この記事はここがポイント
- NECは社会インフラが利益の主役に変化、PER約21倍の評価根拠。
- 2026年8月21日の株価▲3.40%下落は、市場のグロース売りが要因。
- 2027年3月期第1四半期は売上+14.5%、営業利益+66.1%と大幅増益。
「決算はよかったのに、なぜ株価が下がるのか」——NEC<6701>のこの日の値動きに、そう感じた方もいるかもしれません。株価は前日比▲3.40%(▲164円)の4,656円。この日の東京市場は、値がさのグロース株が売られ、銀行や商社などのバリュー株に資金が向かう一日でした。NECは事業の柱こそITサービスと社会インフラですが、市場では電気機器に分類され、ハイテク・グロースの一角として売られた面が大きいとみられます。
高値から1割弱の調整——この1カ月の値動き
過去1カ月の値動きを株価チャートで振り返っておきましょう。
※詳細はNEC<6701>の企業ページで確認ください
NECの株価は7月下旬の4,200円台から水準を切り上げ、8月中旬には5,100円台の高値をつけました。しかしそこからは調整に転じ、8月21日は4,656円と、高値から1割弱下げた水準にあります。
この日の株価は▲3.40%下落しましたが、1か月の時間軸で見ると、急ピッチで上げた高値圏からの調整の一環、と位置づけることもできます。NECのファンダメンタルズの問題というよりは相場のセンチメントによって下落したといえます。
8月21日の下げは地合い要因
8月21日の東京市場は、日経平均が値がさ株安で反落する一方、TOPIXは銀行・商社・保険の買いで上昇する「グロース売り・バリュー買い」の一日でした。半導体・電機が広く売られるなかで、NECも電気機器の一角として資金流出に巻き込まれた、という需給・セクター要因が大きいとみられます。あらためて決算など、NEC固有の新たな悪材料が出たわけではありません。
2026年8月21日の東京株式市場|商社・銀行・トヨタ高でTOPIXは上昇、ファーストリテイリング安で日経平均は反落——バリュー優位
ITサービスと社会インフラ——最新決算に見る利益の主役
NECの事業は、大きく2つです。
ITサービス事業は、システム・インテグレーション(システム構築・コンサルティング)、保守、アウトソーシング・クラウドサービス、システム機器やソフトウェア・サービスが柱で、コンサルのアビームコンサルティングや、欧州の金融向けソフトのAvaloq、デンマークのKMDもここに含まれます。
もう一つの社会インフラ事業は、コアネットワーク・携帯電話基地局・光伝送システムといったネットワークインフラ、通信事業者向けソフトウェア(OSS・BSS、米ネットクラッカー)、そして航空宇宙・防衛・海洋システムを手がけます。派手さはありませんが、通信網や防衛といった「社会の土台」を握るのがNECです。
この二本柱の稼ぐ力は、直近の決算にも表れています。2027年3月期第1四半期(2026年7月29日発表、IFRS・連結)は、売上収益8,197億円(前年同期比+14.5%)、営業利益587億円(同+66.1%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益496億円(同+157.4%)と大幅な増益でした。
セグメント別に見ると、ITサービスが売上6,214億円(+9.6%)・セグメント損益578億円(+41.6%、利益率9.3%)と着実に伸び、社会インフラは売上1,652億円(+37.3%)・セグメント損益160億円(前年同期比で約4.3倍、利益率9.7%)と損益が急拡大しました。防衛やネットワークという地味な屋台骨が、利益成長の主役に変わりつつあります。
なお通期の会社予想は、売上収益3兆5,400億円、営業利益4,300億円(+8.2%)、当期利益2,900億円、配当は前期38円から40円への増配予想です。
予想PER約21倍・実績PBR約2.8倍をどう見るか
バリュエーションを確認します。会社予想の1株当たり利益(EPS)218.65円に対し、8月21日終値4,656円の予想PERは約21倍。実績の1株当たり純資産(BPS)約1,684円に対する実績PBRは約2.8倍です。会社予想配当40円ベースの配当利回りは約0.9%となります。
PERは、市場平均と比べて飛び抜けて高いわけではありませんが、割安とも言い切れない水準です。予想PER約21倍と実績PBR約2.8倍という組み合わせは、逆算すると株主資本利益率(ROE)でおよそ13%(PBR≒ROE×PERの関係)を織り込んでいる計算になります。今期の会社予想はROE約13%に相当し、市場はおおむねこの「二桁ROEの継続」を前提に値付けしている、と読めます。
元機関投資家イズミダの視点:地味な社会インフラが利益の主役に変わるとき
NECの事業の中身はITサービスと社会インフラ、つまりストック型のサービスと通信・防衛インフラが柱で、値動きの荒い半導体メーカーとは性格が異なります。それでも市場では電気機器に束ねられ、この日のようなグロース売りの地合いでは、一緒くたに売られてしまう。株価の下げが会社の実力とずれることは、決して珍しくないのです。
予想PER約21倍が映すのは、市場が求める二桁ROEの継続。社会インフラの損益が前年の4倍超に伸び、防衛やネットワークという地味な屋台骨が利益の主役に変わりつつあることは、この値付けを正当化しうる変化です。
目先の需給に振られた株価そのものより、この構造変化が本物か——通期を通じた社会インフラの利益の伸びと、ITサービスの利益率の底上げが続くかを、私は追っていきたいと考えています。
免責事項
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株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
