この記事はここがポイント
- イオン7年債(年3.087%)など大手社債の条件決定、ソフトバンクGは1兆円7年債を準備
- 劣後債など社債は種類で弁済順位や償還条件が異なり、商品性の理解がカギに
- 社債は利率だけでなく、信用力・価格変動・流動性リスク、税金・NISA対応を含めた検討が必要
長期金利の指標である新発10年国債の利回りは、8月半ばに一時2.945%まで上昇する場面もあるなど、金利の上昇(価格の下落)トレンドが長期化するリスクに市場が身構える地合いが続いています。
こうしたなか、個人投資家向けの社債市場でも8月は大型の起債がみられました。
イオン<8267>の7年債はすでに条件決定・完売済みで、三菱HCキャピタル<8593>と三井住友トラストグループ<8309>の社債は28日に条件が決まったばかり。
さらにソフトバンクグループ<9984>が総額1兆円という国内過去最大級の7年債を準備しており、9月にかけて社債市場から目が離せない状況です。
ここ記事では、この4本の社債についてまとめて見ていきます。
イオン<8267>「第31回無担保社債」(7年債)※完売
- 発行体:イオン
- 期間:7年
- 利率:年3.087%(税引前)/税引後 年2.459%
- 発行額:700億円
- 最低投資単位:100万円以上、100万円単位
- 払込期日(発行日):2026年8月28日
- 償還期限:2033年8月26日
- 格付け:R&I「A-」
注目すべきは、2025年9月発行の前回債(第28回、利率年2.025%、発行額600億円)との比較です。今回の第31回債は前回債から1.062%の利率アップとなっており、この1年弱の金利上昇局面がそのまま反映された形です。
年限は7年とやや長めなこともあり、弁済順位が低いなどの劣後特約がついていない、シニア債としては貴重な「利率3%超え」という銘柄でした。
三菱HCキャピタル<8593>「第31回無担保社債」(5年債)
- 発行体:三菱HCキャピタル株式会社
- 期間:5年
- 利率:年2.642%(税引前、確定)
- 発行額:220億円
- 最低投資単位:100万円以上、100万円単位
- 条件決定日:2026年8月28日
- 申込期間:2026年8月31日〜9月9日
- 払込期日:2026年9月10日
- 償還期限:2031年9月10日
- 格付け:R&I「AA」/JCR「AA」
- 主な引受会社:三菱UFJモルガン・スタンレー証券(150億円)ほか計7社
事前の仮条件は年2.200%〜3.000%のレンジで示されており、確定利率の2.642%はレンジのやや中央よりに着地した形です。
三井住友トラストグループ<8309>「第25回期限前償還条項付無担保社債」(10NC5型劣後債)
- 発行体:三井住友トラストグループ株式会社
- 正式名称:期限前償還条項付無担保社債(劣後特約及び実質破綻時債務免除特約付)
- 期間:10年(満期は2036年9月11日)※5年後の2031年9月11日に期限前償還の可能性あり(いわゆる「10NC5」)
- 利率:当初5年間 年2.902%(税引前、確定)/期限前償還されなかった場合の6年目以降は5年国債金利+0.700%
- 発行額:400億円
- 最低投資単位:100万円
- 条件決定日:2026年8月28日
- 申込期間:2026年8月31日〜9月10日
- 払込期日:2026年9月11日
- 格付け:R&I「A+」/JCR「AA-」
- 主な引受会社:大和証券、野村證券、SMBC日興証券、SBI証券、岡三証券、東海東京証券、楽天証券、マネックス証券
事前の仮条件(年2.400%〜3.200%)に対し、確定利率2.902%はレンジのやや上寄りとなりました。
ソフトバンクグループ<9984>「第70回無担保普通社債」(7年債・準備中)
- 発行体:ソフトバンクグループ株式会社
- 発表日:2026年8月24日
- 期間:7年
- 発行総額:1兆円(国内の個人向けリテール債として過去最大級)
- 最低投資単位:100万円
- 利率:仮条件 年4.30%〜4.90%(税引前)
- 正式利率の条件決定日:2026年9月4日(予定)
- 申込期間(オンラインサービス):2026年9月7日〜9月15日
- 取扱証券会社:SBI証券、楽天証券、三菱UFJ eスマート証券など複数社を予定
他の3本と比べて利率水準が大きく高いのが目を引く点です。
8月に動きがあった新発社債まとめ
そもそも「劣後債」「10NC5」「実質破綻時債務免除特約」とは?
- 社債:企業が投資家からお金を借りるために発行する借用証書のようなものです。株式と違い、満期まで保有すれば原則として額面金額(元本)が戻ってきます
- 劣後債:発行体が万が一破綻した場合に、一般の社債(普通社債)よりも弁済(お金が返ってくる順番)が後回しになる社債です。弁済順位が低い分、普通社債より利率が高めに設定されるのが一般的です
- 実質破綻時債務免除特約(ベイルイン条項):発行体の財務状況が著しく悪化した際に、あらかじめ決められた条件のもとで元利金の支払い義務が一部・全部免除される特約です。いわば「もしもの時は投資家も一定の負担を分かち合う」という契約になっており、劣後債特有の追加リスクといえます
- 期限前償還条項(コール条項)と「10NC5」:発行体の判断で、満期を待たずに額面金額で早期に償還できる権利のことです。「10NC5」は「満期10年・Non-Call(コール不可)期間5年」の略で、発行から5年間は早期償還されないものの、5年経過後は発行体の判断で償還されうることを意味します。呼ばれなければ元の予定通り10年間保有し続けることになる商品、と捉えておくとイメージしやすいでしょう。
- 格付け:R&I(格付投資情報センター)やJCR(日本格付研究所)といった第三者機関が、発行体の信用力を記号で評価したものです。「AA」は「A+」よりも信用力が高いとされる区分で、一般的に格付けが高いほど利率は低めに、格付けが低い(または劣後債のようにリスクが上乗せされる)ほど利率は高めになる傾向があります
安全性が高いとされる「債券」、それでも確認したい「リスク」と「注意点」
- 信用リスク:発行体の財務状況が悪化した場合、利払いや償還が予定通り行われない可能性があります。劣後債はベイルイン条項により、普通社債より一段大きな信用リスクを負う点に注意が必要です
- 価格変動リスク:満期まで保有すれば額面での償還が原則ですが、途中で売却する場合は市場価格での取引となり、金利動向次第で元本割れとなる可能性がある点に注意が必要です。金利が上昇する局面では既発債の市場価格は下落しやすくなります
- 流動性リスク:個人向け社債は株式のように市場でいつでも売買できるとは限らず、途中換金したいタイミングで買い手が見つからない、あるいは不利な価格でしか売却できない可能性があります
- 期限前償還(コール)リスク:三井住友トラストグループの劣後債のように期限前償還条項が付いた商品は、5年で償還されるか10年間保有し続けることになるかが発行体の判断次第という不確実性があります。早期償還された場合は再投資先を自分で探す必要があり、償還されなかった場合は当初想定より長い期間、価格変動リスクや流動性リスクにさらされ続けることになる点に注意が必要です
- 税金・NISAの扱い:社債の利子は原則として20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税)の税率で源泉徴収されます。NISA(少額投資非課税制度)の対象外である点も確認しておきましょう
記者コメント
イオン<8267>、三菱HCキャピタル<8593>、三井住友トラストグループ<8309>と、8月だけで大手企業の社債が相次いで条件決定しました。
特に三井住友トラストグループの劣後債は、普通社債より利率が高い分、弁済順位の低さやベイルイン条項、期限前償還の有無といった特有のリスクを伴う商品です。一方で、先行したメガバンク2銘柄(三菱UFJフィナンシャル・グループ/みずほフィナンシャルグループ)よりも利率が高く、リスクを取れると判断する投資家にとっては魅力的でしょう。
もっとも9月に控えるソフトバンクグループ<9984>の7年債も含め、利率の高さだけに目を向けるのではなく、それぞれの商品性やリスクの違いを理解したうえで検討することが大切です。
社債は債務不履行(デフォルト)とならない限り、償還期限まで保有すれば元本が返ってきますから、安全性が高い金融商品です。
ただし償還まで5年や7年と長い年月の間、持ち続けることが前提です。
この間に金利環境が激変し、さらに金利が上昇すれば、途中で売却すれば大きく元本割れする可能性もあります。
実際に購入を検討する際は、必ず最新の目論見書や契約締結前交付書面を確認し、償還の蓋然性と「自身がどこまでのリスクを許容するか」をしっかり見極めることが重要です。
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
