2024年3月期の巨額赤字、パテントクリフからの急回復
住友ファーマの決算は、数年単位で見ると激しく上下してきた。営業損益は2022年3月期の602億円の黒字から、2023年3月期は▲770億円、2024年3月期は▲3,549億円という巨額の営業赤字に沈んだ。米国の主力薬が特許切れを迎え、売上が一気に細ったパテントクリフの直撃である。
そこからの戻りは急だ。2025年3月期は288億円の営業黒字へ転換し、2026年3月期は1,073億円まで回復した。前期のROE(自己資本利益率)は46.3%と、医薬品の業種中央値3.0%を大きく上回る。もっとも、この高さは赤字で縮んだ自己資本の裏返しでもあり、そのまま収益力の強さとは読めない。
医薬品には景気に左右されにくいディフェンシブな業種というイメージがある。だが住友ファーマの実像は、特許の断崖で利益が数千億円規模で振れる、起伏の激しい会社だ。しかも会社の通期予想は営業利益900億円と、前期比では減益を見込む。回復と反動が同居する、微妙な局面にある。
公募増資で立て直す財務、無配が続く株主還元
巨額赤字は財務も痛めた。自己資本比率は前期末で36.4%と、医薬品の業種中央値である約70%を大きく下回る。米国買収で積み上がったのれんも2,000億円を超えて残る。
立て直しの一手が資本の増強だ。会社によると、1Qに公募増資を実施し、株式の発行で得た資金などにより自己資本比率は48.4%まで改善した。研究開発費も1Qで114億円と前年から4割近く増やし、次の柱づくりに資金を振り向けている。もっとも配当は無配が続く。株主還元よりも、まず財務の再建とパイプライン投資を優先する段階だと読み取れる。
筆者コメント
壊滅的な赤字からの反転点として位置づけられる局面だ。住友ファーマの数期の損益を並べると、そう読める。3,549億円の営業赤字から2期で1,000億円超の黒字へ。振れ幅の大きさそのものが、この会社の性格を物語る。
注意したいのは、いまの利益がどこまで巡航速度なのかだ。1Qは本業が減益で、最終増益は為替が支えた。会社の通期予想も減益を見込む。急回復の勢いは、一巡しつつあるのかもしれない。
株価が昨秋からほぼ半分になったのは、市場がこの反動を先に織り込んでいるためではないだろうか。パテントクリフを抜けた製薬会社を見るときは、目先の増減益よりも、次の主力製品がどれだけ育つかに目を向けたい。急回復が一巡したあとに何が残るか。そこにこの銘柄の本質があると考えている。
参考資料
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
