過去の運用成果を比較すると何が違う?
「オルカン」や「S&P500」をベンチマークとするファンドは複数ありますが、今回は三菱UFJアセットマネジメントが設定している以下2本の運用実績を比較してみましょう。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の運用実績
三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、米国を中心としつつも、欧州・日本・新興国など世界中の株式市場に分散投資しています。
三菱UFJアセットマネジメントが公表している騰落率(分配金再投資)を見ると、以下のようになっています。
オルカンの騰落率
【2026年7月23日基準】
- 1ヵ月:+0.46%
- 3ヵ月:+7.27%
- 6ヵ月:+11.80%
- 1年:+35.48%
- 3年:+93.03%
- 5年:+146.33%
- 設定来:+284.12%
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の運用実績
「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、米国を代表する約500社に集中投資するファンドです。
米国企業は成長力が高く、特にIT・ハイテク分野の拡大を背景に、長期的に高いリターンを上げてきました。
同じく三菱UFJアセットマネジメントが公表している騰落率(分配金再投資)を見ると、以下のようになっています。
S&P500の騰落率
【2026年7月23日基準】
- 1ヵ月:+1.33%
- 3ヵ月:+7.78%
- 6ヵ月:+12.08%
- 1年:+33.65%
- 3年:+96.46%
- 5年:+165.97%
- 設定来:+349.70%
どちらが優勢か?期間によって順位が入れ替わる点に注意
3年・5年・設定来といった長期の期間で見ると、米国市場に集中投資するS&P500が、オルカンに比べてリターンの大きさで上回る傾向にあります。
設定来のリターンでは、S&P500が+349.70%であるのに対し、オルカンは+284.12%と、65ポイント以上の差がついています。
一方で、直近1年間の騰落率を見ると、オルカン(+35.48%)がS&P500(+33.65%)をわずかに上回っています。
このように、常にS&P500に軍配が上がるわけではなく、期間の切り取り方によって順位が入れ替わることもある点には注意が必要です。
とはいえ、米国市場の動向によっては大きく値下がりするリスクもあるため、どちらが良いとは一概には言えません。
【積立投資】NISAで「月3万・5万・10万」をシミュレーション
前章で確認した過去の実績を、そのまま将来に当てはめるのは現実的ではありません。
ここでは、より現実的な想定利回りとして「年利3%・5%・7%」の3パターンを使い、新NISAで「月3万円・5万円・10万円」を20年間積み立てた場合の資産額をシミュレーションしてみましょう。
※金融庁「つみたてシミュレーター」を使用 ※本シミュレーションは、実際の運用結果を保証するものではありません。
運用利回り3%の場合
- 積立額3万円:約985万円
- 積立額5万円:約1642万円
- 積立額10万円:約3284万円
比較的保守的な想定であっても、月10万円の積立を20年間続けることで3000万円を超える計算です。
積立総額(月3万円の場合、20年間で720万円)と比べると、運用による増加分は約265万円となり、大きく増やすというより、着実に資産を積み上げるイメージに近いパターンといえます。
運用利回り5%の場合
- 積立額3万円:約1232万円
- 積立額5万円:約2054万円
- 積立額10万円:約4108万円
3%の場合と比べると、同じ積立額でも資産額の差が大きく広がります。月5万円の積立でも、20年後には2000万円を超える計算です。
運用利回り7%の場合
- 積立額3万円:約1563万円
- 積立額5万円:約2605万円
- 積立額10万円:約5210万円
前章で確認したオルカン・S&P500の設定来CAGR(19〜21%)と比べると、7%という利回りはかなり現実的な水準に近づきます。
それでも、月10万円の積立を20年間続けた場合、5000万円を超える資産形成が見込める計算です。
想定利回りが2ポイント異なるだけでも、長期間の積立では資産額に大きな差が生まれます。
「過去の実績に基づく試算」と、本章の「現実的な想定に基づく試算」を見比べながら、自分がどの程度の利回りを前提に資産計画を立てるべきか、慎重に検討することが大切です。
【元証券マンからのアドバイス】積立額を決める前に考えておきたいこと
前章のような資産額のシミュレーションは、あくまで「その金額を積み立てられたら」という前提の話です。
シミュレーション結果を見て、「できるだけ多く積み立てたほうがいい」と感じた方もいるかもしれませんが、安易に積立額を決めると後悔する可能性があります。
そこで、積立額を決める前に考えておくべきポイントをまとめました。
①シミュレーションの金額から積立額を決めるのではなく、余裕資金から積立額を決める
まず自分の余裕資金を算出し、その範囲内で積立額を設定することが、途中で挫折しない積立投資の基本です。
具体的な計算例で考えてみましょう。仮に毎月の手取りが35万円、固定費(住居費・保険料・通信費など)が15万円、生活費(食費・日用品費など)が8万円の場合、まず手元に残るのは12万円です。
ここから、まだ十分に確保できていない生活防衛資金(生活費の半年分程度)の積立分を差し引きます。生活費が月8万円程度であれば、半年分の48万円を2年かけて確保するとして、月々2万円程度が目安です。
さらに、趣味・娯楽費や旅行、家電の買い替え、冠婚葬祭といった不定期の出費に備える「予備費」も確保しておく必要があるでしょう。
仮に予備費を3万円差し引くと、最終的に投資に回せる資金は7万円程度、という計算になります。ただし、この分を「全額投資に回せ」という話ではありません。
この範囲の中で、自身のリスク許容度や目標とする資産額に応じて、継続しやすい積立額を決めてください。1万円でも2万円でも、もっと少額でも構いません。
なお、ここで示した金額はあくまで簡易的な試算です。実際の家計は家族構成やライフステージによって異なるため、ご自身の家計に当てはめて計算してみることが大切です。
②積立額は、ボーナスや収入の変化に応じて見直せるようにしておく
最初に設定した積立額を固定的に考える必要はありません。収入が増えた方は積立額の増額を、支出が増えた方は一時的な減額も視野に入れましょう。
無理のない金額から始め、状況に応じて調整する柔軟さが、長期投資を継続するコツです。
③相場が大きく下落した場合の「心の準備」もセットで考える
オルカン・S&P500ともに、過去には大きな下落を経験しています。
積立額を決める際は、「一時的に資産が2〜3割減っても、当初の計画通り積立を続けられるか」という視点も、あらかじめ持っておくことをおすすめします。
積立投資は、金額の大きさよりも「継続できるかどうか」が最終的な成果を左右します。まずは自分の家計を見直し、無理なく続けられる金額から始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
オルカンとS&P500は、どちらもNISAで人気の高い投資先ですが、その性格には違いがあります。
過去の運用実績では、設定来・3年・5年といった長期の期間でS&P500がオルカンを上回る傾向にありますが、直近1年ではオルカンが上回る局面もあり、常に一方が優勢とは限りません。
また、過去の運用実績はあくまでも結果論であり、同じペースが今後も続く保証はありません。より現実的な想定利回り(年利3%・5%・7%)で試算すると、月々の積立額と期間次第で、着実な資産形成が見込めることが分かりました。
参考資料
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証券会社出身。約8年間にわたり株式や投資信託、生命保険の販売に従事。現在はフリーライター兼個人投資家として活動中。FP2級や一種外務員の知識と自身の投資実務を活かし、マーケット動向を注視した金融記事を精力的に執筆している。

大切なのは、シミュレーションの数字だけで積立額を決めるのではなく、固定費・生活費・防衛資金・予備費などを差し引いた「本当の余裕資金」を把握したうえで、無理なく続けられる金額を設定することです。
オルカン・S&P500のどちらを選ぶか、あるいは両方を組み合わせるかは、自分がどこまで値動きを受け入れられるかによって変わってきます。
過去の数字に期待しすぎず、自分の家計と相談しながら、長期で続けられる積立投資を始めてみてはいかがでしょうか。