【深掘り】先に決まった「みずほFG債」の水準と徹底比較!
直近の個人向け劣後債市場を振り返ると、ライバルであるみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)が7月2日に条件決定した劣後債が大きな話題となりました。
みずほFGの決定利率と、今回の三菱UFJFGの仮条件を並べて比較してみましょう。
10NC5型(当初5年)
- みずほFG(7月2日決定利率/発行額1,070億円):2.607%
- 三菱UFJFG(今回の条件/発行額1,260億円):2.548%
5年国債金利の推移を見ると、みずほFGの条件決定時(7月初め)および三菱UFJFGの仮条件提示時(7月上旬)ともに、おおむね1.9%台前半~半ばで推移していました。
なお、足元では1.9%台半ば近辺で推移しています。
結果として、三菱UFJFG債は、先行のみずほFG債を0.059%下回りました。
そもそも「劣後債」とは?普通社債との違い
最後に今回登場した「劣後債(劣後特約付社債)」という仕組みについて簡単におさらいしておきましょう。
劣後債とは、一言で言えば「普通の社債よりも、リスクを引き受ける分、高い利回りが期待できる債券」のことです。
投資家にとっては普通の社債よりもリスクが高い商品となるため、その見返りとして高い金利(利率)が設定されるのが特徴です。
投資する前に必ず押さえる!劣後債の3つのリスクと注意点
高い利回りは魅力的ですが、裏側にある「リスク」を正しく理解しておくことが債券投資では最も大切です。
劣後債を検討する際は、以下の3つの注意点を必ず頭に入れておきましょう。
万が一のときの「弁済順位が低い」
発行体(三菱UFJFG)が破産などの法的倒産手続きを行った場合、元本や利息が投資家に返済される順位(弁済順位)が、普通の社債や一般の借入金よりも後回し(劣後)になります。
つまり、普通の社債を保有している人たちにお金が返ってきた後、それでも資産が残っていれば返してもらえる、という仕組みです。
メガバンクならではの「実質破綻時免除特約(ベイルイン)」
金融機関が発行する劣後債には、非常に重要な特約がついています。
同債では、仮に発行体である三菱UFJFGの自己資本比率が著しく低下し、金融庁などから「このままでは実質破綻する」と認定された場合、この劣後債の元本や利息を支払う義務が永久に免除(カット)されるリスクがあります。
国が税金(公的資金)を投入して銀行を救う前に、まずは劣後債の投資家に身代わり(損失)になってもらうというルールです。
途中で満期が変わる?「期限前償還条項」の仕組み
今回準備されている券種の一つ(第43回債)には、5年後に発行体の都合で前倒し償還できる特約(10NC5)がついています。
国際的な銀行の規制(バーゼルⅢ)上、5年が経った最初のタイミングで前倒し償還されるのが市場の“既定路線(慣例)”となっており、プロの間では「実質5年債」として扱われます。
投資家としては「5年で返ってくるのが基本スケジュール」と捉えつつも、世の中の金利状況によってはその予定が後ろにズレ込む可能性(コールスキップ)があるという、変則的な満期の仕組みを理解しておく必要があります。
【プロの視点】なぜ銀行は5年で返したくなるのか?
世界のメガバンクが守るべき安全基準のルール上、こうした劣後債は「満期までの残存期間が5年未満」になった時点から、毎年20%ずつ段階的に自己資本への算入額が目減りしていきます。
銀行側としては、自己資本としての効率が悪くなった古い劣後債を5年で一度返し、新しいものに借り換えた方が都合が良いため、通常は5年で前倒し償還(コール)するのが市場の“お約束”となっています。
まとめ
三菱UFJの個人向け劣後債「第43回債」の利率が、仮条件中央の2.548%に決定しました。国内金利の上昇により、前回債(1.796%)から大幅にアップした魅力的な水準ですが、先行したみずほFG債(2.607%)はやや下回っています。
募集は2026年7月21日〜30日、最低投資金額は100万円で、発行額は 1,260億円。5年後の早期償還を基本とした「実質5年債」の設計です。
高利回りな一方、万が一の際の「弁済順位の低さ」や、実質破綻時に元利金がカットされる「ベイルイン特約」など、劣後債特有のリスクを正しく理解したうえでの判断が求められます。
投資を検討する場合は、必ず事前に証券会社が提供する「目論見書」に目を通してください。
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
PROFILE
立教大学卒業後、海外専門の旅行会社に就職し、その後旅行業界専門誌の記者に転身。企業決算の記事などを手掛けるうちに金融マーケットに興味を持つようになり、株式や債券の発行市場をカバーする金融専門誌の記者に転職。債券市場の動向や市況について、10年以上にわたって数多くの記事を機関投資家に向けて日経QUICKやブルームバーグ等へ執筆した。その後、株式会社フィスコでアナリストが執筆する企業調査レポートの編集を手掛けるとともに、決算などIR情報の発信業務に携わる。
現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~』のLIMO編集部に所属し、LIMOでも記事を執筆している。
