【実体験から考える】年金だけでカバーしきれない「介護」のリアルな負担
年金の受給見込み額の目安がわかったところで、もう一つ真剣に考えておきたいのが「老後の特別な支出」です。
75歳以上の無職・二人以上世帯「ひと月の家計収支」
総務省「家計調査 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、75歳以上の無職・二人以上世帯の家計収支は、実収入25万2798円に対し実支出28万23円となっており、毎月約2万7225円の赤字が生じています。
日々の生活費だけでも貯蓄の取り崩しが発生している世帯が多いのが実情です。
そんな中で、筆者が自身の家族の介護を通じて痛感したのは、想定外の「介護費用」がもたらす家計への重い負担です。
元気なうちは意識しにくいものですが、介護はある日突然始まるケースも。
手すりの設置や段差の解消といった自宅のバリアフリー改修、介護用ベッドや車椅子のレンタルなど、初期費用や毎月かかる固定費用など想定外の支出となる可能性もあるでしょう。
さらに、毎月のデイサービス利用料、おむつ代などの消耗品費も継続的に家計を圧迫します。
公的な介護保険サービスを利用すれば費用の負担は抑えられますが、それでも所得に応じて1割から3割の自己負担分は支払う必要があります。
また、おむつ代などは原則全額自己負担ですが、自治体によっては購入費の助成や現物支給の制度を設けている場合もあるため、お住まいの市区町村の制度を事前に確認しておくことも大切です。
施設入居で負担増も。数百万円にのぼる介護費用のリアル
生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(2024年度)」のデータを見ると、介護に要した一時的な費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円、そして介護期間は平均4年7カ月(55.0カ月)にも及ぶとされています。
単純計算でも、数百万円のまとまった資金が必要になるケースが少なくありません。
このような高額な介護費用や、万が一施設に入居することになった場合の資金を、毎月の年金収入だけから捻出するのは非常に困難です。
公的年金はあくまで「日々の生活のベース」と捉え、いざという時の備えは現役時代からの貯蓄や資産形成で作っておく必要があるのです。
まとめにかえて
ここまで、共働き夫婦の年金月額の目安と、老後に向けた備えの重要性について見てきました。
夫婦ともにフルタイムで働いてきたご家庭であれば、厚生年金の受給額は月に約28万円がひとつの目安となります。
これは片働き世帯のモデル年金額と比べて4万円以上多く、共働きならではの大きな強みです。
ただし、長年パート勤務で厚生年金に加入していなかった場合は、モデル世帯と大差ない金額になることもあるため、早めの現状把握が欠かせません。
さらに、老後の日常的な生活費だけでなく、私が実体験から痛感した介護費用などの特別な支出も考慮すると、公的年金だけで一生涯のすべての資金を賄うのは難しいのが現実です。
まずは、毎年お誕生月に届く「ねんきん定期便」や、インターネットの「ねんきんネット」を活用し、ご夫婦それぞれの受給見込み額を合算して確認してみましょう。
ご家庭ごとのリアルな数字を知ることが、安心への第一歩です。
その上で、新NISAやiDeCoなどを上手に活用し、自分たちのライフスタイルに合った無理のない資産形成を、少しずつでも計画的に進めていくことをおすすめします。
参考資料
早大卒。証券外務員二種・相続診断士。15年の書籍校閲で培ったファクトチェック力を武器に、一次資料に基づく「お金と暮らし」の分析記事を担当する編集記者。認知症介護経験をいかし、読者目線に立った情報発信も。
