この記事はここがポイント
- 三井金属2027年3月期1Q、経常利益の稼ぎ頭が製錬から極薄銅箔へ主軸転換。
- 通期予想は増収減益、過去5期の営業利益は10倍幅で推移。
- 株価は半年で4倍超上昇後3か月で半値近く下落、市場評価は不透明感。
金属という社名を持つ会社が、実際には何で稼いでいるのか。私は長いあいだ、三井金属<5706>を亜鉛や鉛を溶かす製錬の会社だと思っていた。ところがセグメント別の数字を並べると、利益の重心はもっと薄くて軽いところにある。プリント配線板に貼りつける、極薄の銅箔だ。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
社名から連想される姿と、有価証券報告書が並べている姿
同社は事業を機能材料、金属、自動車部品、その他の事業の4部門で説明している。
社名から思い描くのは、このうち金属の部門だろう。亜鉛、鉛、銅、金、銀の製造・販売に資源リサイクル。関係会社の欄には神岡鉱業、八戸製錬、三池製錬、彦島製錬といった製錬所の名前が並ぶ。
ところが機能材料の部門を開くと、別の顔が出てくる。製品の先頭に置かれているのは銅箔で、しかも「キャリア付極薄銅箔」「プリント配線板用電解銅箔」と細かく書き分けられている。
その後ろに排ガス浄化触媒、電子材料用金属粉、水素吸蔵合金、高純度酸化タンタル、スパッタリングターゲットが続く。素材メーカーというより、電子材料メーカーの品揃えだ。
関係会社の並びも対照的だ。台湾銅箔股份有限公司、Mitsui Copper Foil(Malaysia)Sdn.Bhd.、三井銅箔(香港)有限公司、三井銅箔(蘇州)有限公司。銅箔の名を冠した現地法人が、東アジアから東南アジアに広がっている。
製錬所の名前と銅箔工場の名前が、同じ書類の同じ節に同居している。そして直近の数字を見ると、会社の表情を決めているのは後者のほうだ。
利益の柱が製錬から銅箔へ移る過程は、セグメントの数字に残っている
2026年3月期の部門別実績を見ると、機能材料の売上高は3,195億円で連結全体の42.1%を占め、前期比+34.3%と大きく伸びた。
金属は2,902億円で全体の38.3%、前期比+15.7%。売上の規模では、この時点で機能材料が金属を追い抜いている。
一方の経常利益は金属が750億円、機能材料が665億円。稼ぎの序列は、2026年3月期まではまだ製錬側が上だった。
その序列が2027年3月期に入って入れ替わる。
1Qの部門別業績は、機能材料が売上高1,005億円(前年同期比+41.1%)・経常利益182億円(同+73.8%)。金属が売上高982億円(同+32.7%)・経常利益68億円(同+105.0%)。売上でも利益でも、機能材料が上に立った。
会社は機能材料の増益要因を、銅箔の販売量が増加したことに加え、販売価格の改定によるマージンの改善等によるものと説明している。量と単価の両方が効いた、という言い方だ。
同じ四半期の環境認識としては、半導体市場が堅調であったことから銅箔の販売量が増加した、とも述べている。この部門の伸びは非鉄金属の相場ではなく、銅箔そのものの需要と価格で動いている。
金属の部門も経常利益を倍増させたが、こちらの説明は毛色が違う。亜鉛製錬の大規模定期修繕工事があったものの、相場の変動に伴う在庫要因が好転したこと等によるものだという。
相場と在庫の綾で振れる利益と、製品の競争力で積み上げた利益。同じ「倍増」でも、中身の性質はまったく別だ。
会社が1Qと同時に見直した通期予想が、この違いをさらにはっきりさせた。2027年3月期の部門別経常利益予想は、機能材料が780億円、金属が265億円。
前回予想は機能材料670億円・金属375億円だった。機能材料を110億円積み増し、金属を110億円削っている。
会社自身が、利益の期待値を製錬から銅箔へ振り替えたことになる。
「非鉄金属メーカー」というラベルは間違っていない。ただ、そのラベルから読者が思い描く製錬所の風景は、いまの利益構造の半分しか説明していない。
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
