この記事はここがポイント
- JTは配当性向75%が目安、今期年間配当272円を予想
- 年間配当は2021年12月期140円から2025年12月期234円へ
- 10月29日発表の第3四半期決算、配当と利益予想の修正有無をチェック
JT(日本たばこ産業)<2914>は、10月29日に2026年12月期の第3四半期決算を発表する予定です。
昨年10月30日の第3四半期決算では、期末配当の予想を104円から130円に引き上げ、年間の予想を208円から234円としていました。
12月決算の同社にとって、第3四半期は配当予想が動いたこともある節目です。
ただ、今期の配当予想は、7月の第2四半期決算ですでに年242円から272円に引き上げられています。
事業年度は1月1日から12月31日までで、配当は6月30日を基準日とする中間配当と、12月31日を基準日とする期末配当の年2回です。
9月末の権利取りが一巡し、次は12月の権利取りが控えています。
同社の配当は、利益の75%程度を目安に決める仕組みです。
今期の272円も、引き上げた利益見通しをもとに、配当性向75.2%で算定された金額です。
本記事では、第3四半期決算を前に、この方針の中身と5期分の配当金の推移、株価と利回り、12月の権利付き最終日を順にみていきます。
※記事中の株価はすべて終値です。
JTは「配当性向75%」が目安。今期予想の配当性向は75.2%
配当性向とは、その期の利益のうち、どれだけを配当に回すかを示す割合です。
JTは、2021年2月9日に発表した「経営計画2021」で株主還元方針を変更し、配当性向75%を目安とする方針を打ち出しました。
目安には「±5%程度の範囲内で判断」という幅を持たせています。
同社の有価証券報告書によると、株主還元方針は以下の3点です。
- 強固な財務基盤を維持しながら中長期の利益成長を実現し、株主還元の向上を目指すこと
- 「資本市場における競争力ある水準」として配当性向75%を目安とすること
- 自己株式の取得は、その年度の財務状況や中期的な資金需要などを踏まえて実施するかどうかを検討すること
なお、直近の自己株式の取得は2019年2~3月です。
今期の配当予想は、7月30日の第2四半期決算で年242円から年272円に引き上げられました。
同社は、カナダの子会社JTI-Macdonald Corp.を被告に含む喫煙と健康に関する訴訟の和解に伴う和解金支払いなどの影響を調整した後の当期利益(6,420億円)をもとに、今期予想の配当性向を75.2%と算定しています。
今期予想の基本的1株あたり当期利益362円74銭で単純に計算した場合も、年272円の配当性向は75.0%で、目安の75%とほぼ同じ水準です。
過去の実績をみると、連結配当性向は2021年度73.4%、2022年度75.4%、2023年度71.4%、2024年度74.3%、2025年度85.0%でした(2024年度と2025年度は、カナダの訴訟に関する影響などを除いた同社の算定値)。
一方で、配当性向75%はあくまで「目安」で、幅を持たせて判断するとされています。
配当性向の目安は、将来の配当額を約束するものではない点は押さえておきたいところです。
JTの株価は10月9日終値7,230円、予想配当利回りは3.76%
続いて、足元の株価をみておきましょう。
JTの株価は10月9日、取引時間中に一時7,297円まで上げ、7月31日の7,218円以来となる上場来高値を更新しました。
終値は前日比270円高の7,230円です。
同社は10月1日から、加熱式たばこに係る課税方式の見直しに伴い、「プルーム」ブランドのたばこスティック全31銘柄の小売定価をそれぞれ40円引き上げています。
JTの年間チャート
JTの配当金の推移。1株あたり年間配当金は2021年12月期の140円から2025年12月期は234円に
同社の1株あたりの年間配当金は次のように動いてきました。
いずれも中間配当と期末配当を合わせた金額です。
1株あたり年間配当金の推移
決算期:中間配当:期末配当:年間配当
- 2021年12月期:65円:75円:140円
- 2022年12月期:75円:113円:188円
- 2023年12月期:94円:100円:194円
- 2024年12月期:97円:97円:194円
- 2025年12月期:104円:130円:234円
- 2026年12月期(予想):136円:136円(予想):272円(予想)
2021年12月期の140円から、2025年12月期には234円まで増えています。
5年分を並べると、金額は94円増えました。ただし、毎期同じ幅で増えてきたわけではありません。
2022年12月期に48円増えたあと、2023年12月期は6円増、2024年12月期は前の期と同じ194円で、2025年12月期に40円増えています。
この5期の間、年間配当金が前の期を下回った年はありません。
今期にあたる2026年12月期は、年間272円の予想です。
中間配当は136円で、期末配当も136円の予想とされています。
前期の中間104円・期末130円と比べると、中間は32円、期末は6円多い金額です。
なお、同社は7月30日に発表した第2四半期決算で、2026年12月期の通期業績予想を2月の期初予想(5月の第1四半期決算時点でも同じ)から引き上げ、売上収益3兆8,850億円(前期比12.0%増)、営業利益1兆80億円(同16.3%増)、当期利益6,440億円(同26.2%増)としています。
当期利益の前期比は、前期に非継続事業に分類した医薬事業などを含む前期の当期利益と比べた数字です。
配当金の推移をみるときは、年間の金額だけでなく、その中身にも目を向けたいところです。
年間配当金は、6月末を基準日とする中間配当と、12月末を基準日とする期末配当を足したものです。
JTの場合、2025年12月期は中間104円・期末130円と、中間と期末で金額が異なっていました。
見落としやすいのが、今期の年272円のうち、金額が決まっているのは中間の136円だけという点です。
中間配当は9月1日から支払いが始まりましたが、期末の136円はあくまで予想で、決まるのは2027年3月の定時株主総会です。
100株を持っている場合、年272円の予想どおりなら受け取る配当金は年2万7,200円(税引前)ですが、このうち期末分の1万3,600円はまだ確定していません。
3Q決算では「配当予想からの修正の有無」もチェック
次の節目は、10月29日引け後に予定されている第3四半期決算の発表です。
期末配当の予想が変わったかどうかは、決算短信の冒頭のサマリーにある「配当の状況」の表のすぐ下で確かめられます。
ここには「(注)直近に公表されている配当予想からの修正の有無」という注意書きがあり、5月8日の第1四半期決算短信では「無」、年242円から年272円に引き上げた7月30日の第2四半期決算短信では「有」となっていました。
第3四半期決算短信でこれが「無」であれば、配当予想は7月に示した金額(年272円)から変わっていません。
「有」であれば予想が修正されたことを示しており、増配か減配かは表の金額で確認できます。
もっとも、見ておきたいのは配当の欄だけではありません。
同社は配当性向75%を目安にしているため、配当の原資となる利益の見通し、つまり通期の業績予想がどう変わったかもあわせて確認しておきたいところです。
ここ10年を振り返ると、2016年12月期以降、年間配当金が前の期を下回ったのは、154円から140円になった2021年12月期の一度だけで、
配当性向75%を目安とする方針に切り替えた年にあたります。
配当を利益の一定割合で決める考え方は、利益が伸びれば配当も増えやすい半面、利益が落ち込めば配当も連動して動きうる、という両面を持っています。
株価の振れ幅にも触れておくと、2026年の年初来安値5,451円(1月29日)と年初来高値7,297円(10月9日)の差は1,846円で、年272円の予想配当の6年分を超えます。
配当だけでは株価の値動きを埋めきれない場面もあることは、頭の片隅に置いておきたいところです。
JTの配当は6月30日と12月31日が基準日
配当を受け取れるのは、基準日の株主名簿に記載または記録されている株主です。
配当の基準日は6月30日(中間)と12月31日(期末)の年2回です。
中間配当は取締役会、期末配当は株主総会で決まり、中間配当金は9月上旬、期末配当金は3月下旬に支払われています。
今期の中間配当は、2026年9月1日から支払いが始まりました。
なお、実際には権利付き最終日までに株式を買い付ける必要がある点に注意が必要です。
JTの期末配当の基準日は12月31日。2026年12月の権利付き最終日は12月28日
では、期末配当を受け取るには、いつまでに株式を持っていればよいのでしょうか。
期末配当は、支払いが決まった場合に、12月31日の株主名簿に載っている株主に支払われます。
2026年12月の権利付き最終日は12月28日です。
12月31日は取引所の休業日のため、受け渡しを12月30日までに済ませる必要があり、そこから2営業日さかのぼった日が権利付き最終日になります。
また、期末配当を受け取れるのは、同社が期末配当の支払いを決めた場合です。
今期の期末136円はあくまで予想で、決まった金額は決算の発表で確かめられます。
記者コメント
JTの配当は、利益のおよそ75%を配当に回すという明快な物差しで決まっています。
今期も7月に通期の業績予想を引き上げると同時に、配当予想を年242円から272円へ引き上げました。
5期前の2021年12月期の140円と比べると、約1.9倍の水準です。
物差しが明快な分、配当の行方を考えるうえで見るべき数字もはっきりしています。
10月29日の第3四半期決算では、配当の欄とあわせて、7月に引き上げた当期利益の予想6,440億円がどうなっているかに目を向けたいところです。
なお、同社が配当性向の算定に使うのは、カナダの訴訟の和解金支払いなどを調整した後の利益(今期予想で6,420億円)です。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
