還暦は60年の節目、多くの人にとって退職を意識する時期です。
定年後の再雇用や年金受給の開始が視野に入ってくる一方で、想像していたよりも貯蓄が少なく不安を抱える方も少なくないようです。
筆者は地方公務員として自治体業務をしていましたが、相談内容には「年金の手取りが思った以上に少ない」などの声も少なくありませんでした。
実際のところ、今年還暦を迎える60歳の貯蓄額はどうなっているのでしょうか。
今回は、PGF生命「2026年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」の最新データをもとに、貯蓄100万円未満の割合と、老後を支える年金の平均月額まで解説します。
還暦人(60歳)の貯蓄事情、「100万円未満」は何割?
PGF生命(プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険)が2026年3月30日〜4月2日に実施した「還暦人(かんれきびと)に関する調査」によると、今年還暦を迎える1966年生まれの男女2000人の貯蓄額は、次のような結果でした。
現段階の貯蓄額(2026年還暦人)
- 平均値:1343万円
- 中央値:300万円
平均と中央値の差は約1000万円あり、資産を厚めに準備できた層と、そうでない層の差が大きく開いていることが読み取れます。
さらに、貯蓄額の分布を見てみましょう。
- 「100万円未満」(最多回答):31.8%
- 「500万円未満」の合計:54.3%
- 「2000万円以上」:20.1%
「100万円未満」と回答した割合は31.8%と、還暦を迎えた3人に1人が老後を目前にしても十分な貯蓄を確保できていない状況です。
さらに「500万円未満」まで合わせると54.3%と過半数に達しており、還暦世代の家計はかなり厳しい姿が浮かび上がります。
調査結果を年別に見ると、貯蓄額の平均は2023年3454万円→2024年2782万円→2025年2460万円→2026年1343万円と、減少幅がさらに拡大しました。
物価高が長引く中で、日々の家計から積み立てに回す余裕がなくなっている影響も大きいと考えられるでしょう。
老齢年金の平均月額はいくら?男女別に厚生年金と国民年金を確認
60歳を過ぎると、いよいよ具体化してくるのが公的年金の受給計画です。
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢年金の平均月額は男女別に次のとおりでした。
厚生年金(国民年金部分を含む)の男女別平均月額
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
国民年金の男女別平均月額
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
厚生年金の階級別分布を見ると、月10万円未満の層が19.0%、月20万円超の層が18.8%と、受給額の格差が大きいことがわかります。
夫婦2人で老後を迎えても、勤続年数や現役時代の年収によって世帯月収は20万円台から30万円台まで幅があります。
還暦からの10年間で老後の家計を立て直す3つの視点
貯蓄100万円未満で還暦を迎えた場合、心配になる気持ちは自然なものです。ただし、60歳からでも老後の家計を立て直す余地はあります。3つの視点で整理します。
就労延長で「年金の繰下げ受給」も選択肢
再雇用や継続就労で収入があるうちは、公的年金の受給開始を66歳〜75歳まで繰り下げることができます。
1か月遅らせるごとに年金額は0.7%増額され、70歳受給開始で42%増、75歳で84%増となります。長生きするほど有利になる制度で、貯蓄が少ない世帯にとっては強力な選択肢です。
ただしその間の収入がしっかりあることや、健康に働けることが前提となります。繰下げ受給は加給年金や税金などにも影響するため、慎重に判断しましょう。
家計のダウンサイジングを検討
住宅費・保険料・車の維持費・通信費といった固定費を、年に1度は見直しましょう。
子どもの独立を機に住み替えや車の手放しを検討する世帯も増えています。固定費を月2万円削減できれば、年間24万円・10年で240万円の家計改善につながります。
公的支援制度を活用する
老後の収入が公的年金だけで生活が厳しい場合には、老齢年金生活者支援給付金(対象要件を満たす低所得の年金受給者に月額約5000円を上乗せ)や、自治体の高齢者向け助成制度など、活用できる公的支援があります。
まずは市区町村の窓口や日本年金機構のねんきんダイヤルで相談してみてください。
まとめにかえて
2026年に還暦を迎える人の貯蓄額は、平均1343万円・中央値300万円でした。
分布では「100万円未満」が31.8%と3人に1人を占め、「500万円未満」を合わせると過半数に達しました。
平均値と中央値の乖離、そして平均額が過去4年連続で減少している点からも、還暦世代の家計は二極化と全体的な厳しさが同時に進んでいるとわかります。
ただし、60歳は「これから」を設計できる年代でもあります。年金の繰下げ受給、固定費の見直し、公的支援制度の活用という3つの手段を組み合わせれば、貯蓄が少なくても老後の家計を立て直す道は残されています。
まずはねんきん定期便で自分の受給見込額を確認するところから、一歩を踏み出してみてください。
参考資料
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在はLIMO編集部で年金・貯蓄・退職金等の金融情報を発信。
