この記事はここがポイント
- 遺族厚生年金は2028年度から原則5年間の有期給付へ移行、有期給付加算で約1.3倍に増額見込み。
- 遺族基礎年金は2026年度に約84万7300円へ増額、遺族厚生年金も2.0%引き上げ。
- 制度変更は、お子さんのいない40歳未満の妻や60歳未満の夫など新規受給権者に影響。
7月も中旬を迎え、日差しが日に日に強くなってきました。
元生命保険会社職員である筆者は、現役時代、公的な遺族年金をベースに生活費との兼ね合いから必要保障額を試算し、最適な死亡保障をご案内していました。それほど遺族年金は、万が一の生活を支える「備えの柱」となる重要な制度です。
実は、この公的年金制度も社会の変化に合わせて見直されており、2026年度は遺族年金の金額が引き上げられています。
この記事では、最新の年金額に加え、2028年度から始まる遺族厚生年金の大きな制度変更について、ご自身の世帯にどう影響するのかを分かりやすく解説します。
2026年度の遺族基礎年金はどう変わる?年額約84万7000円への増額内容を解説
遺族基礎年金額(2026年度4月分から)
2026年度の改定により、18歳の年度末までのお子さんがいる配偶者などを対象とする「遺族基礎年金」の額が見直されました。
- 2026年度:84万7300円+子の加算額
- 年間の増額分:約1万5600円
ただし、昭和31年4月1日以前に生まれた方の年金額は84万4900円です。
また、会社員や公務員であった方が対象の「遺族厚生年金(報酬比例部分)」についても、改定率にもとづき2.0%引き上げられます。
モデルケースで確認:配偶者と子ども2人世帯の受給額はいくら?
遺族基礎年金は、お子さんの人数によって加算額が上乗せされる仕組みになっています。
例えば「配偶者と子ども2人」の世帯をみてみると、基本年金額に第1子・第2子の加算額(それぞれ年額24万3800円)がプラスされます。
この結果、年間の支給額は合計で約133万4900円となり、家計における教育費や生活費の大きな支えになるでしょう。
遺族年金生活者支援給付金とは?2026年度は年額約6万7000円が上乗せされる可能性
遺族年金生活者支援給付金とは、所得などの一定の条件を満たす遺族基礎年金の受給者を対象に、生活をサポートするための制度です。
- 2026年度の月額:5620円(前年度比+170円)
年額では約6万7440円です。大幅な増額ではありませんが、日々の食費や光熱費などの足しにすることができます。
お子さん2人が遺族基礎年金を受給する場合には、月額5620円を人数で割った金額がそれぞれに支給されることになります。
データで見る遺族年金生活者支援給付金:受給者が多い世代は?(令和7年3月時点)
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、遺族年金生活者支援給付金の受給者総数は7万7707件となっています。
では、実際にどの年齢層が多く受給しているのでしょうか。
年齢階級別の内訳は以下の通りです。
遺族年金生活者支援給付金(令和7年3月)
- 30歳未満:6216件
- 30~39歳:7881件
- 40~49歳:3万4072件(最多)
- 50~59歳:2万7828件
- 60歳以上:1710件
データを見ると、40歳代が最も多く、その次に50歳代が続いています。
これらの世代は、子どもの教育費や住宅ローンといった支出が重なりやすい時期であり、家計のやりくりが特に重要になるといえるでしょう。
2028年度から遺族厚生年金が変わる!新制度で影響を受ける人・受けない人の違い
2028年4月1日より、社会構造の変化や共働き世帯の増加など、ライフスタイルの多様化に対応するため、遺族厚生年金の制度が段階的に見直されることになっています。
新制度のポイント:原則「5年間の有期給付」への移行とは
お子さんがいない若年層や中年層の配偶者を対象として、これまでの終身給付から、原則として5年間の有期給付へ変更される予定です。
ただし、この5年間については「有期給付加算」が新設され、毎月の受給額は現行制度の約1.3倍に増える見込みです。
この変更は、生活を再建するための一定期間、支援を重点的に行うことを目的としています。
遺族厚生年金の見直し
今回の制度改正が適用されるのは、主としてこれから新たに受給権を得る方です。
すでに受給している方や一定の年齢以上の方に関しては、生活への急な変化を避けるため、数十年単位の経過措置が設けられるなど、十分な配慮がなされる計画です。
あなたは対象?新制度で影響を受ける可能性がある世帯の条件
2028年4月1日以降に新たに受給権が発生する、以下のような世帯が対象となる見込みです。
- 女性(妻):夫が亡くなった時点で「40歳未満」かつお子さんがいない妻(段階的に対象が拡大される予定)。
- 男性(夫):妻が亡くなった時点で「60歳未満」の夫。
※これまでは55歳未満では受給できないといった制限がありましたが、要件が緩和されて対象が広がります。
お子さんがいない世帯の場合、生涯にわたる給付ではなく、5年間の「重点的な有期給付」へと制度が再設計されます。
影響を受けないのはどんな場合?現行制度が維持されるケース
以下に該当する方は、2028年4月以降も現行の制度が適用されるか、改正の対象外となる予定です。
- すでに受給中の方:現時点で遺族厚生年金を受給している方。
- 子育て中の世帯:18歳の年度末までのお子さんがいる方。
- 高齢の世代:配偶者が亡くなった時点で「60歳以上」である方。
- 特定の年齢の方:2028年度の時点で「40歳以上」の女性。
【補足】5年経過後も受給できる特例措置について
原則として5年間の有期給付へ移行しますが、5年が経過した後も、障害年金を受給している、あるいは単身で年収が約122万円以下(目安)であるなど、特定の条件を満たす場合には、継続して受給できる仕組みも検討されています。
元生保職員が伝える!万が一に備える3つのワンポイントアドバイス
最後に、これまで多くのお客様のライフプランに寄り添ってきた筆者から、ご自身の世帯を守るためのアドバイスを3つお伝えします。
- まずは「公的年金」という土台を正確に把握する
遺族年金は万が一の生活を支える強力な柱ですが、それだけで生活費や教育費のすべてを賄うのは難しいケースも少なくありません。まずは、ご自身の世帯が「いくら」「いつまで」遺族年金を受け取れるのか、ねんきん定期便などを活用しておおよその目安を知ることから始めましょう。 - 2028年の新制度を踏まえ、民間の生命保険を見直す
今回の改正で「5年の有期給付」の対象となる可能性がある方(特にお子さんのいない若年層・中年層の方)は注意が必要です。5年経過後の収入減少(保障の谷間)に備え、不足する生活費をカバーできるよう、現在加入している生命保険の死亡保障額が適切かどうかを一度確認しておくことをお勧めします。 - ライフステージの変化に合わせて定期的なメンテナンスを
お子さんの成長や独立、働き方の変化など、ご家族の状況は日々変わります。公的な制度も今回のように見直されていくため、保険や貯蓄を含めたマネープランは「一度作って終わり」ではありません。ご結婚やマイホーム購入など、ライフイベントの節目ごとに定期的に点検することが、ご家族の安心への一番の近道です。
制度を正しく知り、足りない部分をあらかじめ準備しておくことで、将来への不安は少しずつ和らげていくことができます。この記事が、ご家族の安心を考えるきっかけになれば幸いです。
2028年度の遺族厚生年金の見直しは、特に若い世代や共働き世帯のライフプランに直結する非常に重要な転換点となります。
万が一の際に「保障が足りない」と慌てることがないよう、本記事を機にご自身のねんきん定期便を確認し、早めに保険や貯蓄のバランスを見直してみましょう。
参考資料
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格及び相続診断士。ジブラルタ生命出身。現在はIFAとして、若年層から高齢層までの幅広い世代へ向けたファイナンシャルプラニングから投資信託・債券・保険を活用した個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
