「変動10年」と「固定5年」、どちらを選ぶのが正解か
金利に先高観がある局面では、半年ごとに利率が見直される変動利付債を選ぶのがセオリーとされています。
金利が上昇すれば、次の利払いから受取利子も増えていくためです。
ただし、実際の応募動向を見ると、必ずしもセオリー通りにはなっていません。
7月に発行された分の応募額は、変動10年が3,413億円、固定5年が5,460億円、固定3年が1,304億円で、固定5年が最も多くなりました。これは、見た目の利率が固定5年の方が高く映ること(7月分では固定5年1.95%に対し変動10年1.80%)などが一因とみられます。
とはいえ、変動10年を選びにくい理由も理解できます。
ここでいう「デュレーションリスク」とは、市場で売買する利付国債のような価格変動リスクのことではなく(個人向け国債は中途換金しても元本割れしないため)、償還までの10年間、資金を長期にわたって固定してしまうという「資金拘束の長さ」を指しています。
10年先の家計や資金需要を見通すのは簡単ではなく、その意味で5年・3年という年限の短さに安心感を覚える方が多いのは自然なことです。
判断に迷う場合は、無理にどちらか一方に決めきる必要はありません。
投資予定額を変動10年と固定5年に半分ずつ振り分け、金利上昇の恩恵と年限の分散を両取りするというのも、現実的な選択肢の一つです。
変動10年債と固定5年債の比較
今後の金利見通しと、積み立て投資という考え方
為替市場では日米の協調的な動きも意識されており、これを受けて市場では9月の日銀金融政策決定会合での追加利上げ観測も強まりつつあります。
仮に9月に利上げが行われれば、10月以降に発行される個人向け国債の基準金利、ひいては適用利率がさらに上昇する可能性も考えられます。
こうした環境では、まとまった資金を一度に投じるのではなく、つみたてNISAのように毎月少額ずつ購入していく方法も選択肢になるでしょう。
仮に目先の利率がさらに上がったとしても、購入時期を分散していれば、その時々の利率を機械的に取り込んでいくことができ、「もっと待てばよかった」という後悔を抑えやすくなります。
注意しておきたいポイント
- 中途換金の制限:発行後1年間は原則として換金できません。1年経過後はいつでも換金可能ですが、直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれる点に注意が必要です
- 固定金利の機会損失リスク:固定5年・固定3年は発行時点の利率で満期まで固定されるため、その後さらに市場金利が上昇しても、その恩恵を受けることはできません
- 変動10年の金利低下リスク:半年ごとに見直される変動10年は、将来的に金利が低下局面に転じれば受取利子も減っていきます(ただし年率0.05%の最低金利保証があります)
- 税金の扱い:受け取る利子には20.315%相当の税金が源泉徴収されます
まとめ
8月の個人向け国債は、変動10年・固定5年・固定3年のいずれも7月から利率が上昇し、金利上昇局面の恩恵を受けやすい環境になっています。
10年という長さのデュレーションリスクを取れるのであれば変動10年、それが難しければ固定5年、あるいは両者に資金を分散するという考え方が基本になるでしょう。
いずれを選ぶにせよ、ご自身の資金計画や資金拘束期間への許容度を踏まえたうえで判断することが大切です。
記者コメント
植田日銀総裁は市場との対話を重視しており、実際に利上げに踏み切る際には、事前に講演やメディアを通じてメッセージを発信してから動くケースが多く見られます。
個人向け国債の利率は日銀の金融政策の影響を強く受けるため、日々の金融政策に関する報道には目を配っておくとよいでしょう。
参考
免責事項
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
