この記事はここがポイント
- トヨタ1Q決算は営業利益▲8.8%減益、最終利益は+75.6%増益。
- 直近1カ月の株価は2,800円台へ下落、予想PER10.5倍・実績PBR1.1倍の評価。
- 営業減益と最終増益の乖離を指摘、本業の営業利益回復が投資判断の要点。
トヨタ自動車<7203>(←銘柄コードをクリックすると株価チャートへ飛びます)の株価は10月2日、前日比▲2.34%(▲68.5円)の2,856.5円で取引を終えました。同じ日、TOPIXは▲0.99%の4,091.00ポイント、日経平均株価は▲0.94%の68,309.46円。市場全体が下げたなかでも、トヨタはそれを上回る下落となり、相対的に弱い一日でした。
トヨタ自動車のこの1カ月の株価を振り返る
では、直近1カ月の流れを振り返りましょう。トヨタの株価は、9月初旬に3,100円台をつけたあと上値が重くなり、9月を通じて3,000円前後でもみ合いました。その後じりじりと水準を切り下げ、足元は2,800円台まで下げています。方向感としては、緩やかに上値を切り下げる、やや軟調な1カ月でした。では、直近発表されていた1Qの業績は、どうだったのでしょうか。改めて振り返っておきましょう。
1Qは営業減益、ただし最終利益は大幅増益
8月4日に発表された2027年3月期第1四半期(IFRS・連結)は、営業収益が13兆5,254億円(前年同期比+10.4%)と伸びた一方、営業利益は1兆634億円(同▲8.8%)と減益になりました。本業の利益は、やや足踏みしています。
ところが、親会社の所有者に帰属する四半期利益は1兆4,770億円(同+75.6%)と大幅な増益となっています。税引前利益も+56.8%と伸びており、営業利益の減益とは対照的です。この差は、営業外の損益、たとえば金融収益や為替差益、持分法による投資利益などが大きく押し上げたことになります。つまり、最終利益の増加は本業の好調によるものというより、営業外の要因に支えられた面があるということです。
事業の中核は、ハイブリッド車を中心とした自動車事業に、販売金融を組み合わせた構成です。通期の会社計画は、営業収益54兆円(+6.5%)に対し、営業利益3兆4,000億円(▲9.7%)、親会社の所有者に帰属する当期利益3兆2,500億円(▲15.5%)と、営業・最終ともに減益を見込んでいます。1Qの最終増益は好スタートに見えますが、会社自身は通期では減益を計画している点に注意が要ります。配当は、前期の年95円から、今期は100円への増配を予想しています。
株価は市場より弱く、決算は「営業減益・最終増益」
トヨタの株価は、この1カ月で上値を切り下げ、10月2日は市場平均を上回って下落しました。一方、直近の決算は、営業利益が▲8.8%と本業は減益ながら、最終利益は営業外に支えられて+75.6%と大きく伸び、見かけと中身にねじれがあります。しかも会社の通期計画は、営業・最終とも減益です。
では、いまの株価は、この業績に対して割高なのか、割安なのか。次に、予想PERと実績PBRで確かめていきましょう。
予想PER約10.5倍・実績PBR約1.1倍をどう見るか
バリュエーションを確認します。会社予想の1株当たり当期利益(EPS)272.17円に対し、10月2日終値2,856.5円の予想PERは約10.5倍。時価総額(約41.7兆円)を親会社の所有者に帰属する持分(約37.3兆円)で割った実績PBRは約1.1倍です。会社予想の年間配当100円ベースの配当利回りは約3.5%となります。
予想PER約10.5倍は、市場平均(東証プライムでおおむね15〜20倍)と比べて低めで、PBRも1倍をわずかに上回る水準。数字のうえでは割高感はみえてきません。ただし、これは会社が通期で減益を計画していることや、自動車業界が関税・為替・EV競争といった不確実性を抱えていることの裏返しでもあります。
元機関投資家イズミダの視点:営業減益と最終増益の「ねじれ」を読む
私がこの決算でまず目を留めたのは、営業利益が減っているのに、最終利益が7割以上も増えている、というねじれでした。こういう状況では、数字の見出し(最終大幅増益)だけで「好調」と受け取るのは危ういことが多いです。本業の実力は営業利益に表れ、最終利益は為替や金融収益といった営業外で大きく振れます。会社自身が通期で営業・最終とも減益を計画しているのも、本業の地力を冷静に見ている表れとみています。
株式投資は「なんでも鑑定団」と同じで、勝負は値決めです。予想PER約10.5倍・実績PBR約1.1倍という控えめな評価は、割安の裏に、減益計画や業界の不確実性という理由が隠れています。目先の最終増益やPERの低さに飛びつくのではなく、本業の営業利益がどこで底を打ち、再び伸びに転じるかを追っていきたいと考えています。もっとも、前提しだいで評価は変わりますので、四半期の数字だけで判断しないことが肝心です。
免責事項
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株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
