執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
17:30

際立つ収益性と厚い自己資本

もっとも、収益性の水準そのものは化学業種の中で際立って高い。1Qの営業利益率は26%を超える。化学の営業利益率の中央値が6.8%であることを踏まえると、4倍近い高さだ。自己資本比率は79.0%に達し、ROEも年換算で11.6%と、化学中央値の6.5%を上回る。

ここで一つ、財務の使い方に目を向けたい。自己資本比率79%は一般に盤石と受け止められる。だが負債をほとんど使わない財務が資本効率の観点で最適かどうかは、また別の論点だ。潤沢な自己資本を抱えながら二桁のROEを保っている点は評価できる。とはいえ、その資本をどこへ振り向けるかで、将来の効率はなお変わりうる。

会社は2027年3月期通期について、営業利益7,000億円と+10%超の回復を見込み、配当も前期の106円から116円へ増やす予定だ。塩ビの市況が落ち着き、電子材料の伸びが続けば、減益から増益への転換が現実味を帯びる。

筆者コメント

信越化学の株価が春から初夏にかけて激しく動いた一方、1Qの決算そのものは小幅な増益に収まった。このギャップは、株価が目先の四半期実績よりも、半導体AI需要への期待と塩ビ市況への懸念という相反する材料を、そのつど織り込んで動いていることを物語る。短期の値動きに一喜一憂するのか、それとも長期の事業の見通しの変化を捉えるのか。両者を腑分けして眺めることが、この銘柄では特に大切になる。

見るべきは、電子材料と塩ビという二つの軸だ。前者はAIという構造的な追い風を受け、後者は市況に揺れる。この二軸のどちらがどれだけ効いているかを、四半期ごとにセグメント別の売上と利益で確認していく。株価の上下だけでなく、事業の中身の温度差に目を向けて決算を読んでいってほしい。

参考資料

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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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