この記事はここがポイント
- イビデンは2026年9月30日基準日で1株を2株に株式分割を発表
- 1Q決算での大幅増収増益と通期業績の上方修正
- 稼ぎ頭の電子事業が生成AI向け基板需要を牽引、全社利益の約8割を占める要因
イビデン<4062>の株価は4日、前日比+755円(+3.83%)高の20,475円で取引を終えました。
半導体関連株の値動きが荒い展開が続くなか、同社は8月4日の大引け後に2027年3月期第1四半期決算と通期業績予想の上方修正、1株を2株にする株式分割をまとめて発表し、これを受けて翌8月5日はストップ高まで買われました。
あれから1カ月近くが経ったいま、決算の中身をあらためて振り返りながら、同社の稼ぎ頭がどの事業にあるのかをひも解いていきます。
1Q決算は大幅増収増益、修正前計画への進捗率は3割前後に
8月4日の大引け後に発表された2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算では、売上高1,232億円(前年同期比+26.4%)、営業利益268億円(+52.4%)、経常利益274億円(+57.8%)、純利益179億円(+40.8%)と、いずれも大きく伸びました。
修正前の通期計画(売上高5,000億円、営業利益・経常利益とも900億円、純利益580億円)に対する進捗率で見ると、営業利益29.8%、経常利益30.4%、純利益30.9%と、四半期の単純な目安である25%を大きく上回るペースでした。この好進捗が、次に触れる通期業績予想の大幅な上方修正につながったとみられます。
なお、上方修正後の新たな通期予想(売上高5,500億円、営業利益・経常利益とも1,270億円、純利益840億円)に対する進捗率は、売上高22.4%、営業利益21.2%、経常利益21.6%、純利益21.3%となっており、目標そのものが引き上げられたことで見かけ上の進捗率は低くなっています。
8月5日の株価急伸は1Q決算単体への反応というより、この好進捗を受けた通期上方修正、そして株式分割が同時に発表されたことによる複合的な反応とみられます。
稼ぎ頭は電子事業、生成AI向け基板需要が牽引
決算を項目別に見ると、稼ぎ頭となっているのは電子事業です。売上高775億円(+37.7%)、営業利益213億円(+52.4%)と、全社の営業利益268億円のうち8割近くをこの1事業で稼ぎ出しています。
同社によれば、生成AI用サーバーおよび汎用サーバー向けの高機能ICパッケージ基板の受注が堅調に推移したことに加え、前期(2026年3月期)から量産を開始した大野事業場の生産が安定してきたこと、そして円安が業績を押し上げたことが背景にあります。
自動車部品などを含むセラミック事業も売上高243億円(+24.3%)、営業利益32億円(+53.6%)で、半導体製造装置向け特殊炭素製品(FGM)の需要回復やEVバッテリー用安全部材の販売数量増加が寄与しました。その他事業(建設・樹脂加工など)は売上高213億円(▲1.1%)とわずかに減少した一方、法面・造園事業の大型施工が堅調だったことから営業利益は22億円(+48.9%)と増えています。
通期業績予想を上方修正、押し上げの主役はやはり電子事業
同社は決算発表と同時に、2027年3月期通期の業績予想を上方修正しました。売上高は5,000億円から5,500億円へ10.0%、営業利益は900億円から1,270億円へ41.1%(前期実績620億円に対しては2.0倍)、経常利益も900億円から1,270億円へ同じく41.1%(前期実績608億円に対しては2.1倍)、純利益は580億円から840億円へ44.8%の上方修正となりました。純利益840億円は前期実績637億円に対して+31.8%の増益予想です。
このうち電子事業の営業利益予想は、5月時点の750億円から今回1,100億円へ引き上げられました。会社資料によれば内訳は、製品の販売価格・構成の改善で265億円、販売数量の増加で30億円、為替差で20億円、生産性改善で35億円としており、今回の上方修正の大部分を稼ぎ頭である電子事業の上振れが占めている形です。
なお、前期実績の純利益637億円には政策保有株式の売却益345億円(税引後換算)という一時的な要因が含まれています。これを除いた実質ベース(637億円-345億円=292億円)と比較すると、今回の純利益予想840億円はおよそ2.9倍に相当し、単純な+31.8%という数字以上に、本業の実力による伸びが大きいことがうかがえます。
セグメント別に見た通期の伸び方は一様ではなく、会社資料ではセラミック事業は上半期から下半期にかけて減収減益、その他事業は逆に増収増益を見込んでいるとしています。
前期・今期2期連続、1年足らずで2回目の株式分割
決算と同じ8月4日、同社は株式分割も発表しました。2026年9月30日を基準日として普通株式1株を2株に分割し、効力発生日は2026年10月1日です。同社は2026年1月1日にも同じ比率の株式分割を実施していますが、これは前期(2026年3月期)に属する分割で、今回は今期(2027年3月期)に属する分割です。
暦年でみると2026年内の出来事が続いていますが、決算期でいえば前期・今期にまたがる2期連続、実施間隔でみると1年に満たない期間での2回目の分割になります。9月1日時点で基準日まで1カ月を切っており、分割後の株数を意識した売買が今後増えてくる可能性があります。
分割にあわせて2027年3月期の期末配当予想も見直されました。中間配当15円(分割前の株数ベース)に、期末配当10円(分割後の株数ベース。分割前の株数に換算すると20円相当)を合わせると、年間35円相当となり、従来予想の35円から変わりません。
分割後の株数を基準とした期末配当だけを見ると20円から10円に変更されていますが、これは分割比率に合わせた換算によるもので、実質的な減配ではありません。配当方針自体も1株当たりのベース額を20円から10円に変更していますが、これも分割比率に合わせた調整であり、実質的な方針変更ではありません。
バリュエーション評価:株式分割を控えた今の株価水準は
9月4日終値の20,475円をもとにした指標では、PER(会社予想、連結)は68.10倍、PBR(実績、連結)は10.04倍、配当利回り(会社予想)は0.17%となっています(1株配当は35.00円を予想、分割前の株数換算)。
決算・上方修正・分割の発表を好感して8月5日にストップ高(+24.49%、20,330円)まで買われましたが、9月4日終値の20,475円はそれをさらに上回る水準にあります。
それでも7月1日につけた上場来高値27,480円までは届いておらず、年初来安値6,592円(1月9日)と比較すると、株価はすでに大きく上昇した水準にあることがわかります。
イビデンの年間チャート
記者コメント
今回の上方修正・分割はいずれも同社が公表済みの事実です。ただし、通期目標そのものが今回の上方修正で引き上げられており、今後の四半期でも同水準の進捗を維持できるかが問われる点には留意が必要です。
短期間で急激に買われた株は材料が出尽くしたとみられた段階で利益確定売りが出やすく、10月1日の株式分割の効力発生に向けた需給面での変化(売買単位の株価が下がることによる個人投資家の参加増加など)も株価に影響する可能性があります。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
