この記事はここがポイント
- JTは2026年1-6月期中間決算で増収増益、通期配当1株272円と2期連続増配を予想
- 主力たばこに加え、冷凍うどんのテーブルマークなど加工食品事業が利益を大幅に伸ばし収益性を向上
- 日本専売公社を起源とし、医薬品の鳥居薬品事業も展開したJTの多様な事業の歴史
JT(日本たばこ産業)<2914>は、その社名が示す通りたばこの製造・販売を主力とする企業です。ただ同社の事業を掘っていくと、「たばこ会社」という肩書きだけでは括れない顔が見えてきます。
同社のルーツは、たばこ専売制度の実施主体として1949年6月に設立された日本専売公社にあり、1985年4月の民営化で日本たばこ産業株式会社として発足しました。
その後の多角化の歴史をたどると、現在も続く加工食品事業(テーブルマーク)や、2025年まで手掛けていた医薬品事業(鳥居薬品)など、たばこ以外の事業を広げてきた経緯があります。
そんな同社は8月13日に2026年1〜6月期の中間決算を発表しました。
中間決算は増収増益、配当も増額
同社が発表した2026年1〜6月期の中間決算は、売上収益が1兆9,860億7,000万円(前年同期比+17.7%)、営業利益が6,449億4,000万円(同+29.0%)、税引前中間利益が6,059億9,900万円(同+32.4%)、最終利益が4,318億2,900万円(同+35.0%)となりました。基本的1株当たり中間利益は243.24円で、前年同期の180.19円から大きく伸びています。
通期の配当については1株272円(前期比38円増)としており、配当性向は75.2%の見込みです。
主力はたばこ事業、伸びているのは加工食品事業
セグメント別に見ると、売上収益の96%程度を占めるのはやはりたばこ事業で、1兆9,055億9,300万円(前年同期比+18.5%)、営業利益は6,829億200万円(同+22.8%)と、依然として同社の稼ぎ頭であることに変わりはありません。
一方、売上収益の4%程度に過ぎない加工食品事業も、売上高792億3,700万円(同23.2%)に対して営業利益は43億6,600万円(同+46.4%)と、利益面では収益性を高めています。
売上規模こそ小さいものの、「たばこ会社」の中でひそかに存在感を増している事業といえそうです。
ここまで見てきたように、同社の中間決算は主力のたばこ事業に加え、加工食品事業も収益性を高めながら増収増益を支えています。
この加工食品事業がどのような経緯で同社の傘下に入ったのか、そして同社がかつて手掛けていた医薬品事業とはどのようなものだったのか。
次のページでは、専売公社を起源に持つ同社の知られざる多角化の歴史と、直近のバリュエーション評価を詳しく解説します。
専売公社を起源に持つJTが、なぜ冷凍うどんや医薬品を手掛けてきたのか
同社の出発点は、たばこ専売制度の実施主体として1949年6月1日に設立された日本専売公社です。
たばこの安定的な提供と財政収入の確保という公的な役割を担ってきましたが、1985年4月1日、公社の財産を全額出資する形で日本たばこ産業株式会社として民営化されました。
民営化後、同社はたばこ事業の海外展開(英国Gallaher社や米国RJRナビスコ社の海外たばこ事業の取得など)と並行して、たばこ以外の事業にも進出していきます。
加工食品事業(テーブルマーク)
1999年7月、旭化成工業の食品事業(旭フーズなど子会社8社)を取得したのを皮切りに、2008年1月には加ト吉の株式を公開買付けで取得しました。
加ト吉は2009年にJTの食品事業部門と事業統合し、2010年1月に社名を「テーブルマーク」へ変更しています。冷凍讃岐うどんなどの冷凍食品で知られる同社は、現在もJTの100%子会社として加工食品事業を担っています。
医薬品事業(鳥居薬品)※現在は非継続事業
1998年12月には、鳥居薬品の発行済株式の過半数を公開買付けで取得し、医薬品事業にも進出しました。ただこの事業は現在のJTグループには残っていません。2025年5月、同社は塩野義製薬との間で医薬事業の承継および鳥居薬品株式の譲渡に関する合意書を締結し、同年9月に鳥居薬品の全株式を、同年12月には医薬事業そのものを譲渡しています。
つまり、四半世紀近く手掛けてきた医薬品事業は、2025年末をもって塩野義製薬に引き継がれた形です。実際、2026年1〜6月期のセグメント情報にも医薬事業の項目はなく、現在のセグメントはたばこ事業と加工食品事業の2つになっています。
バリュエーション面では、どのような水準にあるのか
8月21日終値は6,980円(前日比+110円、+1.60%)でした。PER(会社予想)19.24倍、PBR(実績)2.82倍)、配当利回り(会社予想)は3.90%です。年初来では1月29日に安値5,451円、7月31日には高値7,218円をつけており、8月21日時点は年初来高値から約3.3%値を下げた水準にあります。
12カ月の値動きをみると、緩やかな右肩上がりとなっています。
3月以降はAIや半導体関連株に資金が集まる動きとなりましたが、こうしたなかでもJT株は大きく値を下げることなく、底堅く推移していたことが読み取れます。
JT株の年間チャート
記者コメント
「たばこ会社」という社名からは想像しづらいものの、JTの事業の歴史をたどると、専売公社という公的な出自を持ちながら、加工食品や医薬品といった分野にも手を広げてきたことがわかります。もっとも、2025年の医薬品事業の譲渡が示すように、事業ポートフォリオは常に一定ではなく、選択と集中によって入れ替わっていくものです。
一方で変わらず注目したいのが、株主還元に対する積極的な姿勢です。
同社は配当性向75%を目安とする株主還元方針を掲げており、1株当たり年間配当金は2024年度の194円から2025年度は234円、2026年度は272円(予想)と、2期連続の増配が見込まれています。
2026年度の内訳は中間配当が136円(確定)、期末配当が136円(予想)で、配当性向は75.2%の見込みです。8月21日終値6,980円を基準にすると配当利回りは3.90%となり、東証プライム市場の中でも高い水準にあります。
加工食品事業も含め、同社が今後どのような事業構成・株主還元を選んでいくのか、次回以降の決算発表にも注目したいところです。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
