執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
07:20

2027年3月期1Qの決算に、事業の偏りはどう表れたか

連結の1Qは売上収益5,435億円(前年同期比+11.3%)。売上総利益は1,100億円、事業利益は357億円で、前年同期の205億円から+74.3%となった。

税引前四半期利益は347億円(同+106.8%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は156億円(同+269.0%)。上の段階よりも下の段階の伸びが大きい。

金融収益が前年同期の6億円から53億円へ膨らんだことが効いている。持分法による投資利益も61億円から75億円へ増えた。

本業の外側の項目が最終利益を押し上げる形は、再現性という点では割り引いて見ておきたい。

会社は2027年3月期の通期予想を売上収益2兆5,600億円(前期比+10.8%)、当期利益1,150億円(同+6.3%)としている。1Qの親会社帰属利益156億円は、この予想に対して13%台の進捗だ。

四半期を均した水準からは遅れている。ただ同社の事業構成では期後半に引き渡しが寄る部門が複数あり、進捗を直線で読むのは効きにくい。

過去5期の当期利益を並べると、2022年3月期126億円、2023年3月期530億円、2024年3月期253億円、2025年3月期880億円、2026年3月期1,081億円。上下に振れながら、水準そのものは切り上がってきた。

ROE(自己資本利益率)は2026年3月期で13.7%。輸送用機器76社の中央値6.1%を大きく上回り、純利益率も4.7%で中央値3.9%の上にある。

利益の水準は業種の中で厚いほうに位置している。問題はその厚みがどの部門から来ているかで、そこが冒頭の構図に戻ってくる。

1,900億円超の資金調達と自己資本比率27%台。市場は何を織り込んだのか

財務の側には、重厚長大のイメージとは逆向きの緊張がある。

2026年3月期末の自己資本比率は26.4%。輸送用機器の中央値53.2%の半分程度で、業種内の下位25%にあたる43.0%も下回る。1Q末は27.1%だ。

長い納期の事業を回すために運転資本が膨らみやすく、そのぶん負債に依存する構造だと読み取れる。

その財務に、この夏大きな動きがあった。会社は海外募集による新株式を1株2,609円で発行し、発行価格の総額は974億円。あわせて2031年満期と2033年満期のユーロ円建転換社債型新株予約権付社債を、それぞれ額面500億円で発行している。

合計で1,900億円を超える調達だ。使途も具体的に開示されている。

新株式の手取概算額約924億円は、2029年3月末までに生産基盤の設備投資へ充てる予定だという。会社が挙げているのは、民間航空機と航空エンジンの岐阜・名古屋・西神・明石の各工場、ガスタービンの明石工場、半導体製造装置向けロボットの西神戸工場、そして液化水素運搬船やLPG・アンモニア運搬船を建造する坂出工場である。

転換社債で調達する約1,010億円のうち、約200億円と約505億円は子会社の日本水素エネルギーへの投融資を通じ、液化水素サプライチェーンの商用化実証に向ける。残る約305億円はフィジカルAIの開発と借入金・社債の返済に充てる計画としている。

稼いでいる場所と、資金を投じる場所が分かれている。この対応関係が、この会社の資本配分の骨格だ。

出所:各種資料をもとに筆者作成1/1

株価はこの間、素直な上昇ではなかった。2025年9月末の終値は1,900円台。10月末に2,400円台へ上げたあと11月末は1,900円台へ戻り、2026年1月末に2,500円台、2月末には3,600円台まで水準を切り上げた。

昨秋以降の月末終値では、この2月末が最も高い。そこからは3月末に2,800円台へ下押しし、4月末3,200円台、5月末3,100円台、6月末2,900円台、7月末2,700円台と緩やかに水準を下げてきた。2026年8月時点の直近終値は2,600円台だ。

起点からは4割に届かない上昇で、2月末の水準からは3割近く下げている。1Qで事業利益が7割超の伸びを出した会社の株価が、この形になっている。

新株式の発行価格2,609円が7月の株価水準に近いことを踏まえると、希薄化を意識した売りが出た可能性は高い。ただ株価は地合いや需給でも動くので、単一の要因に寄せるのは避けたい。

印象的なのは、この会社が自分の稼ぎ方をどう名づけているかだ。

セグメントの名前は「パワースポーツ&エンジン」で、二輪という語はどこにも出てこない。それでも1Qの事業利益では、この部門が全社の半分以上を稼いでいる。

一方、調達した資金の使途に並ぶのは航空機、ガスタービン、ロボット、水素運搬船だ。稼いでいる場所と投じる場所が、きれいに分かれている。

これは矛盾ではなく、成熟した収益源で成長投資を賄う古典的な資本配分だろう。ただ投資家の側から見れば、稼ぎ頭の需要が鈍ったときに投資計画をどう調整するのかが論点になる。

二輪の需要は景気と可処分所得に素直に反応する。重工の看板よりも、そちらの循環に目を向けておいたほうが、この会社の業績の当てはめは効くのではないだろうか。

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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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