【コラム】忘れてはいけない「認知症による口座凍結」リスク
ここまで資金の目減りや収入の確保について触れてきましたが、実際に親の介護を経験した筆者が痛感している「老後資金の死角」がもう一つあります。
それが「認知症による口座の凍結」です。
どんなに十分な貯蓄があっても、認知症による判断能力の低下で口座が凍結されてしまえば、日々の生活費や介護費用の引き出しすら家族には困難になってしまいます。
お金を単に貯めるだけでなく、いざという時に「使える」状態にしておく仕組みづくり(家族信託や任意後見制度など)も、元気なうちに家族と話し合っておくべき大切な老後対策です。
老後資金は「貯める」から「寿命を延ばす」へ
70歳代・二人以上世帯のデータからは、公的年金だけで生活費をまかなうのが難しく、不足分を貯蓄で補う構造が見えてきます。
しかし、老後の安心は「現金をいくら持っているか」だけで決まるわけではありません。物価高によって目減りする現金の性質を理解し、資産寿命を意識した管理へシフトすること。
また、認知症リスクにも備えて資金を活用できる仕組みを整えつつ、2026年の制度改正を活かして無理のない範囲で働き続けるなど、多角的なアプローチが必要です。
自身の貯蓄額や収支の見通しを正確に把握し、家計のバランスを見直すことが、安心できる老後生活を支える鍵となるでしょう。
参考資料
- 総務省「2020年基準消費者物価指数「全国 2026年(令和8年)5月分」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 総務省「2020年基準消費者物価指数 全国2026年(令和8年)3月分及び2025年度(令和7年度)平均」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 内閣府「令和7年版高齢社会白書 第2節 高齢期の暮らしの動向」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 政府広報オンライン「もっと働きたい!に応えて、在職老齢年金制度の基準額が2026年4月から引上げに」
関連タグ
証券外務員二種・相続診断士。早稲田大学卒。官公庁の一次資料分析に基づく「お金と暮らし」の記事を執筆。15年の書籍校閲経験をいかした確かなファクトチェック力が強み。家族の認知症介護の経験も交え、これから介護に向き合う読者の暮らしがより良くなるような、リアルで信頼できる情報をお届けします。
PROFILE
【保有資格】 二種外務員資格(証券外務員二種)、相続診断士、認知症介助士
【経歴】 早稲田大学第一文学部卒。15年以上の書籍校閲経験で培ったファクトチェック力を武器に、現在は金融メディア『LIMO』にて年金・貯蓄をメインとするパーソナルファイナンス記事の編集・執筆を担当。厚生労働省、金融庁が公表する一次データの分析記事を得意とする。長年の紙媒体で培った編集力と、自身の家族介護の実体験を掛け合わせ、「お金とくらし」にまつわるリアルで信頼性の高い情報を読者目線で発信している。
