この記事はここがポイント
- 伊藤忠商事の第1四半期決算、営業利益は20.3%増の2,054億5,500万円
- 増益の主因はエネルギー・化学品事業47.2%増、金属事業31.7%増の資源2事業によるもの
- 上限3,000億円の自社株買いを決議、一部は提携損保の株式公開買付け
伊藤忠商事<8001>の株価は28日、前日比+11.5円(+0.55%)高の2,116.5円で取引を終えました。
2月に付けた年初来高値2,286円からは約7.4%低い水準にありますが、6月の年初来安値1,802円からは着実に値を戻しています。
背景には6日に発表した2027年3月期第1四半期決算での大幅増益に加え、3日に決議した上限3,000億円の自社株買いがあります。
最新決算からひも解く企業の強み
同社が6日に発表した1Q決算(2026年4-6月)は、収益が前年同期比+8.9%の3兆8,758億6,100万円、営業利益は+20.3%の2,054億5,500万円と大幅増益でした。
一方、税引前四半期利益は▲1.3%の3,699億9,900万円とわずかに減益、最終利益は+3.5%の2,937億6,300万円でした。
税引前利益が営業利益ほど伸びなかったのは、有価証券損益が前年同期の益から一転して▲924億円の減少要因になったためです。
この要因として「前年同期C.P. Pokphand売却の反動」「前年同期PROVENCE HUILES売却の反動」を挙げており、前年に計上していた株式売却益が今回はなかったことが響いています。
伊藤忠商事は繊維・機械・金属・エネルギー・化学品・食料・住生活・情報金融という8つの事業(カンパニー)を抱える総合商社ですが、1Q決算で営業利益の増加額が最も大きかったのはエネルギー・化学品事業(+135億8,300万円、+47.2%)、次いで金属事業(+103億2,500万円、+31.7%)でした。
この2事業だけで連結営業利益の約42%を占め、今回の増益額(347億2,000万円)に対する寄与でみても約69%に達します。営業利益の増加要因として名指しされているのは「エネルギー・化学品、金属、情報・金融、繊維」の4事業で、資源関連の2事業がその中心に位置づけられています。
8事業の営業利益を並べて見る
セグメント(カンパニー):営業利益(前年同期比)
- 繊維:65億1,700万円(前年33億9,000万円、+92.2%)
- 機械:208億1,100万円(前年187億9,800万円、+10.7%)
- 金属:429億2,300万円(前年325億9,800万円、+31.7%)
- エネルギー・化学品:423億6,700万円(前年287億8,400万円、+47.2%)
- 食料:579億5,700万円(前年564億3,200万円、+2.7%)
- 住生活:194億5,400万円(前年195億9,900万円、▲0.7%)
- 情報・金融:218億2,100万円(前年177億6,700万円、+22.8%)
- 第8:▲7億6,800万円(前年▲12億3,100万円、赤字幅縮小)
- その他及び修正消去:▲56億2,700万円(前年▲54億200万円)
- 連結合計:2,054億5,500万円(前年1,707億3,500万円、+20.3%)
繊維事業の+92.2%は8事業中で最も高い伸び率ですが、金額でみると+31億2,700万円にとどまり、金属・エネルギー化学品の増益額(合計239億800万円)には遠く及びません。「稼ぎ頭」を伸び率ではなく金額で見ると、資源2事業の存在感がより際立ちます。
上限3,000億円の自社株買いの中身
同社は3日、上限取得金額3,000億円、上限取得株式数1億9,000万株の自己株式取得を決議しました。取得期間は4日から2027年1月29日までで、このうち1,500億円分は、資本業務提携関係にある損害保険会社が保有する株式の公開買付け(TOB)を通じて実施する計画です。政策保有株式の解消と歩調を合わせた自社株買いという位置づけになります。
バリュエーション評価
8月28日終値2,116.5円をもとにすると、PER(会社予想)は15.57倍、PBR(実績)は2.19倍、配当利回り(会社予想)は2.08%です。EPS(会社予想)は135.90円、BPS(実績)は968.22円、ROE(実績)は14.59%となっています。
2月27日の年初来高値2,286円からは7.4%低い水準にあり、6月11日の年初来安値1,802円からは17.4%上昇しています。通期の当期純利益予想は9,500億円(前期比+5.5%)で据え置かれており、1Qの増益ペースがこのまま続けば上振れの余地もありそうです。
伊藤忠商事の年間チャート
記者コメント
資源市況に業績が左右されやすいというイメージのある総合商社ですが、今回の1Q決算では非資源分野の繊維事業も+92.2%と大きく伸びており、資源・非資源の両輪がかみ合った決算だったと言えそうです。
上限3,000億円の自社株買いが今後の需給にどう影響するかも注目されます。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
