【お金に働いてもらう】年金支給日に「47万5000円」を受け取る標準的な夫婦とは?その割合と条件をやさしく整理します
norikko/Shutterstock.com
執筆者木村 悦朗ファイナンシャルアドバイザー/一種外務員資格/FP2級
監修者太田 彩子LIMO&ファイナンス編集部記者
14:34
【お金に働いてもらう】年金支給日に「47万5000円」を受け取る標準的な夫婦とは?その割合と条件をやさしく整理します
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私はかつて証券会社の法人担当として、地方の共済組合や自治体、学校法人などの資産運用に携わってきました。

そこで痛感したのは、こうした公的な資金は「短期で増やす」ものではなく、長い時間をかけて着実にお金に働いてもらう性格のお金だ、ということです。

これは、私たち一人ひとりが受け取る年金にも通じます。年金は、現役時代に納めてきた保険料に、老後の暮らしのなかで長く働いてもらう仕組みだといえます。

大切なことは「お金に働いてもらいたい」ということです。そう考えると、いくら受け取れるかだけでなく、そのお金をどう運用するのか、またその受け取り方や、家計のどこにコストがかかっているのかまで含めて眺めることが大切になります。だからこそ、まずは足元の制度を正しく知ることから始めたいです。

梅雨も明け、本格的な夏の暑さが続く時期になりました。

エアコンの電気代や帰省の準備など、なにかと出費がかさむのも、この季節ならではといえます。

そんな「なんとなくの支出」に目が向くいまだからこそ、老後の収入の柱である公的年金についても、あらためて向き合ってみたいところです。

公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造になっていて、現役時代の働き方によって受け取れる金額が大きく変わってきます。

また、2026年度の制度改定によって、それぞれの年金受取額は前年度比でプラスとなりました。

本記事では、最新のデータをもとに、1回の年金支給日で標準的とされる「47万5000円」を受け取る世帯とはどんな世帯なのか、そして全体のどれくらいを占めるのかを、コストの視点も交えながら整理していきます。

【基本を理解】公的年金は「国民年金と厚生年金」の2階建て構造

公的年金制度は、土台となる「国民年金」と、その上に積み上がる「厚生年金」で成り立つ、いわゆる2階建て構造です。

厚生年金と国民年金の仕組み

厚生年金と国民年金の仕組み
厚生年金と国民年金の仕組み

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入する制度で、公的年金の土台を担う部分です。

ここでかかる保険料(※1)は、所得の多い少ないに関係なく、一律で設定されています。

一方の厚生年金は、会社員や公務員などが対象です。国民年金に上乗せするかたちで加入し、こちらは給与や賞与に応じた保険料(※2)を負担する仕組みになっています。

国民年金保険料を480月すべて納めきれば、65歳以降に老齢基礎年金を満額(※3)受け取れますが、未納の期間があれば、その分だけ受給額は差し引かれていきます。

また、厚生年金の受給額は、加入していた期間の長さと、これまでに納めた保険料の額をもとに計算されます。

このように、年金の受給額は一人ひとり異なりますが、厚生労働省が年金改定のたびに公表する「年金額例」は、目安として押さえておきたい数字です。

2026年度の最新例では、「標準的な夫婦世帯」において、1回の年金支給日に約47万5000円が支払われる水準とされています。

※1 国民年金保険料:2026年度は月額1万7920円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※3 国民年金の満額:2026年度は月額7万608円

【2026年度最新】「国民年金と厚生年金」の年金額例はいくら?

公的年金は、原則として「偶数月の15日(※)」に支払われます。

そのため、次回の支給日は8月15日にあたりますが、2026年はこの日が土曜日のため、直前の平日である8月14日(金曜日)に前倒しされ、6月分と7月分がまとめて振り込まれることになります。

厚生労働省が公表している2026年度の年金額例は、次のとおりです。

※15日が土日祝日の場合、直前の平日に前倒しされます。

令和8年度の年金額の例

令和8年度の年金額の例
令和8年度の年金額の例
  • 国民年金(老齢基礎年金):7万608円(1人分※1)
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)

※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円
※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

厚生年金のモデル世帯を見ると、夫婦合計の月額は23万7279円です。この金額は「老齢厚生年金1人分」と「老齢基礎年金2人分」を足し合わせたものになっています。

年金は2カ月分をまとめて受け取る仕組みですから、この世帯が1回の支給日に手にする額は47万4558円です。

これが、「約47万5000円」といわれる中身になります。

年金支給日に「約47万5000円」振り込まれる標準的な夫婦とは?

1回の年金支給日に「約47万5000円」を受け取るとされる「標準的な夫婦」とは、いったいどんな世帯を指しているのでしょうか。

ここでは、厚生労働省が公表している年金額例の前提条件を、ひとつずつ確認していきましょう。

男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5 万円)で 40 年間就業した場 合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。引用:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします ~年金額は前年度から国民年金(基礎年金)が 1.9%の引上げ 厚生年金(報酬比例部分)が 2.0%の引上げです~」

ここで想定されているのは、夫が約40年間にわたって、平均標準報酬(賞与を含めた月額換算)で45万5000円、年収に直すとおよそ546万円の水準で働いてきた会社員などのケースです。

一方の妻は、扶養の範囲内で働くパートや専業主婦などが想定されており、厚生年金には加入せず、国民年金のみを受け取る前提になっています。

この条件のもとでは、夫婦2人分の年金月額は合計で23万7279円となり、年金は2カ月ごとにまとめて支払われるため、1回あたりの受取額は約47万5000円になるというわけです。

なお、実際に手元へ入る額については、老齢年金から住民税や介護保険料などが差し引かれる(特別徴収)ケースが多くなっています。控除の中身や振込額は、6月頃に届く「年金振込通知書」などで確認できます。

額面の大きさにそのまま安心するのではなく、そこから何がどれだけ差し引かれているのかという「本当のコスト」の側面まで、いちど目を通しておきたいところです。

1回あたり「約47万5000円」という数字は大きく見えるかもしれません。ただ、月額に均してみると、必ずしも余裕のある水準とは言い切れない面もあります。

加えて、年金は現役時代の給与とは違い、2カ月に1回まとめて入ってくる収入です。それだけに、家計の管理の仕方にも工夫が求められる点は押さえておきたいところです。

シニアは「年金」を平均いくら受け取っている?

ここからは、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、一人ひとりが実際にいくら受け取っているのかを、グラフで確認していきます。

受給額がどう分布しているのか、そして平均値に見られる男女差にも目を向けてみましょう。

「厚生年金」の平均年金月額を見る

厚生年金:年金月額階級別の受給権者数

厚生年金:年金月額階級別の受給権者数
厚生年金:年金月額階級別の受給権者数
  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金部分を含む

「国民年金(老齢基礎年金)」の平均年金月額を見る

国民年金:年金月額階級別の受給権者数

国民年金:年金月額階級別の受給権者数
国民年金:年金月額階級別の受給権者数
  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

平均の年金月額を見ると、厚生年金(国民年金分を含む)では、男性が約17万円、女性がおよそ11万円です。

これに対して、国民年金のみを受け取る場合は、男女ともに平均で月6万円程度にとどまっています。

公的年金は2カ月分をまとめて受け取るため、支給のタイミングでは金額が多く見えることもあります。しかし月額に均してみると、年金収入だけで暮らしを回している世帯は、それほど多くないと考えられます。

また、これらはあくまで平均値です。グラフを見てのとおり、実際の受給額には個人差が大きい点にも注意しておきたいところです。

年金はいつから受け取る?受給タイミングの考え方

公的年金は、原則として65歳から受け取りが始まりますが、いつから受け取り始めるかは自分で選ぶことができます。

なかでも、65歳より前から受け取りを始められる「繰上げ受給」は、早く年金を手にしたい人にとっての選択肢のひとつです。

たとえば、定年後すぐに収入を確保したい場合や、働く予定がない場合などには、早めに年金を受け取れる点がメリットになります。

ただし、受け取りを早めると、その後の年金額は一定の割合で減額される仕組みになっています。目先の受け取りやすさだけでなく、長い目で見た収入への影響も踏まえて考えておきたいところです。

反対に、65歳以降に受け取り開始を遅らせる「繰下げ受給」を選ぶこともできます。

繰下げ受給を選べば、遅らせた期間に応じて年金額が増える仕組みになっており、将来受け取る額を厚くしたい場合には有効な選択肢となります。いわば、受け取りを我慢した分だけ、お金に長く働いてもらう考え方だといえます。

とはいえ、受け取りが遅れるあいだの生活資金をどう確保するのかは、あらかじめ考えておく必要があります。私自身も、法人の運用の現場で「いつ、どれだけ取り崩すか」という設計の大切さを繰り返し学んできました。

このように、年金は受け取り始めるタイミングによって、将来の受給額が変わってきます。自身の生活状況や今後の収入の見通しに合わせて、無理のない受給時期を選ぶことが大切です。

まとめ

ここまで、公的年金の2階建ての仕組みから、標準的な夫婦世帯の年金額の例までを見てきました。

1回の支給日で「約47万5000円」という数字は、額面だけを見れば頼もしく感じられます。

ただ、厚生年金の平均月額が全体で「15万289円」であることを踏まえると、モデル世帯はあくまで一つの目安にすぎないことも見えてきます。

大切なのは、受け取る金額だけではありません。そこから差し引かれるコストや、自分の家計の支出まで含めて、老後の家計の全体像をつかむことです。

そのうえで「足りないかもしれない」と感じたなら、時間を味方につけてお金に働いてもらう方法を、少しずつ検討してみてはいかがでしょうか。

もちろん運用には損をする可能性もありますので、制度や商品の詳しい内容は公式情報や専門の窓口で確認したうえで、ご自身に合ったやり方を選んでいただければ幸いです。

1回の年金支給額が「約47万5000円」というインパクトのある数字が出てきましたが、これはあくまで「夫が40年間平均年収546万円で会社員として働き、妻は扶養内」というモデル世帯を前提とした金額です。

相談を受ける中でも、実際には「2ヶ月が一気に振り込まれるからやりくりが大変」というお話を耳にすることは少なくありませんでした。

記事にあるとおり厚生年金の平均月額は全体で15万円ほど、女性に限れば11万円程度にとどまります。その背景には、育児や介護で就業期間が途切れたり、非正規雇用で厚生年金の加入期間が短くなったりする女性が多かった、これまでの働き方の事情があります。

自身の見込み額を正確につかむには、日本年金機構の「ねんきんネット」や毎年届く「ねんきん定期便」が最も確実です。特に共働き世帯であれば、夫婦それぞれの見込み額を合わせて確認しておくと、老後の設計がより具体的になります。

年金は「世帯単位でどれだけ入るか」が家計を支える柱です。モデル世帯の数字に一喜一憂するよりも、自分たちの実際の見込み額をベースに、繰上げ・繰下げの選択や不足分の備え方を早めに考えておきたいところです。

参考資料

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