この記事はここがポイント
- 国民生活基礎調査より、高齢者世帯の52.1%が生活苦と回答
- 65歳以上無職夫婦世帯は月約4.2万円赤字、所得の約6割を占める年金
- 65歳以上の世帯貯蓄、中央値1777万円で世帯間の大きな格差
2026年7月15日に公表された厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によれば、高齢者の約半数が生活を苦しいと感じています。
「老後資金の準備はしたものの、物価高になる予想まではできていなかった…」という方もいるでしょう。なかには想像以上に物価高が続いていると感じている方もいるのではないでしょうか。
筆者は老後資金に向けた資産形成に対する記事に編集者として携わり、厚生労働省をはじめとした統計資料を確認していますが、昨今の物価高に対する家計への圧迫を感じるとともに、より老後資金に早くから備える重要性を感じています。
生活が苦しいと感じる高齢者が半数を超える現代日本。では実際に現代シニアの収入や貯蓄額、家計収支はいくらなのでしょうか。厚生労働省をはじめとした公的資料から実態をみるとともに、老後資金対策として行いたいことを元銀行員の筆者が解説します。
高齢者世帯の半数が「生活が苦しい」…大変苦しい、やや苦しいの割合は?
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」から、まずは世帯の生活意識をみていきましょう。
同調査によると、全世帯のうち生活が「苦しい」(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)と答えた割合は55.4%でした。半数を超える世帯が、家計に厳しさを感じていることになります。前年の58.9%からはやや下がったものの、依然として高い水準です。
生活意識
高齢者世帯に絞ってみると、「苦しい」と答えた割合は52.1%でした。内訳は「大変苦しい」が21.0%、「やや苦しい」が31.1%です。年金を中心とした暮らしのなかで、2世帯に1世帯が家計の厳しさを感じている姿がうかがえます。どこまでこの物価高が続くかわからないという不安もあるでしょう。
高齢者世帯の平均所得は336万円。公的年金が6割を占める
では、老後の暮らしは、どのくらいの収入で成り立っているのでしょうか。同資料より高齢者世帯の所得をみていきましょう。
高齢者の所得は
調査によると、高齢者世帯の1世帯あたり平均所得は336万1000円でした。全世帯の平均575万2000円や、高齢者世帯以外の700万7000円と比べると低い水準にとどまります。世帯人数の違いもありますが、現役を退いた世帯が多いことが背景にあると考えられます。
注目したいのは、その中身です。高齢者世帯の所得のうち、公的年金・恩給が占める割合は61.3%と6割を超えます。働いて得る稼働所得は25.9%にとどまり、年金が暮らしの土台になっていることがわかります。さらに、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、その収入だけで暮らす(総所得に占める割合が100%の)世帯は41.3%にのぼりました。
裏を返せば、年金以外の収入をどう備えるかが、老後のゆとりを左右するといえます。現役のうちから、ご自身の年金の見込み額を確認し、少しずつ上乗せを考えておきたいところです。
65歳以上の無職夫婦世帯、平均的な家計収支はいくら?食費は?
では実際に老後の生活費はいくらかかるのか、総務省統計局が公表した「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、65歳以上の夫婦のみで構成される無職世帯の生活費を確認しましょう。
65歳以上の夫婦のみ・無職世帯の家計収支
月の収入
- 収入の合計額:25万4395円 ※うち社会保障給付:22万8614円
月の支出
- 支出の合計額は29万6829円 ※うち消費支出26万3979円、非消費支出:3万2850円
平均的な月間収入は25万4395円、支出は合計すると29万6829円。つまり、毎月平均で約4万2000円の赤字となっています。
老後の生活費は赤字がふつうになります。現役時代は赤字ではなかった、という方もいると思いますが、基本的に年金収入は現役時代の収入よりも低いため、赤字のご家庭もあるでしょう。
生活費の赤字を補填する「65歳以上無職夫婦の平均貯蓄額」はいくら?
では、赤字を補填する貯蓄額を見ていきましょう。
総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果の概要-(二人以上の世帯)」によると、世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)の平均貯蓄額は2494万円でした。
世帯主が65歳以上の無職世帯の貯蓄の種類別現在高の推移(二人以上の世帯)
貯蓄の種類別に見ると、最も多いのは定期性預貯金で778万円です。次いで通貨性預貯金が766万円、有価証券※1が510万円、生命保険などが426万円、金融機関外※2の貯蓄が13万円となっています。
前年からの増減では、定期性預貯金が-81万円(-9.4%)、通貨性預貯金が-35万円(-4.4%)とそれぞれ減少した一方で、有価証券は+9万円(+1.8%)と伸びを見せています。
投資にはリスクがありますが、資産価値が上がれば貯蓄額は増える点はメリットでしょう。
【平均貯蓄額】65歳以上全体はいくら?
同じく「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果の概要-(二人以上の世帯)」から、有職世帯も含めた世帯主が65歳以上世帯全体の貯蓄額を見てみましょう。
世帯主が65歳以上の世帯の現在貯蓄高階級別世帯分布(二人以上の世帯)ー2025年ー
65歳以上の二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
- 平均値:2564万円
- 貯蓄保有世帯の中央値(※):1777万円
65歳以上の二人以上世帯における平均貯蓄額は2564万円ですが、貯蓄が0円の世帯を除いた中央値を見ると1777万円にとどまります。
貯蓄現在高の分布を見ると、2500万円以上の世帯が全体の36.3%(約3分の1)ですが、300万円未満の世帯も14.9%に。世帯差が大きいのが実情でしょう。
※貯蓄保有世帯の中央値とは、貯蓄現在高が「0」の世帯を除いた世帯を貯蓄現在高の少ない方から順番に並べたときに、ちょうど中央に位置する世帯の貯蓄現在高をいいます。
国民年金と厚生年金、平均受給額はいくら?みんな、平均でいくらもらっているのか
最後に老後の柱となる公的年金の平均受給額を確認します。
厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」による平均年金月額は次のようになっています。
※厚生年金の被保険者は第1号から第4号まで区分されています。この記事では、民間企業などに勤務していた方が受給する「厚生年金保険(第1号)」(以下「厚生年金」と表記)の月額を紹介します。なお、厚生年金の月額には国民年金(老齢基礎年金)の分も含まれています。
年金の種類で見る平均月額と、個人によって差が生まれる理由
国民年金の平均年金月額
厚生年金の平均年金月額
国民年金(老齢基礎年金)の平均受給月額
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均受給月額
〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含む
厚生年金は、現役時代の収入や加入期間に応じて支給額が変わるため、平均額はあくまで参考値ですから、ご自身の状況と照らし合わせて考えることが重要になります。、将来の生活を設計する上では「自分がいくら受給できるのか」を早期に把握しておくことが大切です。
誕生月に送付される「ねんきん定期便」や、オンラインでいつでも確認可能な「ねんきんネット」を利用すると、将来の年金見込額を具体的に知ることができるでしょう。
老後資金の備えに対する元銀行員の筆者からのアドバイス
今回は65歳以上の世帯に関する平均をみてきました。ただでさえ老後は、現役時代よりも収入が減るもの。生活費も平均的に赤字でしたから、「年金以外の備え」が重要となります。
まず確認しておきたいのは、公的年金に不安を感じる方もいるものの、「受給開始~生涯」受け取れるという点ではメリットであるという点です。
国民年金だけでなく厚生年金に加入する働き方をする、国民年金のみなら付加年金に加入する、厚生年金なら収入を増やす…などで公的年金を増やす工夫は現役時代からできますから、早くから考えておきましょう。
また、「老後資金の置き場所」も重要です。預貯金だけでは損をするリスクはないものの、インフレの時代では資産価値が下がってしまいます。
預貯金は大切ですが、一方で投資信託や保険、債券、株式などの金融商品などで運用することで、資産を増やせる可能性もあるでしょう。
「リスクがあるから」と、情報収集をせずにはじめから資産運用はしないと決めてしまう人も少なくありません。
また、リスクがあるがゆえに、そのリスクを恐れすぎてしまう方も少なくありません。
資産運用は価格が変動するなどのリスクがありますが、「正しく恐れる」ためにも情報収集を行い、客観的な視点でとらえることが大切でしょう。
資産運用をはじめるには「自分のリスク許容度はどれくらいか」をはかる必要がありますが、年齢を重ねるほどリスクはとりにくいもの。現代は少額から投資もはじめやすいので、少額から経験して感触をつかむのも一つでしょう。
今の日本では年金の不安、そして物価の不安など、老後資金への不安は尽きません。だからこそ早くから客観的なデータを知ること、そして自身の現在地を知ることで、具体的な老後対策を考えていきましょう。
参考資料
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
野村證券株式会社出身。FP2級・証券外務員一種を保有。国内外株式、投資信託、債券、保険商品まで幅広い資産運用に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集長として記事も執筆。
