7月を迎え、本格的な夏の暑さが続く時期となりました。6月に改定された新しい年金額が口座に振り込まれ、ご自身の「実際の受給額」を改めて実感し、将来の家計バランスに思いを巡らせている方も多い季節です。
私はかつて専門紙の記者として社会保障制度について最前線で取材してきました。
各省庁が公表する難解な一次データと日々向き合う中で強く感じるのは、国が発表する「平均受給額」というマクロな数字と、生活者が直面するミクロな「手取り額」の間には、現役時代の働き方によって生じる残酷なほどの個人差が存在するという事実です。
一部の富裕層や、特定のライフコースを歩んだ人の数字が混ざった平均額を見て、ご自身の状況に一喜一憂する必要はありません。本記事では、官公庁の統計データをもとに、60代から90代における国民年金と厚生年金の平均月額や、1万円単位のリアルな受給額分布を一覧化します。
さらに、ライフコース別のモデルケースや年金依存度の実態を紐解き、役所の数字に振り回されずにご自身の家計を守るための客観的な視点を提供します。
日本の公的年金制度(2階建て構造)の基本設計
まずは年金のしくみについて解説します。
公的年金は、基礎部分となる「国民年金」と上乗せ部分にあたる「厚生年金」から成り立つ、いわゆる2階建て構造です。下の図をイメージするとわかりやすいでしょう。
厚生年金と国民年金の仕組み
下にある国民年金には、原則として「国内在住の20歳以上60歳未満の全ての人」が加入します。ちなみに、国民年金保険料(※1)は全員一律です。
上乗せとなる厚生年金には、企業や官公庁などで働く人たちが加入しますす。毎月の給与や賞与に応じた年金保険料(※2)を納めるため、個人差があるのが特徴です。
では、将来もらえる「年金額」はどのように決まるのでしょうか。
まず国民年金の場合、国民年金保険料を全期間(480月)納めれば、65歳以降で満額(※3)の老齢基礎年金を受け取ることができます。逆に未納期間等があった場合は、その月数に応じて満額から差し引かれるしくみです。
厚生年金の場合、「年金加入月数」と「納めた保険料」に応じた老齢厚生年金額が決まります。一般的には長く働いた人、たくさん稼いだ人が多くの年金をもらえることになります。
※1 国民年金保険料:2026年度は月額1万7920円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※3 国民年金の満額:2026年度は月額7万608円
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。
