2027年3月期1Qに映った銅箔の効き方と、通期予想の減益
連結の1Qは売上高2,015億円(前年同期比+19.3%)、営業利益210億円(同+84.1%)、経常利益234億円(同+134.3%)。親会社株主に帰属する四半期純利益は168億円で、前年同期の59億円の損失から大きく振れた。
営業利益の増加について会社は、銅箔の販売量が増加したことに加え、円安の進行や非鉄金属相場の変動に伴う在庫要因が好転したことなどを挙げている。
経常利益の伸びがさらに大きくなったのは、持分法による投資利益が20億円、為替差損益が18億円増えたためだという。
前年同期が損失だったのは、関係会社株式売却損失引当金の繰入を197億円計上していたためだ。自動車部品の子会社を手放す過程で生じた費用で、この会社の全株式は2025年11月に譲渡されている。
ドアロックをつくる事業を切り離し、銅箔に資源を寄せる。ポートフォリオの整理としては筋の通った動きだ。
もっとも、通期予想は素直な右肩上がりではない。2027年3月期の会社予想は売上高8,500億円(前期比+12.1%)に対し、営業利益940億円(同▲28.2%)、経常利益1,000億円(同▲26.9%)、当期純利益800億円(同▲12.3%)。
増収なのに大幅減益、という形だ。前期の営業利益1,309億円(前期比+75.1%)・当期純利益912億円(同+41.1%)という水準の反動でもある。
過去5期の営業利益を並べると、2022年3月期607億円、2023年3月期125億円、2024年3月期316億円、2025年3月期747億円、2026年3月期1,309億円。10倍の幅で振れている。
この振れ幅の大きさが、そもそもこの会社の性格だ。1期の水準を延長線で読むと、たいてい足をすくわれる。
1Qの営業利益210億円は通期予想940億円に対して22%台の進捗で、四半期を均した水準からはやや遅れている。
予想の前提に置かれた相場観も見ておきたい。上期見込のロジウムは1オンス8,641ドル、パラジウムは1,356ドルで、いずれも前回予想から切り下げられた。排ガス浄化触媒に使う貴金属の相場が、下期の利益の振れ幅を左右する余地は残る。
昨秋からの4倍と半値。株価はこの入れ替わりをどう評価したのか
株価の振れ幅は、業績の変化よりはるかに大きかった。
2025年9月末の終値は11,000円台。10月末に15,000円台、11月末に17,000円台と水準を切り上げ、2026年2月末には36,000円台に達した。
3月末にいったん28,000円台まで下押ししたあと、5月末には51,000円台。昨秋以降の月末終値では、ここが最も高い水準になる。起点からは4倍を超える。
そこからは反落し、6月末に42,000円台、7月末に30,000円台、2026年8月時点の直近終値は28,000円台。5月末の水準からは半値近くまで戻した。
半年で4倍になり、3か月で半値。ボラティリティ(株価の日々の値動きの激しさ)という言葉で足りる範囲を超えている。
この振れ方には、銅箔を通じて半導体関連の需要に接続された会社として評価が入れ替わった局面と、その評価が巻き戻された局面の両方が含まれているとみられる。
1Qで大幅増益を出しているのに、株価は5月末から下げている。市場が見ているのは足元の実績ではなく、銅箔の需要と価格がどこまで続くかという先の話だろう。
指標面では、2026年3月期のROE(自己資本利益率)が24.5%、営業利益率が17.3%。非鉄金属27社の中央値はROE9.0%・営業利益率6.5%で、水準の違いは明らかだ。粗利率も26.7%と、中央値の15.8%を大きく上回る。
もっとも、この業種区分には製錬中心の会社と電線・加工中心の会社が同居している。中央値との比較は目安として使うにとどめたい。
自己資本比率は59.1%まで上がり、中央値の53.3%を超えた。負債をほとんど使わずに稼げる体になったとも言えるが、これを健全さで片づけると論点を1つ落とす。デットキャパシティ(追加で負債を引き受けられる余力)を遊ばせたまま資本効率を保てるかは、また別の話だ。
セグメント別の利益予想の書き換えと、株価の振れ幅を並べて見ると、市場がこの会社をまだ測りかねていることが分かる。
会社は通期予想で機能材料の利益を積み増し、金属を削った。事業の重心がどこにあるかを、会社の側はすでに言い切っている。
一方の株価は、半年で評価を4倍まで切り上げ、その後3か月で半分近くまで戻した。製錬会社として見るのか、電子材料メーカーとして見るのか。当てはめる倍率が定まらないから、こういう振れ方になるのだろう。
イメージが更新されにくい理由も、この辺りにありそうだ。社名に「金属」が入り、関係会社の欄には製錬所と鉱山が並ぶ。銅箔の海外子会社が同じ欄にあっても、目に入る順番は後ろになる。
見ておきたいのは、次の四半期で機能材料の経常利益が金属を上回り続けるかどうかだ。1四半期の逆転は相場の綾でも起きるが、2四半期続けば構造の話になる。ラベルの張り替えは、そのあたりから始まる。
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
