、コスト高。どれも単独では致命傷ではないが、同時に効くと利益の層は薄くなる。
ここで効いてくるのが、在庫が現金に戻るまでの長さだ。仕入れから販売までの時間が長い商売では、原料価格が動いた瞬間ではなく、数四半期遅れて損益に出てくる。足元の数字は、昨年の畑と今年の値段が混ざり合った結果でもある。
だからこそ、この会社を四半期ごとの増減率だけで評価するのは向いていないと私は考える。見たいのは、価格改定後の数量がいつ戻るか。そして一次加工の市況が下げ止まったとき、利益率がどこまで戻るか。この2点だろう。
利益の絶対水準が下がる局面でも、業種の中での相対的な位置は保たれている。物差しを1本に絞らず、絶対水準と相対水準の両方を持ったまま次の四半期を眺めることをおすすめしたい。
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
