この記事はここがポイント
- 11月6日にJTはロシア製造会社4社の一時管理対象化の発表を受け、ストップ安の6,269円まで急落
- 利益連動配当のJTは利回り4.34%に上昇した一方、ロシア事業の影響による業績や配当への波及懸念
- 中間赤字のLIXILや通期予想を下方修正したAGCなど4社は年間配当予想を据え置き
6日の東京市場は、米中間選挙での民主党の大勝を受けた米ハイテク株安が波及し、AI・半導体関連株を中心に全面安となりました。
日経平均株価は前日比▲3,643円13銭(▲5.96%)の5万7,434円77銭と、史上3番目の下げ幅です。
ところが東証33業種で下落率トップだったのは、AI・半導体関連株が多い電気機器(▲4.84%)ではなく、一般にディフェンシブとされる食料品(▲10.02%)でした。
効いたのはJTです。食料品の時価総額の約3分の1を占めるJTがストップ安(▲19.31%)となり、JTを除いた試算では、食料品の下落率は▲6%台にとどまります。 ※東証プライムの食料品67銘柄の時価総額(11月5日終値ベース)をもとに算出
全体安で予想配当利回りが上がった銘柄は多くありますが、なかには業績面で気がかりな発表があった銘柄もあります。
ここでは、11月6日に下落して予想配当利回りが3.5%を超えた銘柄のうち、直近で会社から業績面の気がかりな発表があった5銘柄を取り上げます。
JT<2914>:ロシアの製造会社4社が一時管理の対象に
- 11月6日終値:6,269円(前日比▲1,500円、▲19.31%、ストップ安)
- 年間配当予想(2026年12月期):272円
- 予想配当利回り:4.34%(11月5日終値ベースでは3.50%)
JTは11月6日朝、ロシア事業に関するリリースを公表しました。
同社グループは国内外の制裁措置や規制などを守ったうえでロシアでの事業を続けてきましたが、11月5日に署名されたロシアの大統領令によって、ロシアの現地法人のうち製造会社4社が一時管理の対象とされていることを確認したという内容です。
詳しい情報や今後取りうる対応、グループへの影響は確認を進めている段階で、開示すべき事項がわかった場合は速やかに公表するとしています。
6日は取引時間中に売買が成立せず、大引けでストップ安
JT株は前日の5日、7,769円まで上昇して上場来高値を更新し、そのまま高値で取引を終えていました。
一転して6日は朝から売り気配が続き、取引時間中は一度も売買が成立しませんでした。
ストップ安に張り付いたまま、大引けでその日の値幅制限の下限である6,269円で売買が成立し、そのまま取引を終えています。
6日の出来高は279万4,400株で、5日の794万2,400株を大きく下回っています。
週明け9日も値動きは読みにくい
週明け11月9日の値幅制限は、6日の終値6,269円を基準に上下1,000円です。下限は5,269円、上限は7,269円になります。
JTは6日時点で、グループへの影響を確認中としています。9日以降の値動きは、同社が今後公表する内容次第で大きく変わる可能性があります。
配当は利益に連動、期末136円は予想の段階
JTの2026年12月期の年間配当予想は272円(中間136円、期末136円)で、前期の234円から増える計画です。
中間配当の136円はすでに決まっていますが、期末の136円は予想の段階です。
同社は配当性向75%(±5%程度の範囲内で判断)を目安としています。今期の配当予想は、カナダの子会社JTI-Macdonald Corp.を被告に含む訴訟の和解に伴う和解金支払いなどの影響を調整した後の当期利益(今期予想6,600億円)に、配当性向73.2%を当てはめて算定しています。
配当が利益に連動して決まる以上、ロシア事業への影響が業績に及んだ場合には、配当予想にも影響が出る可能性があります。
6日終値での利回り4.34%は、あくまで現時点の配当予想272円を前提にした数字です。
LIXIL<5938>:中間期は最終赤字、年90円の配当予想は据え置き
- 11月6日終値:1,683.5円(前日比▲80.5円、▲4.56%)
- 年間配当予想(2027年3月期):90円
- 予想配当利回り:5.35%(11月5日終値ベースでは5.10%)
LIXILが10月30日に発表した2027年3月期の中間決算は、最終赤字でした。
同社によると、国内で地金・資材のコスト上昇が本格化した一方、追加の価格改定は8月と10月以降に実施するため上期の効果は限定的で、一時的に収益性が悪化しました。
最終損益は、この事業利益の減少に加えて税金費用が増え、赤字になっています。
- 売上収益:7,624億6,100万円(前年同期比3.6%増)
- 事業利益:55億1,000万円(同67.3%減)
- 営業利益:63億7,400万円(同44.1%減)
- 中間損失:45億8,900万円(前年同期は33億5,500万円の利益)
事業利益は、売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いた、同社が開示している利益です。
通期の業績予想は変えておらず、売上収益1兆6,000億円(前期比5.9%増)、事業利益450億円(同16.9%増)、営業利益375億円(同32.0%増)、当期利益120億円(同47.4%増)を見込んでいます。
年間配当予想は90円(中間45円、期末45円)で、前期と同額です。中間の45円は決まっています。
5銘柄のなかで予想配当利回りは最も高い5.35%です。
住友林業<1911>:米国の戸建住宅事業で通期予想を下方修正
- 11月6日終値:1,244.5円(前日比▲125円、▲9.13%)
- 年間配当予想(2026年12月期):50円
- 予想配当利回り:4.02%(11月5日終値ベースでは3.65%)
住友林業は11月5日の大引け後、2026年12月期の第3四半期決算とともに通期業績予想を引き下げました。
- 売上高:2兆7,800億円(前回予想2兆9,500億円)
- 営業利益:1,250億円(同1,430億円)
- 経常利益:925億円(同1,150億円)
- 純利益:600億円(前回予想から変更なし)
前期比では、売上高が22.6%増、営業利益が25.9%減、経常利益が47.1%減、当期純利益が43.7%減となる計画です。
修正の理由として同社は、米国の戸建住宅事業で住宅ローン金利の上昇や経済の先行き不透明感から購入者の様子見姿勢が続いており、販売戸数の減少や収益性の低下を織り込んだこと、米国の不動産事業で売却物件数の減少を織り込んだことを挙げています。
年間配当予想は50円(中間25円、期末25円)で、今回の決算で変更はありません。前期の年間配当は53円でした。
カナデビア<7004>:通期の営業利益予想を下方修正
- 11月6日終値:916円(前日比▲97円、▲9.58%)
- 年間配当予想(2027年3月期):38円
- 予想配当利回り:4.15%(11月5日終値ベースでは3.75%)
カナデビアは11月5日の大引け後に発表した中間決算で、2027年3月期の営業利益予想を引き下げました。
環境部門における採算悪化等が理由です。一方、為替差損益等の改善を見込み、経常利益と純利益の予想は据え置いています。
修正後の通期予想は次の通りです。
- 売上高:6,400億円(前期比0.8%減)
- 営業利益:230億円(同88.6%増)
- 経常利益:220億円(同61.5%増)
- 純利益:210億円(同88.6%増)
中間期は営業損失35億2,800万円、経常損失10億9,500万円で、中間純利益は特別利益の計上などで50億4,700万円でした。
同社は、期末に完成する工事の割合が大きく、売上高が期末に集中するため、業績の季節的な変動が大きいとしています。
配当は期末一括で、年間38円(前期は25円)の予想を変えていません。
6日は9時21分に828円まで下げた後に下げ幅を縮め、終値はこの日の高値と同じ916円でした。
AGC<5201>:11月5日に通期予想を一転減益へ下方修正
- 11月6日終値:4,699円(前日比▲252円、▲5.09%)
- 年間配当予想(2026年12月期):210円
- 予想配当利回り:4.47%(11月5日終値ベースでは4.24%)
AGCは11月5日13時、2026年12月期の第3四半期決算とともに通期業績予想を引き下げました。
- 売上高:2兆2,000億円(前回予想から変更なし)
- 営業利益:1,200億円(前回予想1,500億円)
- 税引前利益:820億円(同1,240億円)
- 最終利益:400億円(同770億円)
前期比では、売上高が6.9%増、営業利益が5.9%減、税引前利益が34.3%減、最終利益が42.2%減となる計画です。
修正の理由として同社は、営業利益について、オートモーティブセグメントの北米・欧州における製造コストの悪化、エッセンシャルケミカルズ東南アジアにおける原燃材料価格の上昇、建築ガラスセグメントの欧州・アジアおよびライフサイエンスセグメントのバイオ医薬品CDMOにおける販売数量の未達などを挙げています。
純利益については、これに加えてバイオ医薬品CDMOの米国コロラド拠点の売却に伴い、当初見込んでいなかった固定資産売却損を計上したことを挙げています。
年間配当予想は210円(中間105円、期末105円)で、前期と同額です。同社は今回の業績予想の修正に伴う配当予想の修正はないとしています。
5銘柄のまとめ
11月6日は米国発のAI・半導体株安で全面安となり、5銘柄も大きく下げて予想配当利回りが上がりました。
JTはロシアの製造会社4社が一時管理の対象となり、影響を確認中の段階でストップ安となっています。
LIXILは中間期が最終赤字、AGC、住友林業、カナデビアは業績予想を引き下げましたが、4社とも配当予想は変えていません。
業績に気がかりな材料を抱える高配当株5銘柄
JTの配当は利益に連動して決まる
JTは配当性向75%を目安とし、利益に連動して配当を決めています。ロシア事業の影響がまだ確認中の段階であるため、配当予想の前提になっている利益が今後どうなるかは、現時点ではわかりません。
記者の視点
6日は、米国発の株安で業種を問わず売られた1日でした。
今回の5銘柄は、予想配当利回りが一気に上がった一方で、それぞれ業績面で気がかりな発表を抱えています。
なかでもJTは、ロシアの製造会社4社が一時管理の対象になったことを確認した段階で、業績や配当への影響は確認中です。
6日は取引時間中に売買が成立しないままストップ安に張り付いて取引を終え、週明け9日以降の値動きも同社の追加の開示次第で大きく変わる可能性があります。
6日終値での利回り4.34%は、配当性向に連動して決まる現時点の配当予想272円が前提の数字です。
まずはJTが今後公表するロシア事業の影響の中身と、配当予想に変更があるかどうかに注目したいところです。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
