増収の裏側で、受注高は前年から3割超減った
建設会社の先行きを測るうえで、受注の動きは売上高より前を走る指標になる。清水建設の1Q(個別)の受注高は約4,047億円で、前年同期の約6,225億円から35.0%減少した。前年同期に国内民間の大型案件が集中していた反動が大きいと考えられる。
一方で、受注残にあたる次期繰越高は2兆6,663億円と、前年同期をやや上回る水準を保っている。すでに積み上がった手持ち工事が厚いため、目先の完成工事高はしばらく下支えされる公算が大きい。増収と受注減が同居する一見ちぐはぐな姿も、この受注残の厚みを踏まえると腑に落ちる。
受注は期ごとの大型案件の有無で振れやすい。単一四半期の受注減だけで先行きを悲観するのは早計だろう。海外受注が前年から増えている点も含め、数四半期ならした流れで見ていく姿勢が大切だ。
ROEは業種上位でも、営業利益率は中位に届かない
前期(2026年3月期通期)の実績を業種の物差しと重ねると、清水建設の姿は一様ではない。ROE(自己資本利益率)は13.8%で、建設業の中央値10.2%を上回る。自己資本を効率的に使えているように映る数値だ。
もっとも、本業の収益性を示す営業利益率は5.8%にとどまり、建設業の中央値7.1%には届かない。ROEの高さは、政策保有株式の売却益など本業の外側の利益にも支えられている面がある。「建設は増益で好調」という印象と、本業のマージンがなお業種平均に届かないという事実は、同時に成り立っている。
資材高と労務費上昇という逆風のなかで、工事採算を立て直してきた流れ自体は本物だと考えられる。ただ、資本効率の数値がどこまで本業の実力を映しているのかは、一時要因をならして見極めたい局面だ。
筆者コメント
見逃せないのは、いまの清水建設の利益が、政策保有株式の縮減という長期の宿題と表裏にある点だ。売却益が特別利益を押し上げ、純利益の伸びを大きく見せている。裏を返せば、この追い風は保有株を売り切るまでの期間限定の性格を帯びる。
株価が昨秋の上昇のあと高値圏で伸び悩んでいるのは、市場がこの利益の質をある程度見透かしているためではないだろうか。見出しの増益率よりも、本業の完成工事総利益がどれだけ積み上がるか。そして受注の波がならされたとき、どの水準の利益が残るか。ここに着眼して観察していきたい。
手元には売却で得た資金と厚い受注残がある。これを成長投資と株主還元にどう振り向けるのか。その配分の巧拙こそ、一時要因が剥落したあとの株価を左右する論点になると考えている。
参考資料
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
