債券は「お金持ちしか買えない」は本当? 国債1万円、社債10万円から始められる投資の実像
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債券は「お金持ちしか買えない」は本当? 国債1万円、社債10万円から始められる投資の実像

国債1万円は株価172円のNTT株1単元(17,220円)よりも少額

執筆者高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者
17:45
債券は「お金持ちしか買えない」は本当? 国債1万円、社債10万円から始められる投資の実像
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この記事はここがポイント

  • 債券は多額の資金不要。国債1万円、社債10万円から投資可能な商品
  • 個人向け国債や銘柄によっては地方債も1万円単位で購入できる
  • 少額投資でも価格変動、信用、劣後、流動性リスク検討が必須

長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが一時3%を突破しました。

3%の大台に乗せたのは1996年9月以来、実に30年ぶりのことです。

日米の利上げ観測に加え、財政悪化への懸念も重なり、国債売りが広がったことが背景にあります。

金利上昇は、個人向け国債の利率にもそのまま反映されています。

財務省が発表した2026年9月募集分の発行条件を見ると、変動10年は年1.95%(前月比+0.08%)、固定5年は年2.24%(前月比+0.18%)、固定3年は年1.96%(前月比+0.25%)と、いずれも前月から上昇しました。

地方債や個人向け社債の利率も軒並み上がっており、9月に募集された地方債の共同発行債は年3.212%、社債でもソフトバンクグループ<9984>の7年債(第70回無担保社債)が年4.75%という水準が並んでいます。

これだけ利率が上がっているにもかかわらず、債券投資をそもそも検討の対象にしていない個人投資家は少なくありません。

長年債券を担当してきた筆者は、この状況を不思議に思い、身近な個人投資家にその理由を聞いてみたことがあります。

すると返ってきたのは、こんな答えでした。

「だって債券って、まとまった資金がないと買えないんでしょう?」

果たしてこれは本当でしょうか。

実際に調べてみると、債券の購入単位は商品によって1万円から100万円超まで大きく幅があり、「まとまった資金が必要」というイメージは一部の商品にしか当てはまらないことが分かります。

個人向け国債の最低購入額(1万円)は、日本株の売買単位である「単元株」100株換算で比べても、決して高いハードルではありません。

たとえばNTT<9432>の株価は9日終値で172.2円ですが、最低投資単位の100株を購入する場合17,220円が必要です。

国債の1万円は、この1単元にも届かない金額ということになります。

そもそも債券の「購入単位」は何で決まるのか

 購入単位・利率・年限といった発行条件は、発行体が「どんな投資家層に、どれくらいの規模で買ってほしいか」によって銘柄ごとに設定されます。

年限が長く(7年~10年)、劣後債のように仕組みがやや複雑な商品は、相応の知識を持つ投資家を想定して購入単位を高めに設定する傾向があります。

一方、年限が短く(3~5年)、個人投資家層への浸透を意図した社債では、購入単位を10万円程度に抑える銘柄もあります。

国債は1万円から

財務省が発行する個人向け国債(変動10年・固定5年・固定3年の3タイプ)は、最低1万円から、1万円単位で購入できます。

証券会社や銀行、郵便局などに口座があればどこからでも申し込める、もっとも間口の広い商品です。

地方債は個別債が1万円単位、共同発行債は10万円単位

地方債は銘柄によって購入単位がまちまちです。

  • 全国型市場公募地方債(個別債、都道府県・政令指定都市が単独発行):購入者に居住地等の制限はなく、1万円単位が中心

例:福井県令和8年度第4回公募公債(10年、利率3.172%、1万円以上1万円単位、2026年9月14日募集終了・完売)

  • 共同発行市場公募地方債(共同債、複数自治体が共同発行):10万円単位が基本

例:第282回共同発行市場公募地方債(10年、利率3.212%、10万円以上10万円単位、2026年9月10日募集終了・完売)

  • 住民参加型市場公募地方債(ミニ公募債):1万円単位のものもありますが、発行自治体内に居住・在勤する個人等に購入者を限定するケースが多く、近年は発行自体が減少傾向です

「1万円単位で買える地方債=住民限定のミニ公募債だけ」ではなく、居住地を問わず全国の証券会社で買える全国型の個別債(都道府県債)にも1万円単位のものがある、という点は意外と知られていません。

社債は10万円単位から100万円単位まで幅がある

個人向けの社債も地方債同様、銘柄によって購入単位が変わります。

ただ、社債は最低でも「10万円単位から」が中心となり、「1万円」からの銘柄は見かけません。

以下は、すでに販売が終了している債券もありますが、7~9月にかけて登場した銘柄の抜粋です。 

  • SBIホールディングス<8473>:第48回無担保社債、期間5年、利率2.689%、最低申込単位10万円
  • 近鉄グループホールディングス<9041>:第135回無担保社債、期間5年、利率2.521%、最低申込単位10万円
  • NECキャピタルソリューション<8793>:第31回無担保社債、期間4年、利率2.36%(固定・税引前)、最低申込単位10万円
  • 三菱HCキャピタル<8593>:第31回無担保社債、期間5年、利率2.642%、最低申込単位100万円
  • ソフトバンクグループ<9984>:第70回無担保社債、期間7年、利率4.75%、最低申込単位100万円(2026年9月17日発行)
  • 三井住友トラストグループ<8309>:第25回劣後債、期間10年(5年後に期限前償還の可能性あり)、当初利率2.902%、最低申込単位100万円

年限が長く高利率で発行額が大きい銘柄ほど100万円単位に偏る一方、SBIホールディングスや近鉄グループHDのように年限5年程度の社債では10万円単位で買える銘柄も複数あります。

7~9月に登場した主な個人向け社債

7~9月に登場した主な個人向け社債
出所:各データより筆者作成

機関投資家向けの基本は1億円単位

証券会社が発行体から引き受ける段階や、機関投資家がまとまった枚数を売買する市場では、取引単位は1億円からが基本です。

たとえば地方債では個人投資家が証券会社を通じて買う「小口」の債券は、機関投資家向けから切り出された枠を、証券会社があらかじめ設定した最低単位(1万円)で販売している、というのが実際の構造です。

少額から買えるからといって見落とせないリスク

購入単位の大小と、リスクの大小は別の話です。少額から買える商品でも、以下の点には注意が必要です。

  • 価格変動リスク:満期まで保有すれば額面で償還されますが、途中で売却する場合は市場価格次第で元本割れする可能性があります
  • 信用リスク:発行体の財務状況が悪化すれば、利払いや償還が予定通り行われないリスクがあります。格付けはこのリスクを見る目安の一つです
  • 弁済順位・劣後リスク:三井住友トラストグループの劣後債のように「劣後特約及び実質破綻時債務免除特約(ベイルイン条項)付」の商品は、発行体が実質破綻に陥った場合に元利金の支払いが減免・免除される特約が付いており、普通社債より弁済順位が低い点に注意が必要です
  • 流動性リスク:個人向け社債はセカンダリー市場(発行後の売買市場)の厚みが薄く、途中売却したいタイミングで希望通りの価格・数量で売れるとは限りません

記者コメント 

社債には、特定の投資家に向けて発行する私募債と、広く投資家を募る公募債があります。公募債であっても、機関投資家向けの発行になると「100億円〜」が最低ロットの基本です。しかも社債の発行には、利息の支払いだけでなく、格付けの取得費用や引受手数料など、相応のコストがかかります。

電力会社をはじめ、社債を日常的な資金調達手段として使っている企業は少なくありません。ただ、ニュースとして目にする機会が多いのは、M&Aなど大型の資金調達に伴う数千億円規模の起債です。こうした報道の印象が強いために、「債券はお金持ちや機関投資家のためのもの」というイメージが根付いているのかもしれません。

しかし実際には、国債は1万円から、社債も10万円から個人が投資できる商品です。むしろ株式よりも少額から始められるケースすらあります。冒頭で紹介した「まとまった資金がないと買えないんでしょう?」という声とは裏腹に、少額から買える商品を選べば、まとまった資金がなくても債券投資は始められます。

言ってしまえば、「お金持ちのための金融商品」というよりも、社債の発行には相応のコストがかかり、機関投資家向けなら「100億円〜」が基本になることを踏まえると、「社債を発行できる企業がお金持ち」というのが実際のところなのかもしれません。

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
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高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者

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