この記事はここがポイント
- 50年ローンは総返済額が約2倍、35年ローンより約2000万円増。
- 月々返済額は35年ローンより約2.5万円減、家計負担軽減の選択肢。
- 変動金利1%上昇、35年超ローン利用者が23.4%に急増。
住宅価格の上昇と金利の正常化が同時進行するなか、住宅ローンの選び方に不安や悩みを感じる方が増えています。
筆者は元銀行員として住宅ローンの相談を受け付けてきましたが、かつては「変動金利で低く抑える」「35年ローンで組む」といった選択が一般的であったのに対し、足元では返済期間を50年に設定する超長期ローンを選ぶ人も出てきました。
ここでは、直近の住宅ローン金利動向と50年ローンのメリット・デメリットについて解説します。
変動金利もついに「1%」超えの時代に
2026年7月現在、メガバンク3行の住宅ローン金利動向は次のとおりです。
- 変動金利:0.945~1.275%程度
- 固定金利(35年):3.84~5.12%程度
かつて変動金利は0.3〜0.5%台で推移していた時期もありましたが、日本銀行の金融政策の正常化に伴い、足元では1%前後まで上昇しています。固定金利との差は依然として大きいものの、変動金利を選んでも「ほぼゼロ金利」という時代は終わりを迎えています。
「35年超」のローンを選ぶ人が23.4%へ急増
住宅金融支援機構の調査によると、返済期間を35年超とする人の割合は2023年10月調査では12.6%であったのに対し、2026年1月調査では23.4%となっています。
返済期間
住宅価格の高止まりと金利上昇が重なる中で、月々の返済額を抑えるために返済期間を長く設定する動きが広がっていることがわかります。
元銀行員が考える50年ローンのメリット
筆者が銀行員として勤務していた低金利時代は、変動金利の金利水準が非常に低く、「変動金利一択」ともいえる状況でした。しかし、住宅価格の高騰が続く中で、50年ローンを取り扱う金融機関も増えてきました。
「50年も返し続けるのか」と不安に感じる方もいるかもしれません。しかし、元銀行員の筆者としては、返済期間を長くして月々の負担を抑えながら、手元の資金を生活費や教育費に充てる考え方も十分合理的だと考えています。
特に住宅価格が高騰している中では、月々の返済額を抑えることが家計の安定につながるケースも少なくありません。
ここで、5000万円を借り入れるケースをシミュレーションしてみましょう。
<共通条件>
- 借入金額:5000万円
- 返済方法:全期間固定・元利均等返済
<プラン1(35年ローン)>
- 借入期間:35年
- 借入金利:3.250%
- 毎月の返済額:19万9468円
<プラン2(50年ローン)>
- 借入期間:50年
- 借入金利:3.430%
- 毎月の返済額:17万4374円
返済プラン比較シミュレーション
この条件でシミュレーションした結果、50年ローンの毎月返済額は35年ローンと比べて約2万5000円少なくなりました。年収に対して借入額が大きくなりがちな若年層にとって、毎月の返済額を抑えられる点は大きなメリットといえるでしょう。
総返済額は場合によって2000万円以上増加することも!50年ローンに潜む注意点
ただし、50年ローンでは総返済額が増える点に注意しなければなりません。先ほどのシミュレーション結果によると、総返済額と利息は次のとおりです。
<プラン1(35年ローン)>
- 総返済額:8377万6671円
- うち利息額:3377万6671円
<プラン2(50年ローン)>
- 総返済額:1億462万4621円
- うち利息額:5462万4621円
返済プラン比較シミュレーションの総支払額
50年ローンは借入金額5000万円に対して総返済額が約1億462万円となり、借入金額のほぼ2倍を返済することになります。35年ローンと比べて毎月の返済額は約2万5000円少なくなるものの、総返済額は約2085万円多くなる計算です。
「毎月の負担は抑えられるけど、長い目で見ると利息の負担が大きくなる」という点は理解しておく必要があるでしょう。
また、金利の変動リスクについても留意が必要です。先ほどのシミュレーションでは分かりやすいように固定金利で試算しましたが、50年ローンを取り扱う民間の金融機関では変動金利型が主流となっています。
そのため、金利が変動するリスクが長期に及ぶこととなり、将来的な金利上昇によって返済額が増加するリスクについても考慮しておく必要があります。
まずは長期のライフプランを立ててみよう
マイホームは、人生で最も高いお買い物の一つです。筆者が銀行員時代、目の前で「どのプランが正解なのだろう」と悩まれるお客様を数多く見てきました。それだけ真剣に向き合うべき大切な決断ですので、迷って当然です。月々の返済額だけに目を向けず、総返済額や完済時の年齢、将来の家計収支も含めて長期的な視点で検討し、ご家族でゆっくりと納得のいく住宅ローン選びをしてくださいね。
住宅ローンは、金利や借入期間だけで決まるものではありません。何歳まで働くか、住み替えの可能性があるかといったライフプランも借り入れ方に大きく影響します。たとえば、定年後も返済が続く場合は退職金や年金でまかなえるかどうかの試算も必要です。
監修者コメント
ファイナンシャルプランナーとしてお客様と住宅ローンのお話をする機会がよくありますが、大切なのは借りること自体ではなく「借りた後の生活」です。無理のない返済計画を立てるためにも、まずはその新しい家でどんな風に暮らしていきたいか、少し先の未来を具体的にイメージしてみてはいかがでしょうか。
参考資料
大学卒業後、銀行に10年間勤務。個人・法人営業として投資信託や保険等の提案・販売に従事。現在はその経験を活かし、金融専門ライターとして活動中。2級FP技能士など保有。
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
