この記事はここがポイント
- 平均在院日数24.5日、1日平均在院患者数約113万人と、長期入院・通院の身近なリスク
- 年齢上昇で通院者率高まり、80歳以上では700人超と、生活習慣病等による長期通院リスク増大
- 令和8年法改正はOTC類似薬自己負担増、高額療養費年間上限新設、金融所得反映の制度改正
病気やケガへの備えとして「民間の医療保険」を検討する際、まずは私たちが実際にどのくらいの頻度や期間で医療機関を利用しているのか、日本の医療の現状を把握しておくことも客観的な判断材料として大切です。
本記事では、元生命保険会社職員であり、生保・損保の実務経験を持つ筆者が、最新のデータと今後の制度改正のポイントを踏まえ、医療保険を考える上で知っておきたい日本の医療の実態について解説します。
入院日数「平均24.5日」1日の入院患者数「約113万人」
私たちが病気やケガをした際、どれほどの期間や頻度で医療機関を利用しているのか、まずは最新のデータから現状を確認してみましょう。 厚生労働省が発表した「病院報告(令和8年4月分概数)」によると、日本の病院における利用状況は以下の通りとなっています。
- 1日平均在院患者数:約113万人(1,129,067人)となっており、日々多くの人が入院治療を受けています。
- 1日平均外来患者数:約120万人(1,204,515人)であり、通院で治療を続ける方も非常に多いことがわかります。
- 平均在院日数:病院全体で平均24.5日となっており、入院となればおよそ3週間から1ヶ月弱の期間が必要になるのが平均的です。
- 病床利用率:月末時点で76.7%に達しており、病院のベッドの多くが継続的に利用されている状況です。
これらの数値からもわかるように、長期間の入院や継続的な通院は誰にでも起こり得る身近なリスクです。 特に、平均して24.5日もの入院が必要となった場合、それに伴う医療費は家計に一定の影響を与える可能性があります。
外来治療であっても、長期にわたって通院を続ければ、毎月の出費は無視できない負担となっていくでしょう。
「どんな症状で病院へ?」年齢とともに高まる通院リスク
厚生労働省の「2025(令和7)年国民生活基礎調査の概況」によると、病気やけが等の自覚症状がある「有訴者(ゆうそしゃ)」の割合は、女性や年齢を重ねた層で高くなる傾向にあります。具体的な自覚症状としては、男女ともに「腰痛」や「肩こり」が上位を占めています。このように、年齢とともに何らかの体の不調を抱えるリスクが高まることがデータからも明らかです。
年齢とともに急増する「通院者率」
人口千人当たりの通院者率は、総数409.2、男性398.1、女性419.7です。年齢が上がるほど通院者率も高くなり、特に80歳以上では700を超えています。
通院患者の上位5傷病(複数回答)
性別にみた通院者率の上位5傷病(複数回答)
- 男性のトップ5
- 「高血圧症」
- 「糖尿病」
- 「脂質異常症(高コレステロール血症等)」
- 「歯の病気」
- 「眼の病気」
- 女性のトップ5
- 「高血圧症」
- 「脂質異常症(高コレステロール血症等)」
- 「眼の病気」
- 「歯の病気」
- 「腰痛症」
年齢を重ねるにつれて、生活習慣病等で長期間通院するリスクが高まります。こうした将来の医療費負担を予測する上でも、公的な制度を正しく理解しておくことが役立ちます。
【令和8年法改正】シニア世代に関わる公的医療制度の変更ポイント
令和8年5月29日に成立した「健康保険法等の一部を改正する法律案」は、医療保険制度を将来にわたり持続可能なものとするため、全世代が納得できる給付と負担の見直しを行うものです。
医療保険制度改革のポイント
今回の改正には、出産環境の整備や子育て世帯への支援などを含む主に5つの重要なポイントがありますが、ここではシニア世代の生活に特に関わりの深い「3つの改正ポイント」に絞って解説します。
OTC類似薬の薬剤給付の見直し(公布後1年以内・令和9年3月1日施行を想定)
鼻炎や胃痛、風邪症状など日常的な医療に用いる医薬品のうち、OTC医薬品(市販薬)で代替可能なものについて、薬剤料の4分の1が別途自己負担となります。がん・難病患者など、配慮が必要な慢性疾患を抱えている方に対しては、別途の負担を求めないなどの特例措置が検討されています。
高額療養費の年間上限新設などの見直し(令和8年8月1日から順次施行)
高額療養費の年間上限の新設
医療保険制度を将来にわたり維持するため、医療費の伸びや所得に応じて月単位の自己負担限度額が見直されますが、長期療養者向けの「多数回該当」の金額は据え置かれます。また、新たに医療費の「年間上限」が設けられ、上限額に達した後はその年の窓口負担が不要になります。
後期高齢者医療制度における金融所得の公平な反映について(公布後5年以内)
確定申告の有無によって窓口負担割合や保険料が変わるという不公平を解消するため、上場株式の配当等の金融所得も負担判定に反映されるようになります。金融機関等から提出される法定調書を活用して所得を把握するため、これによって個人の事務手続き負担が新たに増えることはありません。
まとめにかえて
入院日数の現状や年齢に伴う通院リスクの増加、そして令和8年の法改正による自己負担の見直しなど、私たちの医療を取り巻く環境は時代とともに変化しています。
民間の医療保険を検討する際は、こうした「日本の医療の実情」と「公的な健康保険制度でどこまでカバーされるのか」を一つの判断基準にすることが有益です。公的保障で対応できる範囲を見極めた上で、それでもカバーしきれない部分(差額ベッド代や先進医療の費用、生活費の補填など)に対して、個々のニーズや予算に合わせた民間の医療保険を柔軟に組み合わせることで、より合理的で無駄のない備えを構築することができます。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
