株式ニュース

アイスタイル(3660)Amazon保有の潜在株式4割超を消却、業務提携は継続。自社株買い(上限28億円)や増配も発表

決算は営業利益が初の40億円台に到達、資本政策の狙いを解説

執筆者高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者
00:00

Amazon保有の新株予約権(潜在株式42.5%相当)を取得・消却、希薄化リスクを解消

今回の資本政策で最も規模が大きいのが、Amazon.com, Inc.が保有する「第24回新株予約権」の取得です。

この新株予約権は、2022年8月15日に発行を発表したもので、譲渡権者はアイスタイルの株主でもあるAmazon.com, Inc.(大量保有報告書ベースで約9.7%を保有)です。新株予約権の総数は436,047個、株式に換算すると4,360万4,700株にのぼります。同社の決算説明資料によると、これは2026年6月30日時点の発行済株式総数に対して約42.5%という大きな潜在株式希薄化率に相当するとしています。つまり、Amazonがこの新株予約権をすべて行使した場合、発行済株式数が4割以上増える可能性があったわけです。

アイスタイルは今回、この新株予約権を31億5,000万円(1株当たり約72.2円)で取得し、基本的には消却する方針を明らかにしました。新株予約権の行使価格は1株262円に設定されています。同社は、新株予約権の行使に伴って交付される普通株式が売却されることによる市場の不確実性を低減するとともに、資本政策を再設計してあらゆる選択肢の検討を容易にすることを目的に、今回の取得に踏み切ったと説明しています。

なお、この消却によって特別損失30億4,000万円を計上する見込みで、2027年6月期の業績予想にはあらかじめ織り込み済みです

Amazonとの業務提携は継続、@cosme SHOPPINGストアは拡充へ

新株予約権を買い取る一方で、Amazon.co.jpとの業務提携そのものは終わらせず、継続・強化する方針です。アイスタイルはAmazon.co.jp上に「@cosme SHOPPING」ストアを展開しており、エスティローダーやクリニーク、SABONなど国内外の人気ブランドを取り扱っています。ストアの業績は極めて好調であり、今後も取扱ブランドを拡充していく予定としています。商取引に関する契約についても、業務提携強化を目的に更新する見通しとされています。

つまり今回の一連の取引は、資本面でのつながり(潜在株式による希薄化リスク)だけを解消しつつ、事業面での提携(Amazon.co.jpでの販売チャネル)はむしろ強化するという、切り分けた構図になっているのが特徴です。

発行済株式の7.5%相当・上限28億円の自社株買いを決定

資本政策のもう一つの柱が、自己株式の取得です。アイスタイルは以下の内容で自己株式の取得を決定しました。

  • 取得価額の総額(上限):28億円
  • 取得し得る株式の総数(上限):750万株(発行済株式総数〔自己株式を除く〕に対して7.5%相当)
  • 取得期間:2026年8月14日〜2027年6月30日
  • 取得方法:東京証券取引所における市場買付

取得理由について同社は、「資本効率及び1株当たり価値の向上を図り、株主還元の充実につなげるため」としています。発行済株式の7.5%という規模は、自己株式取得としては小さくない水準です。同社はEBITDA(営業利益に減価償却費・のれん償却費・株式報酬費用等を加えたもの)が2026年6月期に68億4,600万円と過去最大を記録しており、稼ぐ力の向上を背景に、成長投資と株主還元の両方に資金を振り向けられる財務体質になってきたことが、大型の自己株式取得に踏み切れた土台になっているとみられます。

あわせて配当についても、2027年6月期の1株当たり配当予想を2円とし、2026年6月期実績の1円から倍増する増配方針を示しました。ただし、前述の新株予約権消却に伴う特別損失の計上により、2027年6月期の最終利益は14億円と、前期の30億1,100万円から53.5%の減益となる計画です(特別損失計上前ベースの最終利益では34億円で、前期比12.9%増)。

営業利益・経常利益は本業ベースでそれぞれ22.4%増、20.2%増と成長を続ける計画である一方、純利益だけが特別損失によって一時的に落ち込む、という点には注意が必要です。株価437円(8月13日終値)を基準にすると、配当利回りは2円÷437円で約0.46%にとどまり、増配そのものの利回りインパクトはまだ大きくありません。今回の資本政策の主眼は、配当よりも希薄化リスクの解消と自己株式取得にあると見た方が実態に近いでしょう。

なお、アイスタイルは中期事業目標として2029年6月期に連結売上高1,000億円、連結営業利益80億円を掲げており、2027年6月期計画(売上高900億円、営業利益50億円)はその通過点に位置づけられています。今回の資本政策強化も、成長投資と株主還元を両立させながらこの目標に向かう姿勢の表れといえそうです。

記者コメント

今回の発表で目を引くのは、決算そのものよりも資本政策の内容です。特に、2022年の資本業務提携時にAmazonへ発行した新株予約権を、業務提携自体は維持したまま会社側が買い戻して消却するという判断は、上場企業の資本政策としては珍しい部類に入ります。

42.5%という潜在株式比率は、行使されれば既存株主の持ち分を大きく希薄化しかねない規模だっただけに、これを解消しつつ発行済株式の7.5%相当の自己株式取得まで同時に打ち出したことは、株主還元に対する姿勢の変化として注目すべき転換点です。

一方で、特別損失の計上により来期の最終利益は見た目上大きく落ち込む計画になっているため、決算発表後の株価の反応や、来期の実際の進捗は引き続き確認していく必要がありそうです。

参考

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
Google で優先するソースとして追加
高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者

関連タグ