年金は増額でも「実質マイナス」?マクロ経済スライドの仕組みを解説
2026年度の年金額改定により、国民年金は1300円、厚生年金は4495円の増額となりました。
しかし、金額面ではプラス改定であるものの、物価の変動を考慮すると、年金の価値が実質的に向上したとはいえないのが現状です。
改定率に注目すると、国民年金は1.9%、厚生年金は2.0%の引き上げです。
それに対して、同時期の物価上昇率は3.2%でした。
年金額の伸びが物価の上昇ペースに及んでいないため、名目上の受給額は増えても、実質的な購買力は「目減り」していると解釈できます。
この状況の背景には、「マクロ経済スライド」という年金額を調整する仕組みが存在します。
マクロ経済スライドは、少子高齢化や平均寿命の伸長といった社会の変化に対応し、年金制度を将来にわたって持続可能なものにするため、給付額の伸びを抑制する役割を担っています。
賃金や物価の変動をベースにしながらも、人口構造の変化を織り込んだ調整が入ることで、結果的に改定率が物価上昇率を下回るケースが生じます。
したがって、2026年度の改定は増額ではあるものの、「実質的な給付水準は下がっている」と考えることができます。
では、このように年金の実質価値が低下傾向にある中で、厚生年金受給者のうち、月額30万円以上を受け取っているのは、どのくらいの割合なのでしょうか。
年金支給日に60万円(月額30万円)以上を受け取る人の割合は?
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、老齢基礎年金を含んだ厚生年金の平均受給月額(男女合計)は15万289円です。
厚生年金の受給額別、構成割合の内訳
それでは、実際の受給額の分布はどのようになっているのか見ていきましょう。
厚生年金の受給額
- 10万円未満:19.0%
- 10万円以上:81.0%
- 15万円以上:49.8%
- 20万円以上:18.8%
- 20万円未満:81.2%
- 30万円以上:0.12%
特に注目したいのは「月額30万円以上」を受給している人の割合で、わずか0.12%という結果でした。
この数字は約800人に1人という計算になり、該当者が非常に少ないことがわかります。
平均受給額が15万円台である点を考慮しても、年金支給日に「60万円(2カ月分で月額30万円)」を受け取るのは、極めてまれなケースだといえそうです。
関連タグ
PROFILE
一種外務員資格(証券外務員一種)、保険募集人資格などを保有。福岡女学院大学人文学部英語学科卒業後、日本郵便株式会社にてリテール営業に従事。投資信託や生命保険の販売では商品分析を得意とし、豊富な商品知識を持つ。現在はこれまでの金融商品の知識を生かし、Instagramを中心に、SNSにて資産運用のはじめ方や資産形成のコツについて積極的に情報発信をしている。はたらく世代のお金の悩みに徹底的に寄り添う姿勢で顧客からの信頼も厚く、くらしとお金の経済メディア「LIMO」での執筆も行い、Yahoo!ニュース経済カテゴリーでアクセスランキング1位などの実績もある。(2026年7月11日更新)
