この記事はここがポイント
- 年金収入のみで生活する高齢者世帯は41.3%で、前回調査比2.1%減少。
- 65歳以上の無職世帯は夫婦で月約4万2000円、単身で月約3万円の赤字。
- 2026年度年金は国民年金1.9%・厚生年金2.0%増、源泉徴収対象外年金額は214万円未満へ改定。
2026年度の公的年金は、国民年金が前年度比で1.9%増、厚生年金が2.0%増となり、4年続けてのプラス改定となっています。
しかし一方で、物価の上昇は3%台となっており、年金の増加額が追いついていないのが実態です。
消費者物価指数(全国5月)前年比・前年同月比
日本年金機構は2026年(令和8年)6月17日に「令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項」を公表しました。
これにより、所得税の基礎控除引き上げに伴い、公的年金の源泉徴収の対象とならない年金額が、65歳以上の場合は現行の205万円未満から214万円未満へと引き上げられました。
こうした手取り額に影響する制度の変化は、年金生活を考える上でとても重要なポイントとなります。
本記事では「2026年度の年金額」や、65歳以上の無職夫婦世帯の「平均的な生活費」、年金のみで生活するシニアの割合を詳しく解説します。
これからの家計管理や、ご自身の選択肢を広げるための参考としてご一読ください。
私はこれまで証券会社で個人向けコンサルティングや、地方公共団体などの法人向け資産運用業務を幅広く経験してまいりました。
現在も個人のお客様の資産運用や資産形成のサポートを行っておりますが、日々お話しする中で、老後に関してもっとも多く寄せられる具体的なお悩みは「物価高の波に、果たして自分の年金だけで対応できるのか」という切実な声です。
制度の改正や物価上昇が続く中で資金計画を立てるには、シニア世代がどのくらいの生活費で、どのように暮らしているのかを正しく知ることが第一歩だと考えています。
「年金のみで生活するシニア」は何パーセントいるのか?前回の調査結果と比較
「年金収入だけで生活している」高齢者世帯の割合はどれくらいなのでしょうか。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」をもとに、高齢者世帯(※)における収入の実態を解説します。
所得に占める公的年金の割合で見る、世帯の状況「最新の調査結果」
まず、高齢者世帯全体の所得構成を見ると、収入の61.3%を「公的年金・恩給」が占めており、次いで仕事による収入である「稼働所得」が25.9%、「財産所得」が5.8%という内訳です。
ただし、これはあくまで全体の平均値です。
「公的年金・恩給を受給している世帯」に絞って見ると、収入の100%が「公的年金・恩給」という世帯が41.3%に達していることがわかります。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:41.3%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:17.1%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:14.1%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:13.6%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:9.7%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.2%
なお、前回の調査結果は次のようになっています。
所得に占める公的年金の割合で見る、世帯の状況「前回の調査結果」
高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
最新の調査結果と比較すると、年金のみで生活する高齢者世帯の割合は2.1%減っており、年金以外の備えも必要としている状況がみてとれます。
2026年度の年金額は前年度比「国民年金1.9%・厚生年金2.0%」増額改定
2026年度の年金額の例
2026年度の年金額は前年度比、国民年金(基礎年金)1.9%、厚生年金(報酬比例部分)2.0%の引き上げとなりました。
改定後の年金額は、6月の支給分からすでに反映されています。
なお、次回の年金支給日は8月14日(金)です。6月分と7月分の年金が支給されます。
2026年度の国民年金と厚生年金の年金額例
- 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分):23万7279円(+4495円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
厚生労働省は、現役時代の年金加入状況や年収ごとの年金額例として「多様なライフコースに応じた年金額の概算」を公表しています。
「2026年度に65歳になる人」の年金額の概算を、公的年金加入履歴の類型・男女別に「5パターン」みていきましょう。
多様なライフコースに応じた年金額の概算
パターン①:男性・厚生年金期間中心の人
年金月額:17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
パターン②:男性・国民年金(第1号被保険者)期間中心の人
年金月額:6万3513円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
パターン③:女性・厚生年金期間中心の人
年金月額:13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
パターン④:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心の人
年金月額:6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
パターン⑤:女性・国民年金(第3号被保険者)期間中心の人
年金月額:7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
上記はあくまでも年金額の例となっていますが、厚生年金の加入期間が長く、収入が高い人ほど、老後に受け取る年金額が多くなる傾向にあります。
また、国民年金と厚生年金のどちらを中心に加入していたのかが、年金水準に大きな影響を与えるため、ご自身の加入状況を把握しておくことも大切です。
では、実際の額面での「平均年金月額」はいくらなのでしょうか。
厚生年金・国民年金「平均月額の額面」はいくら?
厚生年金+国民年金《平均月額の男女差・個人差》
厚生年金と国民年金を合わせた平均年金月額は、全体では15万289円でした。男女別は下記のとおりです。
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
国民年金《平均月額の男女差・個人差》
国民年金の平均年金月額は、全体では5万9310円でした。男女別は下記のとおりです。
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
65歳以上のリタイア世帯「月の生活費」は平均いくら?夫婦世帯・単身世帯
次に65歳以上のシニア世帯が毎月どのくらいの生活費で暮らしているのか、平均的なデータを確認します。
老後のお金について具体的にイメージするため、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支を見てみましょう。
「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支
「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の家計収支
65歳以上の夫婦のみの無職世帯:毎月の収入
- 収入合計:25万4395円
- うち社会保障給付(主に年金):22万8614円
65歳以上の夫婦のみの無職世帯:毎月の支出
- 消費支出:26万3979円
- 非消費支出:3万2850円
支出合計29万6829円
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合、ひと月の収入は25万4395円、その約9割の22万8614円を公的年金などの社会保障給付が占めています。
その一方で、支出の合計は29万6829円となっており、そのうち社会保険料や税などの「非消費支出」が3万2850円、いわゆる「生活費」にあたる消費支出が26万3979円でした。
平均では毎月約4万2000円の赤字となり、貯蓄の取り崩しなどでカバーすることが考えられます。
次は、総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」より、65歳以上の単身無職世帯のひと月の家計収支データを見ていきます。
65歳以上《単身》無職世帯ひと月の家計収支
65歳以上《単身》無職世帯ひと月の家計収支
毎月の実収入:13万1456円
■うち社会保障給付(主に年金):12万212円
毎月の支出:16万1435円
■うち消費支出:14万8445円
- 食料:4万2545円
- 住居:1万1416円
- 光熱・水道:1万5565円
- 家具・家事用品:6069円
- 被服及び履物:3049円
- 保健医療:8388円
- 交通・通信:1万3601円
- 教養娯楽:1万6132円
- その他の消費支出:3万1681円
- うち諸雑費:1万4052円
- うち交際費:1万6956円
- うち仕送り金:591円
■うち非消費支出:1万2990円
- 直接税:7072円
- 社会保険料:5912円
65歳以上《単身》無職世帯の家計は…
- ひと月の赤字:2万9980円
- エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合):28.7%
- 平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合):125.3%
65歳以上単身無職世帯のひと月の支出合計は16万1435円です。
内訳は、税金や社会保険料などの「非消費支出」が1万2990円、食費や住居費などの「消費支出」が14万8445円となっています。
一方で、ひと月の収入は13万1456円、その約9割(12万212円)は主に公的年金です。
また単身世帯は、平均で毎月2万9980円の赤字を抱えています。
将来の年金生活に備えるために
いかがでしたでしょうか。公的年金の受給金額は一律ではなく、現役時代の働き方によって大きく異なってきます。
年金のみで生活している高齢者世帯は41.3%となっており、多くの世帯では年金以外の備えが必要な状況にあることがわかりました。
私は現在、個人向け資産運用のサポート業務に従事しておりますが、これまでの経験から、将来に向けた資金計画を立てるには、まずご自身の年金情報について「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を改めて確認したうえでライフプランを考えてみることが第一歩だと実感しています。
ご自身の年金や貯蓄で老後の生活費をまかなえるのか家計の収支を確認し、今からどんな手段で備えていくか考えるきっかけとしていただければ幸いです。
参考資料
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格及びFP2級を保有。みずほ証券会社出身。証券会社では、個人向けコンサルティング営業に加え、地方公共団体や学校法人等への債券を活用した法人向け資産運用業務を経験。現在はIFAとして個人向け資産運用のコンサルティング業務を行う。
