執筆者西岡 秀泰社会保険労務士
19:30

「月給50万円以上が目安?」支給停止を受ける可能性があるのはどんな人?

在職老齢年金によって支給停止を受ける可能性があるのは、定年後も仕事を続け厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給する人です。ただし、基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超える人が対象となるため、給与がある程度高い人だけです。

基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分)は15万円までの人が大半であるため、総報酬月額相当額が50万円を超える人は支給停止の可能性があります。

誤解が多いのは、基本月額に老齢基礎年金額(満額は年84万7300円)や加給年金(配偶者は年42万 3700円)などを含めてしまうケースや、総報酬月額相当額に事業収入や不動産収入などを含めてしまうケースなどです。

在職老齢年金の対象となる年金と収入をきちんと確認することが重要です。

支給停止を避けるために収入を調整するときの注意点

在職老齢年金の支給停止を避けるための対策の1つが、収入の調整です。基本月額はほぼ確定しているため、働き方を調整して総報酬月額相当額を下げようとするものです。

その際、注意すべきなのが総報酬月額相当額の変更時期とその金額です。変更時期の決定と金額の算出には複雑なルールがあるため、年金受給者が自分で確認するのが難しいからです。

標準報酬月額と標準賞与額の確認先は、人事部や総務部など勤務先の担当者です。担当者が総報酬月額相当額の変更時期や金額を計算し、日本年金機構などに報告するからです。年金事務所で聞いても、将来の標準報酬月額と標準賞与額を正確には回答できません。

繰下げ受給によって支給停止は避けられない

年金相談では「支給停止を避けるために繰下げ受給する」という話をよく聞きますが、在職老齢年金の影響を避けることはできません。繰下げ受給しても、支給停止されていた年金部分に対しては増額がないからです。

在職老齢年金の支給停止と繰下げ受給

在職老齢年金の支給停止と繰下げ受給
繰下げ待機期間中に在職している場合の増額率について

たとえば、65歳から老齢厚生年金を受給していた場合に全額支給停止となる人は、繰下げ受給による年金額の増額はありません。ただし、65歳以降に納めた厚生年金保険料を反映して、年金額はある程度増えます。

まとめにかえて

今回は、2026年4月から支給停止調整額が65万円に引き上げられた「在職老齢年金」の仕組みと、誤解されやすい注意点について解説しました。 支給停止の対象となるのは総収入ではなく「老齢厚生年金の報酬比例部分」と「厚生年金適用条件下の給与・賞与」に限られるため、まずはご自身の正しい対象額を把握することが重要です。

西岡 秀泰
執筆者西岡 秀泰社会保険労務士

2026年4月の改正で在職老齢年金による支給停止調整額は65万円となり、働きながら年金を全額受け取れる人が大幅に増えました。ただし、「給与が下がると同時に支給停止がなくなる」、「繰下げすれば支給停止を避けられる」といった誤解は現在でも少なくありません。

在職老齢年金の制度内容は複雑ですが、基本月額と総報酬月額相当額の意味を正確に理解し、ねんきん定期便や標準報酬月額・標準賞与額通知書によってその金額を把握することが重要です。

支給停止されるのは支給停止調整額を超えた分の半額にとどまるため、働いたことで総収入が減らないこと(税金や社会保険料は増える可能性がある)を理解したうえで、老後の働き方を考えましょう。

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