この記事はここがポイント
- イオン中間決算、過去最高も6~8月期は営業減益・最終赤字。熊本地震損失は約42億円
- ヘルス&ウエルネス増益、食品小売3事業は物価高などで苦戦
- 株主優待オーナーズカード、100株1%・300株3%返金とラウンジ利用増
イオン<8267>は10月13日の大引け後、2027年2月期の第2四半期(中間期、2026年3~8月)決算を発表しました。
営業収益と営業利益は中間期として過去最高を更新しました。
ただ、中身を見ると、第1四半期(3~5月)に33.6%増だった営業利益は、第2四半期(6~8月)の3カ月に限ると前年同期を下回っています。
第2四半期には、7月28日に発生した令和8年熊本地震の影響も含まれ、同社は特別損失として「災害による損失」41億9,800万円を計上しました。
中間期は過去最高、ただし6~8月の3カ月は営業減益
イオンの2027年2月期中間期(2026年3~8月)の連結業績は、次の通りです。
- 営業収益:5兆9,041億5,700万円(前年同期比13.8%増)
- 営業利益:1,307億4,300万円(同10.7%増)
- 経常利益:1,082億9,200万円(同1.7%増)
- 中間純利益:133億2,100万円(同229.1%増)
営業収益と営業利益は、いずれも中間期として過去最高です。
営業利益が10.7%増えた一方、経常利益の伸びは1.7%にとどまりました。
営業外収益が減り、支払利息などの営業外費用が増えたためです。
反対に、純利益は229.1%増と大きく伸びています。
前年同期は総合金融事業の事業ポートフォリオ見直しに伴う特別損失を計上し、純利益が40億4,800万円にとどまっていたため、比べる起点が低くなっています。
一方、7月10日発表の第1四半期(3~5月)の数値を中間期から差し引くと、第2四半期(6~8月)の3カ月単体の業績は次のようになります。
- 営業収益:2兆9,621億7,600万円(前年同期比12.9%増)
- 営業利益:555億4,000万円(同▲10.2%)
- 経常利益:447億1,000万円(同▲23.5%)
- 純損失:▲4億8,800万円(前年同期は106億1,800万円の黒字)
営業収益は2ケタの伸びを保ったものの、第1四半期に前年同期比33.6%増だった営業利益は、第2四半期の3カ月ではマイナスに転じました。
累計の「過去最高」は、好調だった第1四半期の貯金に支えられた面があります。
伸びる成長事業と、苦戦する食品小売
増収増益の大きな流れは、同社が「利益成長ドライバー」と位置づけるヘルス&ウエルネス、ディベロッパー・エンターテイメント、アセアンがけん引したものです。
ヘルス&ウエルネス事業の営業利益は596億9,000万円で、前年同期から369億8,200万円増えました。
2026年1月にツルハホールディングスを連結子会社化し、前年同期には含まれていなかった同社グループの利益が加わったためです。
同社によると、ツルハグループの実績を除いた同規模での比較でも、営業利益は30.0%増えています。
ディベロッパー・エンターテイメント事業も、営業利益が542億4,700万円と132億3,600万円の増益でした。
一方、食品小売の3事業はそろって前年同期を下回りました。
- GMS事業:営業損失126億3,100万円(前年同期は2億2,500万円の営業損失)
- スーパーマーケット事業:営業損失1億7,600万円(前年同期は128億8,700万円の営業利益)
- ディスカウントストア事業:営業利益4億5,500万円(前年同期比87.7%減)
同社は、苦戦の外部要因として、前期の政府備蓄米影響等によるコメ特需の剥落、中東情勢等に伴うコスト上昇、物価高の長期化による節約志向の強まりを挙げています。
あわせて、価格政策と販促施策を自社の課題として挙げ、第2四半期以降は荒利率・客数ともに改善傾向にあるとしています。
下期は、トップバリュの拡販や販促施策の見直しに加え、2024年度下期と同規模の経費構造改革を実施する方針です。
熊本地震で「災害による損失」41億9,800万円を計上
第2四半期中の7月28日に発生した令和8年熊本地震では、「イオンモール熊本」(熊本県上益城郡嘉島町)で爆発事故が発生し、7人が亡くなりました。「イオンモール宇城」(熊本県宇城市)でも、崩落した天井の下敷きとなった来店客が亡くなっています。
同社は、外部専門家のみで構成する事故調査委員会を設置して原因究明を進めており、調査報告書は受領次第、開示するとしています。
業績面では、中間連結損益計算書に特別損失として「災害による損失」41億9,800万円(前年同期は600万円)を計上しました。
主に熊本地震による被害額で、当中間期末時点で入手可能な情報に基づく金額です。
このうち、連結子会社のイオン九州<2653>は、商品破損や設備修繕費などの震災関連費用17億4,500万円を特別損失として計上しています。
イオン九州は、中間期末時点で合理的に見積もることが難しい費用は、第3四半期以降に追加で計上する予定としています。
イオン九州単体の熊本県内35店舗(GMS内のサイクル専門店を除く)では、地震発生後に20店舗が臨時休業しました。
8月1日時点で6店舗、9月1日時点で2店舗まで減ったものの、休業が続く店舗は残っており、影響はなお続いています。
イオンが10月13日に公表した9月度の月次でも、1日以上臨時休業したイオン九州の12店舗と、営業を見合わせているイオンモールの2SCを除いて、既存店売上高の前年比を算出しています。
なお、災害による損失は特別損失として計上されるため、差し引かれるのは純利益の段階です。営業利益や経常利益は、この損失で押し下げられてはいません。
通期予想は据え置き、下期に求められる利益水準は?
通期の業績予想は、4月9日に公表した数値から変更していません。
- 営業収益:12兆円(前期比12.0%増)
- 営業利益:3,400億円(同25.7%増)
- 経常利益:2,900億円(同19.3%増)
- 純利益:730億円(同0.4%増)
中間期時点の進捗率は、営業収益49.2%、営業利益38.4%、経常利益37.3%、純利益18.2%です。
通期予想を達成するには、下期(9月~2027年2月)に営業利益で2,092億5,700万円が必要で、前期の下期実績(1,523億3,000万円)を37%超上回る水準になります。
上期の営業利益が通期に占める割合は、過去4期では41.5~46.9%でした。今期の38.4%は、この範囲を下回っています。
同社は、成長事業の伸びと食品小売の収益構造改革によって、通期予想の達成を目指すとしています。
配当は、中間7.5円(普通配当7円、記念配当0.5円)、期末7.5円(同)の年間15円を予定しており、中間配当は10月28日に支払いを始める予定です。
イオン<8267>の10月13日の株価
10月13日の終値は1,200円(前日比▲11円、▲0.91%)でした。
決算は同日の大引け後に発表されたため、株価の反応が表れるのは翌14日以降です。
主な指標は以下の通り。
PER(会社予想):45.49倍
PBR(実績):2.75倍
配当利回り(会社予想):1.25%
年初来高値:2,542円(1月5日)
年初来安値:1,190円(10月8日)
10月13日の終値は、年初来高値の47.2%の水準で、10月8日につけた年初来安値1,190円に近い位置にあります。
配当利回り(会社予想)は1%台前半のため、イオン株を保有するメリットは、配当よりも株主優待「オーナーズカード」をどれだけ使うかで大きく変わります。
イオンの年間チャート
株主優待「オーナーズカード」、100株と300株で何がちがう?
イオンの株式を100株以上保有すると、株主ご優待カード「オーナーズカード」が届きます。
カードを提示して買い物をすると、半年間の買い物金額に保有株数に応じた返金率をかけた金額が、半年ごとに還元されます。
対象となる買い物金額は、家族カードの利用分と合わせて半期100万円までです。
保有株数:返金率:イオンラウンジ(月間利用回数)
- 100~199株:1%:4回
- 200~299株:2%:4回
- 300~1,499株:3%:8回
- 1,500~2,999株:4%:16回
- 3,000~8,999株:5%:16回
- 9,000株以上:7%:16回
※イオンラウンジの利用回数は2026年5月1日からの条件
100株と300株の違いは、大きく2つです。
1つは返金率で、100株の1%に対し、300株では3%と3倍になります。
もう1つはイオンラウンジの利用回数で、100~299株の月4回に対し、300株以上では月8回に増えます。
返金率とラウンジの回数がそろって上がるのは300株からで、優待のメリットを実感しやすい区切りといえそうです。
支払いは現金のほか、WAON、イオンマークのカードでのクレジット払い、AEON Payなどが対象です(専門店など一部の会社・店舗では現金払いのみ)。
毎月20日・30日の「お客さま感謝デー」では、5%割引に加えてこの返金も受けられます。
3~8月の買い物分は10月に、9~2月の買い物分は4月に返金されます。
仮にイオン系列の店舗で月3万円、半年で18万円の買い物をする家庭なら、100株での返金は1,800円ですが、300株なら5,400円になります。
一方、10月13日の終値で計算すると、100株の購入に必要な資金は12万円、300株は36万円です。
株価が下がれば、その分だけ評価損も3倍になる点には注意が必要です。
このほか、イオンシネマではオーナーズカードの提示で優待料金になりますが(例:大人1,000円)、保有株数で差がつかない特典もあります。
次回の権利確定は2027年2月末
オーナーズカードの権利確定日は、毎年2月末日と8月末日です。
8月末の権利確定はすでに過ぎているため、これから株式を買う場合、次に対象となるのは2027年2月末の権利確定です。
2027年2月28日は日曜日のため、権利付き最終日は2027年2月24日、権利落ち日は2月25日になる見込みです。
新しく株主になった場合、オーナーズカードは権利確定日から約2カ月後に届き、利用できるのはカードが届いてからです。
カードが届く前の買い物は返金の対象にならない点にも注意が必要です。
優待の内容は変更される可能性があるため、公式サイトを確認してください。
記者コメント
今回の中間決算は、累計で見れば過去最高でも、6~8月の3カ月では営業減益・最終赤字という、数字の見え方が分かれる内容でした。
ヘルス&ウエルネスの増益はツルハホールディングスの連結子会社化による上乗せが大きく、GMS・スーパーマーケット・ディスカウントストアの食品小売3事業は、そろって前年同期を下回りました。
熊本地震の影響も、イオン九州は第3四半期以降の追加計上を予定しており、まだ金額が固まったわけではありません。
9月度の月次の時点で、イオンモールには営業を見合わせているSCもありました。
事故調査委員会の報告書は、同社が受領次第、速やかに公表するとしています。
通期予想の達成には、下期に前期の下期を37%超上回る営業利益が必要です。
下期の初月となる9月の月次では、イオンリテールの既存店売上高が前年同月比102.6%、イオンモールの既存モールの専門店売上高も同106.5%と前年を上回りました。一方、スーパーマーケット事業では、長雨などの天候不順が客足に影響したとしています。
一方、スーパーマーケット事業では、長雨などの天候不順が客足に影響したとしています。
食品小売の価格政策の見直しや経費構造改革が下期の数字にどこまで表れるか、第3四半期決算で確認しておきたいところです。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
