国民年金の受給額はいくら?男女差と最多受給層を解説
厚生年金の加入期間がなかった人が受け取る、国民年金(老齢基礎年金)の月額について見ていきます。
国民年金の平均受給月額:全体・男女別の比較
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
平均年金月額には、男性と女性で約4000円の差が見られます。加入期間や保険料の納付状況の違いが、このような差につながっていると考えられます。
受給額の分布状況:月額階級別の国民年金受給者数
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の受給額は、6万円以上7万円未満の層が最も多く、満額に近い水準で受け取っている人が多いことがわかります。一方で、5万円未満の層も一定数おり、加入期間や保険料の納付状況によって受給額に幅がある点が特徴です。
国民年金は一律の金額ではなく、個々の加入履歴によって受け取る額が異なる仕組みとなっています。
65歳以上・夫婦のみ無職世帯のリアルな家計簿:1カ月の生活費は?
老後の生活費はどれくらいかかるのでしょうか。
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」より、65歳以上・無職夫婦のみ世帯の平均的な家計収支を見てみます。
65歳以上の生活費
収入の内訳:平均月収25万4395円
うち社会保障給付(主に年金):22万8614円
手取り収入(可処分所得):平均月額22万1544円
(収入)25万4395円ー(非消費支出)3万2850円=22万1544円
非消費支出:3万2850円
- 直接税:1万2547円
- 社会保険料:2万296円
支出の内訳:平均月額26万3979円
- 食料:7万8964円
- 住居:1万7739円
- 光熱・水道:2万3540円
- 家具・家事用品:1万1237円
- 被服及び履物:5354円
- 保健医療:1万7941円
- 交通・通信:3万1325円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万6538円
- その他の消費支出:5万1341円
- うち諸雑費:2万2047円
- うち交際費:2万3257円
- うち仕送り金:1135円
毎月の家計収支:赤字額の平均
- ひと月の赤字:4万2434円
※端数処理
毎月の収入(実収入)は25万4395円です。しかし、ここから税金や社会保険料などの「非消費支出(3万2850円)」が差し引かれるため、実際に生活費に回せるお金である「可処分所得(手取り額)」は22万1544円となります。
一方、毎月の消費支出は26万3979円。 手取り額(22万1544円)からこの支出を差し引くと、毎月4万2434円の赤字となります。
この不足分を、現役時代に蓄えた貯蓄を取り崩して補っているのが現代のシニア世代の実情でしょう。
なお、この調査結果で住居費が1万7739円と極めて低いのは、多くの世帯が「持ち家」であり、家賃負担がないことを前提としているためです。
賃貸住まいの方や住宅ローンが残っている方の場合は、この住居費分がそのまま赤字額に上乗せされます。
老後の住まいをどうするかは、現役時代から十分に検討しておく必要があります。
銀行の窓口では、数千万円の預金があるにもかかわらず、「毎月少しずつ残高が減るのを見ると不安で、エアコンをつけるのもためらってしまう」と話されるシニアの方にお会いすることが少なくありません。記事でも紹介したように、毎月の収支ばかりを気にしてしまい、不安を抱える方は意外と多い印象です。
現役時代の預金は将来に備えて「貯める」ことが中心でしたが、リタイア後は、安心して暮らすために「計画的に使う」ことも大切な役割になります。毎月4万円ほどの赤字であっても、十分な貯蓄を計画的に取り崩して生活するのであれば、必ずしも特別なことではありません。
大切なのは、毎月の収支だけで判断するのではなく、預貯金などの資産も含めて家計全体を見ることです。ご自身の資産状況を確認しながら、無理のないペースで取り崩していくことが、安心して老後を過ごすための一つの考え方といえるでしょう。
「年金だけでは日常生活費をまかなうのが難しい」と感じるシニアも
J-FLEC(金融経済教育推進機構)が2025年12月に公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、二人以上世帯では、60歳代の32.6%、70歳代の30.6%が「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答しています。
年金にゆとりを感じにくい背景とは
「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?
年金にゆとりがないと感じる理由としては、物価の上昇に加え、医療費や介護費の負担が増えていることなどが挙げられます。
また、完全にリタイアすると、多くの場合は現役時代より収入が少なくなります。そのため、生活費への負担を感じやすくなる方も少なくありません。
さらに、現役時代は毎月給与が支給されますが、公的年金は原則として偶数月に2か月分まとめて支給されます。収入が入るタイミングが変わるため、老後は年金の支給サイクルに合わせて家計を管理することも大切です。
毎月の生活費を把握し、無理のない範囲で支出をコントロールしていくことで、より安心して年金生活を送りやすくなるでしょう。
まとめ
本記事のデータが示す通り、65歳以上の無職世帯において、毎月の家計が赤字になることはごく一般的な実態です。
毎月の収支(フロー)の赤字に怯えて生活を切り詰めてしまうこともあるかもしれませんが、それはかえって健康リスクを高めてしまいます。
特に昨今の猛暑下では、過度な節電は熱中症等の引き金になりかねません。
大切なのは、世間の『苦しい』という漠然とした不安に同調することではありません。ご自身の保有する貯蓄額を正確に把握し、そこから『毎月いくらまでなら安全に取り崩せるのか』という現実的な計画を立てることです。
赤字を前提とした計画的な資金管理こそが、これからの長い老後を心豊かに過ごすためのポイントとなります。
参考資料
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三菱UFJ銀行出身。資産運用コンサルティングに従事し、全国表彰を多数受賞。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして年金・資産運用など金融分野の記事を精力的に企画・執筆・監修している。
PROFILE
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)保有。大学卒業後、株式会社三菱UFJ銀行にて窓口業務およびリテール営業に従事。国内外株式の仲介をはじめ、国内外債券、投資信託、生命保険、住宅ローンなど幅広い金融商品の提案・販売を担当し、資産運用コンサルティングに携わる。全国表彰を多数受賞。
金融業界で培った知識と実務経験を生かし、株式会社モニクルリサーチ(旧:株式会社ナビゲータープラットフォーム)に入社。現在は、くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」編集部にて、記事の企画・執筆・編集・監修を担当している。
厚生労働省管轄の公的年金制度(老齢年金・障害年金・遺族年金)や社会保障をはじめ、資産運用、NISA、iDeCo、住宅ローン、カードローン、為替、株式投資など、お金に関する幅広いテーマについて、制度の仕組みや最新動向をわかりやすく解説。金融機関での実務経験と金融ライターとしての知見を生かした記事を多数執筆し、Yahoo!ニュース経済カテゴリではアクセスランキング1位を多数獲得している。
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。
PROFILE
元・厚生労働省担当記者(社会保障専門紙)。中央大学法学部卒業後、東証プライム上場IT企業での法人営業を経て、厚生労働省記者クラブに所属する行政・自治体向けの社会保障専門紙記者として活動。現在は「公的社会保障(年金・医療・介護)」と「私的資産形成(NISA・iDeCo)」を横断的に分析するメディア編集者。
記者時代は厚労省本省や自治体を直接取材し、医療DXや診療報酬改定、年金財政検証などの政策決定プロセスに最前線で従事。「制度の複雑さが引き起こす、生活者の申請漏れや経済的損失」を実務レベルで痛感し、役所の難解な論理を生活者視点に翻訳する活動を志す。
IT企業時代に培ったデータ分析手法を掛け合わせ、平均値ではなく中央値を用いるなど、官公庁の統計データを客観的かつ論理的に読み解く解説記事が強み。特定の金融商品の推奨は一切行わず、公的年金の不足分を補う長期積立投資や定額減税などの要件を実務的に整理した記事は、Yahoo!ニュース「経済ランキング」で1位を多数獲得している。
発信理念は「知っていれば救われたはずの人が損をする現状をゼロにする」。読者が国に頼りすぎず、制度を賢く利用して家族と暮らしを守るための、事実に基づいた安全で実用的な家計防衛術を届け続ける。LIMOでも記事を執筆している。

【記者の視点】「生活が苦しい」に繋がる、フロー(毎月の収支)の呪縛
実は、貯蓄の中央値である1000万円以上の十分な貯蓄(ストック)を持っている世帯であっても、「生活が苦しい」と感じる傾向が強く見られます。その原因は、現役時代に染み付いた「毎月の収入(年金)の枠内で支出を収めなければならない」という固定観念にあります。
口座の残高が毎月少しずつ目減りしていく「フローの赤字」を過剰に恐れるあまり、電気代や食費を無理に切り詰め、結果として自ら「苦しい生活」を作り出してしまっているケースもありえます。
年金生活において、毎月数万円の赤字が出るのは統計データが示す通りの「標準仕様」です。老後のまとまった貯蓄は、まさにこの赤字を補填するために現役時代から準備してきたものです。
フローの赤字を過度に恐れる呪縛から抜け出し、「計画的に貯蓄を取り崩すこと」を自分に許可できるかどうかが、老後の幸福度を決定づける鍵となるでしょう。