執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
05:20

4期のうち3期が営業赤字、減損が繰り返し利益を削ってきた

一時要因の大きさは、過去の損益を並べるといっそう際立つ。帝人の営業損益は、2022年3月期の442億円の黒字から2023年3月期は128億円へ縮み、2024年3月期は49億円の赤字に転じた。さらに2025年3月期は▲718億円、2026年3月期は▲707億円と、2期続けて大きな営業損失を計上している。

損失の主因は減損だ。前期は当期損失880億円、ROE(自己資本利益率)は▲22.1%に沈んだ。素材メーカーには腰の据わった安定業種というイメージがあるが、実際の帝人の損益は減損の波で大きく上下してきた。安定して素材を供給する事業であることと、決算の利益が安定していることは、別の話だと読み取れる。

こう並べると、1Qの黒字化は「本業が急回復した」というより、「大赤字の期を抜けた会社が資産売却で当座の利益を作った」局面と理解するのが自然だろう。

自己資本比率の低下と、事業ポートフォリオ再編の途上

度重なる赤字は財務にも表れている。自己資本比率は前期末で39.6%と、繊維製品の業種中央値である約58%を下回る。設備投資の重い素材事業を抱え、有利子負債は3,000億円を超える。売却で得た資金を負債の圧縮と成長分野にどれだけ振り向けられるかが、立て直しの鍵になる。

事業の中身も組み替えの途上にある。1Qのセグメントでは、樹脂や電池部材を含むエレクトロニクス&エナジーが事業利益85億円と牽引した一方、炭素繊維などのスペシャリティマテリアルズは10億円の赤字だった。会社は2026年4月にセグメント区分を4区分へ再編しており、稼ぐ事業と立て直す事業の色分けを進めている最中だと読み取れる。

筆者コメント

この黒字化を、本業の回復と呼んでよいのか。帝人の1Qは、その問いを投げかけてくる。営業利益599億円という見出しは強いが、その4分の3近くは資産の売却で生まれた、一度きりの利益だ。

見るべきは、売却益を除いた事業利益がどこまで積み上がるかだろう。1Qの事業利益は前年から前進した。減損に沈んだ2期を経て、本業の採算はようやく上向き始めている。ただ、それが次の減損に耐えられるだけの厚みを持つかは、まだ数期分を見届ける必要がある。

株価が決算の派手さほど跳ねていないのは、市場がこの利益の質を測りかねているためかもしれない。売却で得た資金を負債の圧縮と成長投資へどう配分するか。その巧拙こそ、一時要因が剥落したあとの帝人の姿を決めると考えている。

参考資料

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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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