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「10年固定」で運用したいなら地方債しかない?8月の発行条件から見る、個人向け国債にはない選択肢とは

「スプレッド」と「表面利率」は何が違う?仕組みを押さえておけば、9月の新発地方債・個人向け国債選びにも迷わない

執筆者高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者
15:31

10年物地方債:利率は「2.9%台後半〜3.0%台前半」のレンジで安定

地方債市場では、機関投資家が指標にする国債への上乗せ幅(スプレッド)が+20bp(0.20%)で7月から横ばいが続いており、市場はすでに2%台後半から3%台にかけての長期金利を織り込んだ水準で安定しています。

個人投資家にとって最も重要な「実際の利率(表面利率)」に注目すると、8月の10年物地方債(個別債)は、以下の通り2.9%台後半〜3.0%台前半の利回りとなっています。

【利率の下限】2.979%(北海道、新潟県、愛知県)
【利率の上限】3.042%(京都市)

北海道・新潟県・愛知県は条件決定日(8月7日)が同じ3自治体で、利率もぴったり2.979%にそろっており、横並びのスプレッドで決まっていることがうかがえます。

また、複数の自治体が共同で発行する「第281回 共同発行市場公募地方債(10年)」についても、表面利率は3.019%となっており、上記の下限・上限の範囲内にしっかりと収まっています。

10年物の地方債を狙うなら、この水準が現在の大きな目安となります。

8月の発行要項(個人向け国債)

  • 変動10年(第197回):初回適用利率1.87%(7月の1.80%から+0.07%)
  • 固定5年(第185回):2.06%(7月の1.95%から+0.11%)
  • 固定3年(第195回):1.71%(7月の1.56%から+0.15%)
  • 募集期間:2026年8月6日〜8月31日
  • 発行日:2026年9月15日
  • 最低購入単位:1万円(1万円単位)
  • 元本・利子:国が保証、最低利率0.05%を保証

固定5年・固定3年の上昇幅(+0.11%、+0.15%)が変動10年の上昇幅(+0.07%)を上回りました。

個人向け国債と地方債の条件一覧表(8月)

個人向け国債と地方債の条件一覧表(8月)
出所:各データより筆者作成1/1

地方債と個人向け国債、10年で選ぶなら

個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3タイプしかなく、10年間利率を固定するタイプは存在しません。10年間、決まった利率で運用したいと考える場合、個人向け国債の変動10年では半年ごとの利率変動リスクを受け入れる必要があり、「10年固定」を実現する選択肢は地方債(や社債)に限られてきます。

税引後(20.315%の源泉徴収後)の年間利息を100万円あたりで比べると、共同発行地方債(表面利率3.019%)は約2万4,057円、個人向け国債変動10年(初回利率1.87%)は初回時点で約1万4,901円となり、単純計算では地方債の方が高くなります。ただし変動10年は今後の利率見直しで差が縮まる可能性があり、単年度の数字だけで優劣を決めつけることはできません。

地方債投資で気を付けたいポイント

価格変動リスク:満期まで保有すれば額面(100円)で償還されますが、途中で売却する場合は市場価格次第で元本割れとなる可能性があります。個人向け国債は発行後1年が経過すればいつでも国が買い取ってくれるため、この点は明確な違いです

流動性リスク:地方債はもともと機関投資家向けが中心の商品で、発行額の一部を証券会社がそのときどきで個人向けに取り分けているに過ぎません。人気の銘柄は早期に窓口の販売枠がなくなることがあります

信用リスク:発行体である自治体が財政破綻するリスクは極めて低いとされますが、ゼロではありません

税金・NISA:地方債の利子は20.315%の申告分離課税の対象で、NISA(成長投資枠)の対象外です。個人向け国債も同様に課税対象で、NISA対象外という点は共通しています。もっとも、国債に関しては税制優遇制度の導入を求める声も上がっており、今後の動きに注目です

記者コメント

8月は地方債・個人向け国債ともに利率が上昇し、債券投資であらためて存在感を示す月になりました。

地方債の利率は、国債金利への上乗せ幅(スプレッド)を基準に決まります。多くの自治体では横並びで設定されますが、高い信用力を誇る東京都や、独自の入札方式を採用する大阪府などは例外です。自治体間で利率に差が生じる最大の要因は、条件決定のタイミングによる国債金利の変動である点を理解しておく必要があります。

少しでも高い利回りを狙いたい場合は、事前にどの銘柄が得かを予測しようとするのではなく、条件決定後に個人向けに販売されているラインナップの中から利率を確認して選ぶ、という姿勢が現実的といえるでしょう。

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高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者

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