この記事はここがポイント
- 高齢者世帯の41.3%が所得の全部を公的年金に頼り、8割以上依存する世帯は58.4%にも上る実態
- 厚生年金と国民年金の平均月額差は約9万858円で、老後20年では約2180万円もの大きな格差
- 50代の平均所得814万円から70歳以上で405万円へ急減し、現役時代の働き方が老後に影響
現役時代の家計と老後の家計を比べたとき、収入が半分以下に落ち込む人も多いです。今の暮らしを守ることも大切ですが、老後の備えは早くから始めるに越したことはありません。という事実に、あらためて驚く方も多いのではないでしょうか。
厚生労働省が2026年7月に公表した最新の「2025年 国民生活基礎調査」によれば、50歳代世帯の平均所得は814万6000円である一方、高齢者世帯の平均所得は336万1000円にとどまったのです。
老後の収入源の中心は公的年金で、そこには「厚生年金」と「国民年金」の受給額差が重くのしかかります。
今回は、最新の国民生活基礎調査や「厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、両制度の受給額がどれくらい違うのかを実額で確認します。
「国民生活基礎調査の概況」という公的な最新データが届きました。高齢者世帯の所得の内訳や公的年金への依存度などを知れる統計調査ですが、ここからも老後の格差状況が見てとれます。
現役世代の私たちができることは、こうした資料を見て「過度に不安を感じる」のではなく、そのために知るべき「年金」や「公的制度」を積極的に調べることです。
知ることが行動にもつながります。私も公務員時代はさまざまな住民の方の相談に乗ってきましたが、その多くは「制度が複雑で『分からない』ことからくる不安」が原因でした。
ひとつひとつ紐解いていきましょう。
【世帯主年齢別】50歳代の814万円がピーク、高齢期は405万円まで急減
厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査」によると、世帯主の年齢階級別に見た1世帯当たり平均所得は、次のとおり大きな山を描きます(2024年の所得)。
世帯主の年齢階級別の所得
- 29歳以下:364万3000円
- 30〜39歳:646万9000円
- 40〜49歳:761万8000円
- 50〜59歳:814万6000円(ピーク)
- 60〜69歳:617万円
- 70歳以上:405万円
- 65歳以上(再掲):442万2000円
50歳代の814万6000円をピークに、60歳代で約200万円、70歳以上でさらに約210万円ずつ収入が落ち込みます。定年後の再雇用や年金への切り替わりが、そのまま所得のカーブに現れる構図だと言えます。
高齢者世帯の所得、6割超が「公的年金・恩給」
同資料では、高齢者世帯の平均所得336万1000円であることもわかっています。これらはどのような収入で構成されているのでしょうか。同調査の各種世帯の所得構成割合を、全世帯と比較して整理します。
各種世帯の1世帯当たり平均所得金額の年次推移
全世帯の所得構成割合
- 稼働所得(給与・事業所得など):74.1%
- 公的年金・恩給:19.4%
- 財産所得・その他:6.5%
高齢者世帯の所得構成割合
- 稼働所得:25.9%
- 公的年金・恩給:61.3%
- 財産所得・仕送り・その他:12.8%
全世帯の平均では稼働所得が74.1%と大半を占める一方、高齢者世帯では公的年金・恩給が61.3%となっています。
稼働所得25.9%は再雇用やパートなど継続就労による収入で、これも老後の家計を支える収入源ではありますが、やはり「年金が主、勤労収入が従」という構造と言えるでしょう。
厚生年金と国民年金、受給額の「差」はいくら?
老後家計の柱となる公的年金ですが、加入していた制度によって受給額は大きく変わります。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均月額は次のとおりです。
年金制度別の平均月額(全体)
- 厚生年金(国民年金部分を含む):15万289円
- 国民年金(老齢基礎年金):5万9431円
- 月額差:約9万858円
単純に比較すると、厚生年金と国民年金では月あたり約9万円の差があります。年間・老後20年で試算すると、次のような規模感になります。
- 年間の差額:約109万円
- 老後20年の合計差額:約2180万円
加入していた制度の違い(※)だけで、老後20年で2000万円を超える差が生じる計算です。「老後2000万円問題」に匹敵する格差が、現役時代の働き方の選択に組み込まれていることになります。
※ただし、これらはあくまでも平均額であるため、制度だけで受給額が決まるわけではありません。次章でくわしく見ていきましょう。
【年金額】個人別で見ると差はさらに広がる
制度による差だけでなく、男女別・個人別でさらに分解してみましょう。同じ調査による平均月額は次のとおりでした。
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均月額
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
国民年金(老齢基礎年金)の平均月額
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
厚生年金 階級別受給権者数
男性の場合、厚生年金と国民年金の差は月10万8372円、女性でも月5万3831円あります。
個人差で見ると厚生年金は階級別分布幅も広く、月10万円未満が19.0%、月20万円超が18.8%と上下に散らばっており、「厚生年金加入者」でひとくくりにできない実態も見えてきます。
国民年金は男女ともに5〜6万円台に集中しており、制度の性格上、差が生じにくい構造です。
高齢者世帯の4割超が「所得の全部が公的年金」
もう一つ押さえておきたいのが、公的年金への「依存度」です。「2025年 国民生活基礎調査」で公的年金・恩給を受給する高齢者世帯を対象に、総所得に占める公的年金・恩給の割合別の分布を見ると、次のようになりました。
公的年金・恩給が総所得に占める割合別 世帯構成
- 20%未満:4.2%
- 20〜40%未満:9.7%
- 40〜60%未満:13.6%
- 60〜80%未満:14.1%
- 80〜100%未満:17.1%
- 100%(すべてが公的年金・恩給):41.3%
所得の全部を公的年金・恩給に頼る世帯が41.3%に達し、「80〜100%」の17.1%を合わせると58.4%の高齢者世帯が所得の8割以上を年金に依存している計算です。
この層にとって、加入していた制度が厚生年金だったのか国民年金だったのかは、生活水準を決める大きな要因といえます。
厚生年金加入者が月約15万円で暮らすのと、国民年金のみの受給者が月約6万円で暮らすのとでは、家賃・食費・医療費のかけ方まで根本的に変わってくるからです。
【筆者からのアドバイス】制度差を意識した3つの備え方
受給額の制度差は、現役時代からの備え方でカバーできる部分もあります。ここでは、老後の年金依存度を踏まえた3つの視点を整理します。
「自分の加入区分」を年単位で確認する
会社員から独立してフリーランスになった、専業主婦(主夫)期間がある、といった加入区分の変遷は、そのまま老後の受給額に反映されます。
ねんきん定期便やねんきんネットで加入履歴を確認し、空白期間があれば任意加入や追納で埋められないかを検討しておきましょう。
国民年金加入者は「上乗せ」の制度を組み合わせる
自営業やフリーランスなど国民年金のみの加入者は、iDeCo・国民年金基金・付加年金など上乗せの制度を活用する余地があります。
iDeCoは掛金全額が所得控除の対象となり、老後資金の準備と現役時代の税負担軽減を同時に進められる仕組みです。
「就労収入をどこまで伸ばせるか」も選択肢に
高齢者世帯の稼働所得は平均で25.9%を占めており、再雇用やパート、副業などの継続就労は年金の穴を埋める現実的な選択肢です。
年金依存度を100%にせず、就労収入の柱をどこまで維持できるかは、老後の家計に厚みを持たせる大きな要素になります。
まとめにかえて
厚生年金と国民年金の受給額差は、全体平均で月約9万円、老後20年に換算すると約2180万円にのぼります。
高齢者世帯の平均所得が336万1000円で、その6割超を公的年金が支えている現状を踏まえると、この差はそのまま生活水準の差につながる規模です。
とくに高齢者世帯の41.3%が「所得の全部が年金」という状況にあることを考えれば、現役時代の加入区分の選択は、老後の暮らしを大きく左右する意思決定だといえます。
ねんきん定期便で見込額を把握したうえで、iDeCoや継続就労、貯蓄の使い分けをどう組み立てるかを、早めに描いておくことが安心につながります。
参考資料
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在はLIMO編集部で年金・貯蓄・退職金等の金融情報を発信。
