この記事はここがポイント
- 65歳以上の無職夫婦世帯は、月収約25.4万円に対し支出約29.7万円で、毎月約4.2万円の赤字。
- 平均貯蓄額2494万円ながら、65歳以上世帯の55.8%が生活に苦しさを感じている現状。
- 公的年金のみで生活する高齢者世帯は43.4%に留まり、年金以外の所得で生活費を補填する実態。
7月に入り、お子さんやお孫さんが参加している「家族のLINEグループ」に、夏休みの旅行計画や帰省の相談などのメッセージが飛び交う季節になりました。
楽しそうな通知を眺めながらも、心のどこかで「孫たちが来たらまた数万円飛んでいく」「外食費やレジャー代を年金からどう捻出しようか」と、スマホを握りしめながら密かな金銭的プレッシャーを感じているシニアの方もいるのではないでしょうか。
政府の統計データを分析していくと、65歳以上の無職夫婦の多くが「客観的には十分な貯蓄を持っている」にもかかわらず、日々の生活実感としては「苦しい・ゆとりがない」と回答しているという、奇妙なねじれ現象が起きています。
周りの「ふつう」が見えづらい時代だからこそ、漠然とした不安を消すためにはマクロなデータを知ることが大事です。
ここでは、65歳以上・無職夫婦の1カ月のリアルな生活費や家計収支、貯蓄額の分布、そして厚生年金・国民年金の受給額の個人差をチェックし、シニア家計の現実を紐解いていきます。
本記事は、編集部が厚生労働省や総務省など、官公庁が公表する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。
65歳以上・無職夫婦世帯の家計収支をデータで見る
老後のお金について具体的にイメージするため、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支を見てみましょう。
夫婦のみ・無職世帯の家計収支の内訳
無職夫婦世帯における1カ月あたりの収入額
- 収入合計:25万4395円
- うち社会保障給付(主に年金):22万8614円
無職夫婦世帯における1カ月あたりの支出額
- 消費支出:26万3979円
- 非消費支出:3万2850円
支出合計29万6829円
この世帯の場合、ひと月の収入は25万4395円、その約9割の22万8614円を公的年金などの社会保障給付が占めます。
一方で支出の合計は29万6829円。そのうち社会保険料や税などの「非消費支出」が3万2850円、いわゆる「生活費」にあたる消費支出が26万3979円でした。
この夫婦世帯の場合、毎月約4万2000円の赤字となり、貯蓄の取り崩しなどでカバーすることになるでしょう。
65歳以上・無職夫婦世帯の平均貯蓄額は?
総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果の概要-(二人以上の世帯)」より、世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)の平均貯蓄額を確認していきましょう。
無職世帯(二人以上)の貯蓄額とその内訳の推移
世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)の平均貯蓄額は、2494万円でした(2025年時点)。
- 2019年:2218万円
- 2020年:2292万円
- 2021年:2342万円
- 2022年:2359万円
- 2023年:2504万円
- 2024年:2560万円
- 2025年:2494万円
平均貯蓄額は増加傾向にあります。
貯蓄の内訳の推移を見ていくと、とくに有価証券が年々増えていることがわかります。
有職者も含む65歳以上世帯の貯蓄額データ
次に「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果の概要-(二人以上の世帯)」から、働くシニア世帯も含めた、世帯主が65歳以上世帯全体の貯蓄額を見てみましょう。
65歳以上(二人以上世帯)の貯蓄額分布(2025年)
貯蓄額の平均値と中央値に見る実態
- 平均値:2564万円
- 貯蓄保有世帯の中央値(※):1777万円
働くシニア世帯を含めた65歳以上の二人以上世帯における平均貯蓄額は2564万円です。
ただし、貯蓄現在高が0円の世帯を除いた中央値は1777万円。平均値と約787万円の乖離があります。
平均値が、一部の貯蓄が多い世帯により引き上げられていると考えられます。
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元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。
PROFILE
元・厚生労働省担当記者(社会保障専門紙)。中央大学法学部卒業後、東証プライム上場IT企業での法人営業を経て、厚生労働省記者クラブに所属する行政・自治体向けの社会保障専門紙記者として活動。現在は「公的社会保障(年金・医療・介護)」と「私的資産形成(NISA・iDeCo)」を横断的に分析するメディア編集者。
記者時代は厚労省本省や自治体を直接取材し、医療DXや診療報酬改定、年金財政検証などの政策決定プロセスに最前線で従事。「制度の複雑さが引き起こす、生活者の申請漏れや経済的損失」を実務レベルで痛感し、役所の難解な論理を生活者視点に翻訳する活動を志す。
IT企業時代に培ったデータ分析手法を掛け合わせ、平均値ではなく中央値を用いるなど、官公庁の統計データを客観的かつ論理的に読み解く解説記事が強み。特定の金融商品の推奨は一切行わず、公的年金の不足分を補う長期積立投資や定額減税などの要件を実務的に整理した記事は、Yahoo!ニュース「経済ランキング」で1位を多数獲得している。
発信理念は「知っていれば救われたはずの人が損をする現状をゼロにする」。読者が国に頼りすぎず、制度を賢く利用して家族と暮らしを守るための、事実に基づいた安全で実用的な家計防衛術を届け続ける。LIMOでも記事を執筆している。
