この記事はここがポイント
- 東宝の2027年2月期中間決算は前年の反動で営業利益が24.8%減の309億3,800万円となる減収減益
- 『名探偵コナン』や『ちいかわ』のヒットにより、映画事業が営業利益194億円を確保して業績を牽引
- 投資有価証券売却で通期純利益予想を480億円へ上方修正し、下期は『ゴジラ-0.0』の公開を予定
「劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』」や「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」を配給し、グループで全国725スクリーン(8月末時点、共同経営を含む)の映画館を経営する東宝<9602>は、10月15日に2027年2月期の中間決算(2026年3~8月)を発表しました。
前年同期は「鬼滅の刃」「国宝」の大ヒットがあり、その反動で営業収入・営業利益ともに前年を下回りました。
同社は上期の進捗を「概ね計画通り」としており、通期の営業利益予想は据え置きました。純利益予想は、第3四半期の投資有価証券の一部売却に伴い引き上げています。
減益決算のなかでも、同社の利益をどの事業が支えているのか。最新決算から稼ぎ頭をひも解いていきましょう。
中間期は前年の大ヒットの反動で減収減益
2027年2月期中間決算の主な数値は次のとおりです。
- 営業収入:1,851億6,200万円(前年同期比3.4%減)
- 営業利益:309億3,800万円(同24.8%減)
- 経常利益:331億2,700万円(同21.5%減)
- 中間純利益:200億1,900万円(同40.2%減)
前年同期の大ヒット作品の反動に加え、IP・アニメ事業での会社分割の影響や一過性費用などが利益を押し下げました。
純利益の減少率が大きいのは、前年同期に投資有価証券売却益を特別利益に計上していたためです。
稼ぎ頭は映画事業、配給と興行の両輪で稼ぐ
中間期のセグメント別の数値は次のとおりです。
- 映画事業:営業収入911億7,700万円(前年同期比12.1%減)、営業利益194億円(同16.4%減)
- IP・アニメ事業:営業収入431億3,200万円(同15.6%増)、営業利益59億7,000万円(同44.2%減)
- 演劇事業:営業収入95億8,900万円(同10.4%減)、営業利益8億4,500万円(同15.2%減)
- 不動産事業:営業収入400億800万円(同1.8%増)、営業利益98億9,500万円(同5.4%減)
営業収入・営業利益ともに最大なのが映画事業で、営業収入は全体の約半分(49.2%)を占めます。
減益ながら営業利益は194億円と、2番目に大きい不動産事業の98億9,500万円のおよそ2倍です。
その不動産事業も、賃貸用不動産の空室率が8月末時点で0.3%と、所有する不動産が堅調に稼働しています。
映画事業の内訳は次のとおりです。
- 映画営業事業:営業収入286億3,400万円(前年同期比26.2%減)、営業利益84億9,900万円(同25.0%減)
- 映画興行事業:営業収入551億5,500万円(同2.4%増)、営業利益103億4,500万円(同3.5%減)
- 映像関連事業:営業収入73億8,700万円(同33.3%減)、営業利益5億5,500万円(同51.3%減)
同社の強みは、作品の共同製作・配給を担う映画営業事業と、TOHOシネマズ等が映画館を経営する映画興行事業の両方を持っていることです。
決算説明資料では、映画事業のビジネスモデルを「興行と配給の安定したベース収益と、大ヒット時のアップサイドを追求」と説明しています。
この中間期も『名探偵コナン』『ちいかわ』が大ヒットし、TOHOシネマズは7月の鑑賞料金の一部改定後も動員が堅調でした。
営業利益は映画興行が103億円と最も大きく、営業利益率では映画営業事業が29.7%と、映画興行事業の18.8%を上回ります。
IP・アニメ事業は増収も、会社分割と一過性費用で減益
IP・アニメ事業は、TOHO animation作品の配信収入が特に海外で好調で15.6%の増収でしたが、営業利益は44.2%減でした。
2026年3月の会社分割で海外のライセンス事業をTOHO Global(12月決算)に移したことで、海外の収入が費用より後にずれて計上される影響が出たほか、条件付対価に関する一過性費用や海外事業の先行投資も重なりました。
この一過性費用は、第3四半期以降には発生しない見込みです。
通期予想は純利益を引き上げも営業利益は据え置き
通期予想は、営業収入3,450億円(前期比4.3%減)、営業利益620億円(同8.7%減)、経常利益670億円(同4.5%減)、純利益480億円(同7.3%減)です。
10月15日に、第3四半期の投資有価証券の一部売却を反映して純利益予想を410億円から480億円に引き上げました。
純利益の引き上げは株式の売却によるもので、本業のもうけを示す営業利益の予想は、下期の大型作品の初動を見極めるとして据え置いています。
中間配当は1株11円で、年間配当予想は22円です。同社は年間17円を下限に配当性向35%以上を株主還元方針としており、期末配当予想は引き続き検討するとしています。
東宝の10月23日の株価
10月23日の終値は1,677.5円(前日比▲26.5円、▲1.56%)です。引けにかけて下げに転じたものの、取引時間中に一時1,752.5円をつけ、年初来高値を更新しました。
この終値をもとにした指標は次のとおりです。
- PER(会社予想):29.15倍
- PBR(実績):2.66倍
- 配当利回り(会社予想):1.31%
東宝の年間チャート
株主優待は8月末の株主に映画株主ご招待券
同社は8月末時点の株主を対象に年1回、TOHOシネマズで使える「映画株主ご招待券」を発行しています。
100株~499株で1枚、500株~2,499株で2枚と、保有株数に応じて最大30枚です。
原則として「ムビチケ」が発売されている新作が対象で、インターネット予約には対応していません。
2026年8月末の権利はすでに確定しており、次の対象は2027年8月末時点の株主です。
株主優待の内容は変更される可能性があるため、公式サイトを確認してください。
記者コメント
中間期は前年の大ヒットの反動で減益となりましたが、映画事業は配給と興行の両方で利益を出し、稼ぎ頭の役割を果たしました。
IP・アニメ事業も、利益は会社分割による計上時期のずれや一過性費用で押し下げられたものの、営業収入は海外での配信収入の伸びで15.6%増えています。
下期の焦点は、11月3日に国内公開する『ゴジラ-0.0』です。
北米を皮切りに世界約80カ国で上映し、海外でも同社グループが自社で配給します。
同社が通期の営業利益予想を据え置いた理由に挙げたのも、下期の大型作品の初動でした。
次の第3四半期決算は2027年1月14日に発表予定です。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
