戦略17分野の筆頭!フィジカルAI関連銘柄を元機関投資家が解説
出所:イズミダイズム
戦略17分野の筆頭!フィジカルAI関連銘柄を元機関投資家が解説
出所:イズミダイズム

政府が成長戦略として掲げる「戦略17分野」。その筆頭であり、官民投資10.5兆円、2040年に20兆円の市場獲得目標が掲げられているのが「フィジカルAI」です。

株式市場でも大きな注目を集めていますが、AIやロボットに関連する企業は非常に多く、どこから手をつければよいか迷う方も多いでしょう。完成品を作る有名な大企業を買えばよいのか。

あるいは、まだ知られていない隠れた優良企業に妙味があるのかもしれません。一体、フィジカルAIの関連銘柄はどのように整理して考えればよいのでしょうか。

この点について、元機関投資家の泉田良輔氏が、関連する日本株を「本体・部品・頭脳」の3層構造で総整理し、注目すべきポイントを解説します。

この記事のポイント

  • フィジカルAIとは、従来のロボットにAIの頭脳が組み込まれた新しい概念
  • 関連銘柄は「ロボット本体」「主要部品」「AIモデル(頭脳)」の3層構造で整理できる
  • 日本企業は「ロボット本体」と「主要部品」の領域で世界的な強みを持っている
  • 特に「主要部品」は、どの完成機メーカーが勝っても需要を取り込める隠れた注目領域
  • 投資にあたっては、政策変更のリスクやテーマ株特有の価格変動に注意が必要

政府が注力する「フィジカルAI」とは何か

政府が主導する「日本成長戦略会議」において、戦略17分野の官民投資ロードマップが示されました。これは2040年までに官民投資総額370兆円超を見込む壮大な計画です。その中でも先行して検討が開始され、筆頭に挙げられているのが「フィジカルAI(AIロボット)」の分野です。

泉田氏は、国が主導して資金を投じる分野は株式市場でも重要なテーマになると指摘します。

「よく国策に売りなしとかって言うけども、あれって基本的には財政政策だと思ってもらえばいいのよ」

財政政策とは、国が税金や国債を使って特定の産業や経済を刺激する取り組みのことです。国が明確なテーマを定めて投資を行うため、投資家にとっても関連銘柄を探しやすく、大きな投資の流れになりやすいと泉田氏は見ています。

では、そもそも「フィジカルAI」とは何なのでしょうか。フィジカルとは「物理的な」という意味であり、ここでは物理的な実体を持つロボットを指します。

「単なるロボットだったら今までも作っているわけですよ。そこにAIの頭脳が入りますよっていう文脈です」

これまで工場などで使われてきたロボットは、人間がプログラミングした通りに同じ動作を繰り返すものでした。しかしフィジカルAIは、ロボット自身がAI(人工知能)の頭脳を持ち、周囲の状況を認識して自律的に判断し、動くことができるようになります。これが従来のロボットとの決定的な違いです。

フィジカルAI関連銘柄を読み解く「3層構造」

フィジカルAIに関連する企業は多岐にわたりますが、泉田氏はこれを「ロボット本体(ハードウェア)」「主要部品」「AIモデル(頭脳)」の3層構造に分けて考えると理解しやすいと解説します。

日本企業だけでも関連する会社が数多くあるという実感の声が上がるなか、泉田氏はそれぞれの層において日本企業がどのような立ち位置にいるのかを整理していきます。

ロボット本体(完成機)——3層の入口 

ロボット本体・完成機(フィジカルAI 3層の入口)

ロボット本体・完成機(フィジカルAI 3層の入口)
出所:イズミダイズム作成

第1層は、実際に物理的なロボットを組み立てて完成させる「ロボット本体」の領域です。この領域は、大きく「産業用ロボット」と「ヒューマノイド(人型ロボット)」の2つに分けられます。

産業用ロボットは、工場などで特定の作業をこなすために作られたロボットです。この分野では日本企業が非常に強く、世界4強と呼ばれる企業のうち、ファナックと安川電機の2社が日本企業です。他にも、大型ロボットを手掛ける不二越や、自動車向けの溶接ロボットで実績のあるダイヘンなどが存在します。

一方、ヒューマノイドは人間のような形をしたロボットです。川崎重工、トヨタ自動車、かつて「ASIMO」を開発していたホンダ、そしてデンソーなどが、ヒューマノイドを開発できるポテンシャルを持つ企業として挙げられます。

一般的にフィジカルAIと聞くと、人間のように動くヒューマノイドを思い浮かべがちですが、泉田氏は投資の視点から次のように分析します。

「管理された空間で動くことが多いので、AIで制御する要素も少ないんですよ。なのでこっち(産業用ロボット)の方が入れやすいかなと思います」

工場などの管理された環境で働く産業用ロボットの方が、複雑な環境下で動くヒューマノイドよりもAIを導入するハードルが低いため、ビジネスとして先に立ち上がる可能性が高いと泉田氏は見ています。

AIモデル(頭脳)——海外勢が優位な層

AIモデル・頭脳(基盤モデル・制御AI・AI半導体)

AIモデル・頭脳(基盤モデル・制御AI・AI半導体)
出所:イズミダイズム作成

 順番は前後しますが、第3層にあたるのが、ロボットに思考力と判断力を与える「頭脳」の領域です。

この領域に関しては、NVIDIA、Google、Microsoftといった海外の巨大IT企業が圧倒的な優位性を持っています。最近では、宇宙開発企業のSpaceXがAI事業(xAI)を統合して参入する動きも見られます。日本企業でこの頭脳の領域に食い込んでいる代表格としては、富士通が挙げられます。

頭脳の領域は海外企業が中心となりますが、日本のロボットメーカーはこれらの海外企業と積極的に協業することで、自社のロボットに最先端のAIを組み込もうとしています。

主要部品——日本が世界で最も強い「隠れた注目領域」 

主要部品(日本が世界で最も強い層)

主要部品(日本が世界で最も強い層)
出所:イズミダイズム作成

そして、泉田氏が最も強調するのが第2層の「主要部品」です。

「逆に皆さんがあんまりまだ感じてないというか知らないところはどこかって考えると、主要部品なんだよね」

完成品のロボットメーカーも、すべての部品を自社で作っているわけではなく、専門の部品メーカーから調達しています。そして、この部品メーカーにこそ、世界で高いシェアを持つ日本の優良企業がひしめいているのです。泉田氏はロボットの部品を「人間の体」に例えて解説します。

1つ目は「関節」です。ロボットが腕や脚を曲げるためには関節が必要であり、ここで活躍するのが「減速機」という部品です。減速機とは、モーターの回転速度を落として、その分だけ力を強くする歯車のような部品です。

この分野では、ハーモニック・ドライブ・システムズや、自動ドアや駅のホームドアでも知られるナブテスコが世界的に高いシェアを誇っています。

2つ目は「筋肉」です。ロボットを動かすための動力源であり、モーターや直動案内機器、空圧機器などが該当します。小型精密モーター大手のニデック(旧日本電産、近年は不適切会計の問題などもありましたが関連銘柄の一つです)、直線運動を滑らかにするガイド部品で世界大手のTHK、空気圧制御機器で世界トップ級のSMCなどが代表的です。

3つ目は「目・神経」です。周囲の状況を認識し、情報を伝達する役割を担います。センサーや画像処理システムを手掛けるキーエンスやオムロン、電子回路に不可欠な極小部品であるMLCC(積層セラミックコンデンサー)で世界首位級の村田製作所、そしてロボットの「目」となるCMOSイメージセンサーで世界首位級のソニーグループなどが挙げられます。

フィジカルAIで注目すべき個別企業6社の深掘り

ここからは、フィジカルAIの3層構造を踏まえ、泉田氏が特に注目する6社について、その強みと将来性を深掘りしていきます。

ファナック(産業用ロボット世界4強)

ファナックは、産業用ロボットで世界4強の一角を占める日本を代表する企業です。同社の最大の強みは、工作機械の動きをコンピューターで精密にコントロールする「CNC(数値制御装置)」において世界トップ級のシェアを持っていることです。

これまでファナックは、自社で全てを完結させるクローズドなビジネスモデルを中心としていました。しかし近年、GoogleやNVIDIAといった世界のトップAI企業との協業を発表し、大きな転換期を迎えています。

精密な制御技術を持つファナックのハードウェアと、世界最高峰のAIが融合することで、次世代のフィジカルAIロボットが生み出されることが期待されています。

安川電機(サーボモーターとロボットの一体提供)

安川電機も、ファナックと並ぶ産業用ロボット世界4強の1社です。同社は、指示通りに正確な位置や速度で動くことができる「ACサーボモーター」で世界的な強みを持っています。

安川電機の強みは、自社で高性能なモーター(部品)を作りながら、完成品のロボットも製造している点です。同社もNVIDIAとの協業を発表しており、自社のサーボモーターとロボットを一体化させたシステムに、どのようにAIを組み込んでいくかが今後の成長の鍵になると泉田氏は見ています。

川崎重工(ヒューマノイド開発の先駆者)

川崎重工は、航空宇宙や船舶、鉄道など幅広い事業を手掛ける重工メーカーですが、実はロボット分野でも長い歴史を持っています。特に注目されるのが、国産人型ロボット「Kaleido(カレイド)」です。同社は10年以上にわたってヒューマノイドの開発を続けてきました。

さらに、2026年5月には米シリコンバレーのサンノゼに「Kawasaki Physical AI Center San Jose」を開設しました。ここでは、NVIDIA、Analog Devices、Microsoft、富士通の4社と協業し、フィジカルAIの開発を本格化させています。多様な事業を展開する中で、フィジカルAIという新たな成長領域を積極的に開拓している点が評価されています。

ハーモニック・ドライブ・システムズ(関節部品の覇者)

 

ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)の株価推移

ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)の株価推移
出所:TradingView(ハーモニック・ドライブ・システムズ 6324 週足・TOPIX比較、2026年6月24日時点)

 部品メーカーの中で泉田氏が特筆するのが、ハーモニック・ドライブ・システムズです。同社は「波動歯車装置」と呼ばれる独自の精密減速機を製造しており、産業用ロボットの関節向け精密減速機で世界シェアの約5割を握っています。

「シェア5割なんでロボットメーカーのどの陣営が勝ってもこの会社の製品が入ってるというそういうパターンですね」

産業用ロボットだけでなく、半導体製造装置や手術支援ロボットなど、精密な動きが求められる幅広い機械に同社の製品が使われています。さらに、泉田氏はヒューマノイドの普及が同社にとって大きな追い風になると指摘します。

「ヒューマノイドになった瞬間にいろんなところに関節があるじゃないそうするとやっぱりここの減速機がより多くの数が必要になる」

単純作業を行うロボットに比べて、人間のように動くヒューマノイドは圧倒的に多くの関節を持ちます。そのため、ヒューマノイド市場が立ち上がれば、同社の減速機の需要は飛躍的に増加することが期待されています。

キーエンス(センシング技術の巨人)

キーエンスは、センサーや画像処理システム(マシンビジョン)を手掛ける大手企業です。フィジカルAIが自律的に動くためには、周囲の状況を正確に感知する「目」や「触覚」の役割を果たすセンサーが不可欠です。

キーエンスは、製造業など産業用途の顧客基盤が非常に強固です。顧客が工場にAIロボットを導入しようとする際、キーエンスのセンサー技術やソリューション提案力が大きな強みを発揮すると泉田氏は見ています。

村田製作所(電子部品の心臓部)

村田製作所は、電気を一時的に蓄えたりノイズを取り除いたりする「MLCC(積層セラミックコンデンサー)」で世界首位級のシェアを持ちます。

どんなに高度なAIロボットであっても、内部は電子回路で構成されており、そこには必ずコンデンサーが必要です。フィジカルAIが高度化し、処理する情報量が増えるほど、搭載される電子部品の点数も増加します。

そのため、ロボット市場の拡大は、そのまま村田製作所のMLCCの需要拡大に直結する構造となっています。

まとめ:日本の「部品」が持つ構造的な強み

フィジカルAIという巨大なテーマにおいて、日本企業はどのような立ち位置にあるのでしょうか。泉田氏は、完成品メーカーの強さを認めつつも、部品メーカーの構造的な強みを強調します。

「もちろん完成品のロボットも強いんだけど、これはグローバルで見ても強いと思います。その最終製品が強いものが日本の部品がいっぱい入ってると、そんな構造ですね」

AIの頭脳部分で海外企業が覇権を握ったとしても、あるいは海外のロボットメーカーが完成品市場でシェアを伸ばしたとしても、物理的に動くロボットを作る以上、日本の高品質な減速機、モーター、センサー、電子部品は欠かすことができません。

つまり、世界のどの企業がフィジカルAIの競争に勝ったとしても、日本の部品メーカーには需要が落ちてくるという構造的な強みがあるのです。

一方で、投資にあたってはリスクも認識しておく必要があります。国策として掲げられている戦略17分野ですが、今後の政権交代や政策の変更によって、投資の優先順位や規模が見直される可能性はゼロではありません。

また、フィジカルAIのような先端テーマに関連する銘柄は、将来の成長期待が先行して株価が形成されやすいため、価格の変動(ボラティリティ)が大きくなる傾向があります。

大きな市場規模(TAM:Total Addressable Market=獲得可能な最大市場規模)が見込まれるテーマを捉えつつ、グローバルで競争力を持つ企業を見極めることが重要です。今回紹介した企業を入り口として、ご自身の投資スタイルに合った銘柄を深掘りしてみてはいかがでしょうか。

フィジカルAIは日本企業の競争優位性を確立した領域だと考えています。現在はデジタル空間におけるAIの使い方やその設備投資、特にデータセンターへの投資が株式市場で話題ですが、今後はそのAIを使ってリアルの空間においてどのように作業を発揮するかというテーマにシフトしていくことが考えられます。その際に、いわゆるロボットが活躍するというのが、フィジカルAIのテーマへとつながっていきます。

ロボットというと、人によっては人型ロボットをを想像するかもしれませんが、フィジカルAIの今後の浸透を考えると、まずは産業用途に使われるロボットの普及が第一ステージかなと思います。

現在の産業用ロボットの頭脳をどうAIに置き換えていくかということと、その頭脳が出した指示をどうロボットが作業をこなしていけるかがカギになりますが、その点においては現在ハードウェアであるロボットを製造している日本企業に商機があるという点が見逃せません。

参考資料

  • 内閣官房・内閣府「戦略17分野における『主要な製品・技術等』」(2026年6月24日 経済財政諮問会議・日本成長戦略会議 合同会議 資料1)
  • 川崎重工業「NVIDIA、Analog Devices、Microsoft、富士通とフィジカルAIの社会実装に向けて協業し、開発を加速」(2026年5月22日)
  • ファナック「ファナックはGoogleとの協業でフィジカルAI社会実装を加速」(2026年5月13日)
  • ファナック「ファナックはNVIDIAとの連携をさらに強化」(2026年5月15日)
  • YouTubeチャンネル「イズミダイズム」

※リンクは記事作成時点のものです。

免責事項

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泉田良輔
LIMO&ファイナンス編集部 編集長

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