ソニーグループとパナソニックホールディングス、2026年3月期の営業利益率は11.6%と2.9%。株価の下押しと事業構成の差が示すもの
360b/shutterstock.com
執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
18:30
ソニーグループとパナソニックホールディングス、2026年3月期の営業利益率は11.6%と2.9%。株価の下押しと事業構成の差が示すもの
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多角化した会社ほど業績はぶれにくい。そう言われることは多い。だが、事業をいくつも抱えることと、利益が安定して出ることは、必ずしも同じではない。ソニーグループ<6758>の株価は昨秋から水準を切り下げ、春先にいったん底をつけた。その足取りを、同社の事業構成という角度から見直してみたい。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

昨秋の高値から3割強を削り、また戻した株価の道筋

出所:各種資料をもとに筆者作成

ソニーグループの月末終値は、2025年10月末に4,300円台だった。翌11月末には4,500円台まで切り上がっている。2025年10月末以降の月末終値では、ここが最も高い水準になる。

そこからの下げは速かった。12月末は4,000円台、年が明けた1月末には3,400円台まで落ちている。2か月で水準が一段変わった形だ。

2月末は3,600円台へ戻した。しかし続く3月末は3,200円台、4月末は3,100円台と再び下押しした。昨秋の高い水準からは3割強を削った計算になる。直近11か月の月末終値では、この4月末が最も低い。

もっとも、そこからの戻りも鈍くはなかった。5月末は3,400円台、6月末は3,200円台といったん足踏みしたものの、7月末は3,700円台、8月末は4,000円台まで水準を回復している。

そして2026年9月時点の終値は3,600円台。8月末からは再び水準を落としている。

下げ一色でも上げ一色でもない。大きく削られてから半分ほど戻し、また押し戻された。この11か月の値動きを一言でまとめるのは難しい。ボラティリティ(株価の日々の値動きの激しさ)の高さが、そのまま形になったような推移だ。

株価がなぜこう動いたのかを、一つの材料で説明するのは無理がある。相場全体の地合いや為替、半導体関連への資金の出入りなど、外側の要因も絡む。ただ、業績そのものが崩れた形跡は見当たらない。株価と業績の方向がしばらく揃わなかった期間、と整理しておくのが妥当だろう。

営業利益1兆4,475億円。増益と株価下落が同居した1年

株価が削られていた期間、業績のほうはどうだったのか。

2026年3月期の売上収益(IFRS)は12兆4,796億円で前期比+3.7%、営業利益は1兆4,475億円で+13.4%だった。増収増益で着地している。

営業利益率は11.6%。2024年3月期の10.7%、2025年3月期の10.6%から切り上がった。5期を並べると、2022年3月期の12.1%から2025年3月期にかけてゆるやかに低下し、直近で反転した形になる。

ROE(自己資本利益率)は15.6%、自己資本比率は51.8%である。

翌期に入っても数字の勢いは続いている。2027年3月期1Qの売上収益は2兆8,377億円、営業利益は4,764億円だった。

会社は通期の営業利益を1兆7,200億円と見込む。期初に示していた1兆6,000億円から引き上げた水準である。この計画どおりに進めば、2026年3月期の実績からさらに2割近い増益になる。

つまり、株価が昨秋から春先にかけて3割強を削っていた間、会社の利益は減るどころか増え、計画はむしろ上方に動いていた。業績と株価の方向が揃わない局面が、それなりの長さで続いたことになる。

このズレをどう読むか。一つの見方は、市場が単年の利益額ではなく、利益の中身と持続性を値踏みしていたというものだ。増益の事実だけでは、株価の判断材料として足りなかった可能性はある。

だとすれば、見るべきは総額ではない。その利益がどこから出ているかだ。

ゲームが売上の4割弱。それでも利益の半分は別の事業から出ている

2026年3月期のセグメント別に分けてみよう。

売上収益で最も大きいのはゲーム&ネットワークサービスで、4兆5,700億円。全体の36.6%を占める。ソニーグループをゲームの会社として思い浮かべる読者は多いだろう。売上の構成だけを見れば、その印象は外れていない。

ところが営業利益に目を移すと、絵が変わる。

ゲーム&ネットワークサービスの営業利益は4,632億円、利益率は10.1%にとどまる。これに対して音楽は売上収益2兆905億円に対して営業利益4,469億円、利益率21.4%。イメージング&センシング・ソリューションは売上収益2兆590億円に対して営業利益3,573億円、利益率17.4%である。

音楽とイメージング&センシング・ソリューションを足しても、売上構成では全体の3分の1ほどにすぎない。それでいて、報告セグメントの営業利益合計の半分強をこの二つが生んでいる。

伸びているのもこの二つだ。音楽は増収14.9%・営業増益25.1%、イメージング&センシング・ソリューションは増収20.2%・営業増益36.8%だった。

一方でエンタテインメント・テクノロジー&サービスは減収7.5%・営業減益16.9%、映画は営業減益10.6%と沈んでいる。

売上の顔と、利益の顔が違う。しかも利益の顔のほうが伸びている。ソニーグループの事業構成を語るとき、この非対称を外すと話が合わなくなる。

7つの事業がどれも1割台。パナソニックの均等に散った売上構成

ここで比べたいのがパナソニックホールディングス<6752>だ。同じ電気機器に分類され、複数の事業を並行して抱える点で、ソニーグループと並べやすい。2026年3月期の売上収益は8兆487億円で、ソニーグループの6割強の規模になる。

セグメント別を見ると、様子がずいぶん違う。

売上収益が最も大きいコネクトで1兆3,206億円、構成比16.4%。以下、Smart Lifeが1兆2,501億円で15.5%、HVAC&CCが1兆1,496億円で14.3%、インダストリーが1兆1,175億円で13.9%、Electric Worksが1兆805億円で13.4%、エナジーが9,409億円で11.7%と続く。

最大の事業でも全体の2割に届かない。最小でも1割を超える。7つの事業がほぼ横一線に並んでいる。

ソニーグループの最大セグメントが36.6%を占めていたのと比べれば、散らばり方の差は明らかだろう。売上構成という一点だけを取り出せば、多角化の度合いはパナソニックホールディングスのほうが高い。

では利益はどうか。

コネクトの営業利益は1,000億円で利益率7.6%、エナジーは697億円で7.4%、Electric Worksは576億円で5.3%。インダストリーは404億円で3.6%、HVAC&CCは231億円で2.0%、そしてSmart Lifeは▲373億円の営業赤字だった。

最も高いもので7.6%、そこから下は一桁の前半に沈み、ひとつは赤字。ソニーグループの音楽が21.4%、イメージング&センシング・ソリューションが17.4%だったことを思い返すと、利益率の分布そのものが別の階層にある。

分散させても利益はならされない。3期の利益率が語るもの

事業を分散させれば業績はならされる。一般にはそう受け止められやすい。だが両社の数字は、必ずしもそのとおりになっていない。

ソニーグループの営業利益率は、2024年3月期が10.7%、2025年3月期が10.6%、2026年3月期が11.6%。3期を通じて10%台の前半から半ばに収まっている。

パナソニックホールディングスは2024年3月期が4.2%、2025年3月期が5.0%、2026年3月期が2.9%だった。水準が低いだけでなく、上下の振れが大きい。

売上構成が集中しているほうが利益率は安定し、均等に散っているほうが振れている。分散が安定を生むという理解とは、順序が逆になっている。

出所:ソニーグループ株式会社およびパナソニックホールディングス株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

なぜこうなるのか。

売上を散らしても、それぞれの事業が同じ方向の圧力を受けていれば、分散の効果は出にくい。パナソニックホールディングスの7事業は、売上の大きさこそ揃っているが、いずれも利益率は一桁にとどまる。厚みのある事業が一つもないため、どこかが崩れたときに支える力が働きにくい。

投資の配分も均等ではない。2026年3月期の設備投資は全社で6,291億円だが、このうちエナジーだけで4,341億円を占める。売上構成では最も小さい事業に、投資の7割近くが向かっている。売上は散らばり、資本は一点に寄る。そういう形になっている。

ソニーグループはその逆に近い。売上はゲームに寄っているが、利益率21.4%の音楽と17.4%のイメージング&センシング・ソリューションという厚い層を持つ。ゲームの利益率が10.1%でも全社が11.6%まで持ち上がるのは、この構造による。

もっとも、パナソニックホールディングスの足元が反転していないわけではない。2027年3月期1Qの営業利益は1,824億円で、前年同期比+110.0%だった。会社は通期の営業利益を5,900億円と見込んでおり、前期比+149.6%の水準になる。ソニーグループの1Qが4,764億円だったことを踏まえれば差はなお大きいが、方向は上を向いている。

電気機器182社の中央値に置くと、両社の立ち位置が見えてくる

二社だけを並べると、どちらが良いかという話に落ちてしまう。第三の物差しを置いてみよう。

電気機器182社の2026年3月期の営業利益率は、中央値が6.7%、上位四分位が11.4%、下位四分位が3.5%である。

ソニーグループの11.6%は、上位四分位をわずかに超える。業界の中でも上の層に立ってはいるが、飛び抜けているわけではない。パナソニックホールディングスの2.9%は下位四分位を下回る。

ROEも同じ形だ。業種の中央値は7.7%、上位四分位が12.0%、下位四分位が3.7%。ソニーグループの15.6%は上位四分位を明確に超え、パナソニックホールディングスの3.8%は下位四分位のあたりに位置する。

つまり両社の差は、二社間の優劣にとどまらない。業種全体の中で、上の層と下の層に分かれて立っている。

ただし、揃っている数字もある。自己資本比率はソニーグループが51.8%、パナソニックホールディングスが51.2%とほぼ並ぶ。業種の中央値62.2%に対しては、両社とも下回っている。

規模の大きい2社が業種の中央値ほど自己資本を厚く持っていない。この点は少し意外に映るかもしれない。もっとも、負債を使える会社が使うこと自体は、資本効率の面で理にかなう場面もある。自己資本比率の低さを、そのまま弱さと読む必要はないだろう。

売上の散らばり方と、利益率の振れ方。この二つを並べて見ると、多角化という言葉が二通りの意味で使われていることに気づく。

一つは、収入源を増やすという意味。もう一つは、稼ぐ力の性質が異なる事業を組み合わせるという意味だ。前者は事業の数で測れるが、後者は数では測れない。

ソニーグループの事業構成が面白いのは、売上の集中と利益の分散が同時に起きている点にある。売上では一つの事業に寄りながら、利益では性質の違う複数の柱が働いている。多角化企業と聞いて思い浮かべる形とは、少し順番が違う。

だとすれば、同社を追うときに見るべきは、最大セグメントの売上がどう動いたかではない。利益率の厚い層が全体の中で占める比重を、どう変えていくかのほうだ。

四半期ごとの売上の増減に目を奪われず、利益の出どころの構成比を追う。そういう見方をおすすめしたい。

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