先進国市場の飽和と各国のiPhone普及率
今後の成長ドライバーを探る上で、現在iPhoneが世界でどれくらい普及しているのかを知ることは極めて重要です。泉田氏は、StatCounterのデータを用いて各国のiPhone利用シェアを分析します。
※ここで使用するデータは、ウェブ閲覧のアクティブ端末ベース(普及・利用ベース)の直近12ヶ月平均であり、四半期ごとの出荷台数シェアとは異なる点に注意が必要です。
- 直近12ヶ月平均のデータによると、主要国のiPhone利用シェアは以下のようになっています。
- カナダ: 60.6%
- 日本: 60.5%
- 米国: 59.8%
- オーストラリア: 58.4%
日本は2019年から2025年まで一貫して世界1位のシェアを誇ってきました。しかし、2019年ごろに約70%(12ヶ月移動平均で69.6%)あったシェアは徐々に低下し、直近ではカナダにわずかに抜かれて2位となっています。それでも、10人に6人がiPhoneを使っているという極めて高い水準にあります。
主要国のiPhone利用シェア(普及ベース・直近12ヶ月平均)
この高い普及率について、泉田氏は先進国市場における台数成長の限界を指摘します。
「人の数が増えない国で、もうすでにシェア6割だと台数増えないよね」
米国のように人口が増加している国であれば、同じシェアを維持するだけでも販売台数は伸びますが、日本や欧州の一部のように人口が増えない国では、これ以上の台数増を見込むのは困難です。
では、欧州市場に開拓の余地はあるのでしょうか。英国こそ49.5%と高いものの、ドイツは38.8%、フランスは31.7%、スペインは28.7%と、北米や日本に比べて低い水準にとどまっています。この状況について、泉田氏は欧州市場の特性を次のように解説します。
「ヨーロッパの人って意外とアメリカのものパンって飛びつかないんですよ」
泉田氏は、かつてソニー・エリクソンのスマートフォンやVAIOのパソコンが欧州で一定の支持を集めていた歴史を挙げ、欧州の消費者が必ずしも米国製品一辺倒ではないことを説明します。そのため、欧州で今後急激にiPhoneのシェアが拡大するというシナリオは描きにくいと分析しています。
さらに、今後の巨大市場として期待されるインドについても、現在の利用シェアは5.1%にとどまっています。インド市場は価格競争が激しく、他国の安価なスマートフォンメーカーとの競合がひしめき合っているため、Appleが簡単にシェアを奪える環境ではないのが実情です。
投資家が注意すべきリスクと今後の成長の鍵
ここまで見てきたように、Appleのビジネスモデルは「iPhoneというハードウェアを普及させ、そこからサービス収益を得る」という構造になっています。しかし、主要な先進国ではすでに普及率が6割前後に達しており、人口が大きく増えないことも踏まえると、販売台数を従来のペースで伸ばし続けるのは容易ではないと考えられます。
台数の伸び代が限定的な中で、Appleはどのようにして成長を維持していくのでしょうか。泉田氏はこの問いに対し、極めてシンプルかつ現実的な結論を提示します。
「先進国でどう戦うかっていうと、やっぱり高機能化、単価アップ、これに尽きちゃうんじゃないですかね」
カメラの性能向上や新機能の追加といった「高機能化」を理由に、1台あたりの販売価格(単価)を引き上げていく。これが当面の売上成長を牽引するメインドライバーになるという見立てです。
なお、決算発表後の株価がなぜあの日あの動きになったのかについては、泉田氏も「今日はそのあたりはまた別途お話ししていきたい」と述べており、本記事では踏み込みません。株価の一日の動きを一つの理由で説明することは、そもそも困難だからです。
その代わりに、投資家が中期的に見ておきたい指標ははっきりしています。一時要因を除いた実力ベースの利益率、iPhoneの普及状況とインストールベースの推移、そして製品単価の動向です。今回の決算で言えば、増収額の6割超をiPhoneが説明し、粗利率の改善のうち約2ポイントが関税還付によるものだったという事実が、その出発点になります。
なお、本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
参考資料
- Apple Inc.「FY2026 Q3 Form 8-K Ex-99.1」(2026年7月30日)
- Apple Inc.「FY2026 Q3 Form 10-Q」(2026年7月31日)
- Apple Inc.「FY2025 Form 10-K」
- StatCounter 国別 iPhone 利用シェア(ウェブ閲覧のアクティブ端末ベース・2019年〜2026年)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
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「イズミダイズム」はモニクルグループが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命出身の元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点から経済ニュースの裏側や資産形成のトピックを論理的に解説します。
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
